表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
323/876

323話 湿地


 地底湖の先に広がる第6エリア。そこは一見すると、背の高い草が生い茂る平原のように見えた。生えている草は葦に似ているかな?


「セーフティゾーンはどこだろうねぇ?」

「普通なら、フィールドの入り口の近くにあるけど……」

「見える範囲に目立つものはないな」


 暗視のネックレスを装備してみるが、やはり何も発見できない。


 周囲には、これと言ってセーフティーゾーンの目印になる物がなかったのだ。


 普通だと、明らかに大きな木や巨石、不自然な花畑など、入り口付近から確認できる目印があるはずだ。


「セーフティーゾーンがないとか?」

「それはないと思いますよ?」

「くくく……他の第6エリアでは、存在しているから」


 なるほど。ここだけに設置されていないということはないだろう。


「だとすると、この背の高い草に隠れて見えないってことか?」

「多分そうだよ!」


 見つけ出すのがかなり面倒そうだな。ただ、ここまで来て戻るわけにもいかんし、もうひと頑張りしますか。


 空中から周囲を見回せるアイネを偵察に出してもいいんだが、未知の場所では少し怖い。強敵に奇襲されれば、一発で死に戻りという可能性もあった。


 いや、少し上から見下ろしてもらうか? ああ、だめだ。アイネは暗視を持っていないから、普通に見えないだろう。


 アイネを偵察に送り出すのは、少し探索をしてみてどうしてもセーフティゾーンが見つからなかった時だな。


「ここに出るモンスターの情報がないので、慎重に行きましょうね」

「そうだね」

「くくく……どんな素材が手に入るかしら?」

「俺たちも慎重にいくぞ? オルト、サクラ、いざという時はタンクを頼む」

「ム!」

「――!」

「ドリモは後ろを頼む」

「モグ!」


 可愛いモンス達を盾にするような感じになってしまうが、俺が死に戻るわけにはいかんからね。何せ、どんな凶悪なモンスが出るかも分からない場所だ。レベル帯的にも俺たちには少し厳しい場所だし、命大事にで行かなければ。


 そして、先頭のクルミが草をかき分けて進み始めた。草はクルミの身長とほぼ同じくらいだろう。


「むー、前が全然見えない!」


 手で草を押しても、中々前には進めないらしい。体ごと草むらに分け入っていく。しかも、行く手を阻むのはそれだけではなかった。


「うえー。なんか足の裏がグチョグチョしてる!」

「あー、どうも湿地みたいだね」

「フィルマ、気持ち悪くないの?」

「私はほら、防水ブーツだから」

「なるほど。リキューは?」

「くく……くくく……」


 リキューのテンションが目に見えて下がっていた。まあ、リキューの足下は足袋に下駄だからな。そりゃあ、ビショビショになっているだろう。


「俺もブーツに水が滲みてきたな」

「ムー」

「――」

「モグ」


 オルト達のテンションも揃ってダウンだ。特にドリモは歩き辛そうだった。一歩進むごとに、足を振って泥を落としている。


 ルフレは全く変わらない。むしろ嬉しそうだ。水辺だからだろう。


 アイネ、リックのコンビも問題ない。アイネは浮かんでいるから問題ないし、リックは俺の肩の上だ。戦闘時には投擲もあるから問題ないだろう。


「ここは何か対策しないと、ずっと気持ち悪いだけだねぇ」

「しかも全然進めないな……」


 足が嵌まる程ではないんだが、僅かに足裏が沈み込み、非常に歩きづらい。さらに草のせいで見通しも悪いのだ。


「こうなったら……」


 すると、クルミがメイン武器である巨大ハンマーを構えた。


「フィルマ、下がってて」

「クルミ、何するの?」

「これで草を吹き飛ばしてやるんだっ! ちょりゃあぁぁ!」


 そのままハンマーをぶん回して草を薙ぎ払い始める。


 だが、なかなか上手くはいかない。少し折れ曲がったりはするんだが、その程度だ。


「むきー!」

「ちょ、ちょっとクルミ! そんな振り回したら――」

「ゲゴオオ!」


 直後、何やら大きな音が響いた。慌ててそちらを見ると、倒れた草の上に茶色い物体が寝転がっている。


「ゲ、ゲゴ……」

「うげげげぇぇ! カエルだ!」

「泥んこガエルだって! 可愛い!」

「うそ! どこが? フィルマ大丈夫?」

「えー、おっきいカエルさん、可愛いよ」

「くくく……カエル……ガマの油……可燃性かしら?」


 どうやら草むらに潜んでいたカエル型のモンスターを偶然攻撃したようだった。


 クルミはカエルが嫌いらしい。目を細めて、薄目で巨大カエルを見ている。フィルマは逆にカエル好きかな? クルミとは対照的に、目をキラキラさせていた。リキューは完全に素材を見る目だろう。


「ゲゴゴ」


 俺もちょっと苦手かな? アマガエル系だったら話も違うんだが、デカいヒキガエルは普通に気持ち悪い。


「私の攻撃が直撃したはずなのに、ぜんぜんHPが減ってないよ?」

「くくく……打撃耐性があるのかも」

「となると、私かリキューだね」


 その後、フィルマとリキューが連携して攻撃をしかけると、あっさりと倒すことができたのだった。どうやら打撃に対して高い防御を持つかわりに、刺突系の攻撃が弱点であるらしい。


「なあ、あれってセーフティゾーンじゃないか?」

「あ、本当だ!」


 戦闘のおかげで周辺の草が薙ぎ倒され、先が見通せるようになっていた。泥んこガエルがあちこち飛び回ったからだろう。


 むしろ、モンスターと戦って、草を薙ぎ倒しながら進むのがこのフィールドの攻略方法なのかね?


 草の間に、明らかに乾いた地面が見えている。そこには薄紫の花が咲き誇り、明らかに休めるようになっていた。間違いなくセーフティーゾーンだろう。


「とりあえず、安全地帯に入ろうよ」

「そうだな」


「出遅れテイマーのその日暮らし 2」が発売されました。

Nardack様の素晴らしい表紙が目印です。


さらに、タチバナ様によるコミカライズがコミックウォーカーにて始まりました。

現在は1話が公開中です。

版元はコミックアライブ様となりますので、wEB版、書籍版と併せてよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ