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326話 米栽培


 米の採取祭りを終えた俺たちは、一度解散することにした。


「じゃあ、お互いに情報を整理したら、広場に集合して早耳猫ってことで。本当に1時間で間に合う?」

「まあ、水耕プールで栽培ができるかどうか試すだけだから、大丈夫だ」


 籾の情報だけではなく、栽培に関する情報もある方が高く売れるだろうし、クルミたちも地底湖の情報をまとめる時間が必要なのだ。


「じゃあ、またあとでね」

「おう!」


 クルミたちは始まりの町の喫茶店で、ログを見ながら情報の整理をするらしい。


 俺は急いで畑に向かう。


「オルト、さっき手に入れた籾。これ、育てられるか?」

「ム!」


 オルトは満面の笑みで、胸をドンと叩いた。いけるらしい。


 俺は取りあえずインベントリから籾を1つ取り出してみる。すると、1粒ではなく、お碗に盛りつけられた籾1山が出現した。


 これだけあれば、水耕プール全部に植えるだけの分量は楽に確保できそうだが……。


「それで、どうする? やっぱり籾をどこかで苗にしなきゃダメか?」

「ム?」


 俺が見ている横で、オルトがお碗に盛られた状態の籾を受け取ると、そのまま株分を使用した。籾がポンと音を立てて、お碗ごと姿を変える。


「え? いきなり苗に変化したんだけど……。しかも2つだけ?」


 あれだけ大量にあった籾からは、2つの苗しか生み出されなかった。


 どうやら普通の作物と同じ考え方はできないらしい。オルトが株分した籾は、稲1本から採取された分である。稲1つからお碗一杯分の籾がとれるのだ。


 それを株分した結果、苗が2つできた。つまり、籾は1粒ではなく、1本の稲から採取された1山を1セットと考えるらしい。


「で、これをどうすりゃいい?」

「ムム!」


 やはり畑では無理か。「こっちに来い」という感じで手招きするオルトに連れていかれたのは、予想通り水耕プールであった。


「やっぱ稲を育てるには水田だよな~」

「ム!」


 同意するようにうなずくと、オルトは濡れることも構わずジャブジャブと水耕プールに入っていく。


「ムーム。ムーム」


 そして、オルトがその苗を田植えの如く、水耕プールにぶっ差していった。


「後は普通の作物みたいに、待てばいいのか?」

「ム」

「水やりはどうなる? 肥料は?」

「ム。ムム」


 さすがに水耕プールなだけあり、水やりは必要ないか。ただ、肥料や草むしりは普通の畑と同じみたいだった。


「少し勿体ないけど、水草は全部抜いちゃおう。で、早速ここ水田にするぞ」

「ム!」

「まあ、その前に実験だけどな」

「ムー?」


 まずは、株分時に使う籾の量を減らしてみよう。


「半分だとどうだ?」

「ムムーム」

「おわ! 失敗か」

「ムー」


 大事な籾がゴミに変わってしまった! やはりお椀一杯分の籾が必要であるらしい。その後、数度試してみた結果、1割程度までは減らしてもいいということがわかった。


 ただ、残した分は株分した瞬間に消滅してしまったので、株分に使う籾を減らすことに意味はないだろう。


「じゃあ、逆に増やしたらどうだ?」


 2つ分の籾を一気に株分したら、品質の高い苗になったりしないだろうか?


「ムムーム」

「ダメか」


 まあ、ゴミにならなかっただけ、こっちの結果の方がマシだろう。株分時の籾の量を増やした場合は、多い分が株分時に消費されずに残るらしい。


 その後、複数の籾を混ぜて株分してみたが、一定量の籾があれば株分が可能であるらしい。


 今後は違う品質の籾を混ぜたらどうなるかなどを試してみたいが、今はこの程度の実験しかできなかった。


 それに、意外と時間が経過している。


「まあ、栽培が可能ってことは分かったし、とりあえずクルミたちとの待ち合わせ場所に急ぐか。オルトたちは、このまま畑を頼む」

「ム!」

「――!」


 モンスたちの敬礼に見送られ、俺は待ち合わせ場所に向かった。


 広場に到着すると、すでにクルミたちが待ってる。


 美少女が3人も固まっているので、かなり目立っていた。しかもクルミたちは有名プレイヤーらしいし、そりゃあ注目もされるだろう。人だかりって程じゃないが、相当な人数のプレイヤーたちが遠巻きにクルミたちを見ている。


 3人娘は全く気にしている様子はないけどね。こういう状況に慣れているのかもしれない。


 あれに声をかけるのは勇気がいるけど、ここで躊躇していても仕方ない。俺はプレイヤーたちの間をすり抜けて、フィルマに声をかけた。


「悪い。待たせた」

「大丈夫ですよ」

「私たちが早く来ただけだから!」

「くくく……それよりも行きましょう」


 俺が話しかけた瞬間、周囲から大きなざわめきが起きる。その後、かなりの人数が近づいてきた。凄い真剣な顔だ。3人のファンで、ナンパ野郎と思われたか? 明らかに耳を澄ませている奴とかもいて、メッチャ怖い。


 俺がフィルマたちに変なことを言わないかのチェックだろうか? 俺って、そんなに変なやつに見える?


「くくく……さすが白銀さん」

「注目度が違うね!」

「は? いや、何でもいいけど、早く行こう」


 俺は早耳猫のクランハウスに向かうことにした。何故かゾロゾロ付いてくるが……。早耳猫の店舗は情報漏洩を防ぐために、部外者は入れないことになっている。


 今日はアリッサさんが露店じゃなくてあっちにいてくれて助かった。


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