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319話 色と湖の関係

 地底湖の畔の岩に腰かけながら、青く輝く鍾乳洞を眺める。全く飽きがこない。いくらでも見ていられる。


「ララ~ラララ~♪」


 幻想的な雰囲気の地底湖でファウの奏でる音楽を聴きながらお茶をするなんて、贅沢なひと時だろう。


 リポップしたモンスターと2度ほど戦闘になった以外は長閑なものだ。しかも、リポップ直後にクルミの奥義で撃破されたし。このフィールドはリポップまでは時間がかかるが、今回は長時間同じ部屋に留まっているからな。こういうこともあるのだ。


 ただ、まったりしている俺たちの横で、リキューは難しい顔をしていた。


「なんだ? まだフィルマに怒られたこと気にしてるのか?」

「フィルマがあんな怖い顔するからー」

「え? ごめんなさい! さっきはちょっと言いすぎたかも……」

「……ちがうわ。魚の色のことよ」


 あのリキューに呆れた顔された!


 どうやら湖の謎について、色々と考えていたらしい。


「……やはり、色が関係しているのではないかしら?」

「ここの攻略にってこと?」

「ええ」

「まあ、こんなフィールドギミックがあるのはここだけだし、それはあるかも」

「魚の味が変わるだけなわけがない……くくく。そう思うわ」

「うーん、そりゃあ、そうかもね」


 リキューの言う通りかもしれないな。日によって変わる湖面の光。それによって味の変化する魚。さらに、出現する突撃ヤマメというモンスターにも色違いが存在している。これは何かあって当たり前だろう。


 しかし、このへんの議論は散々されているらしい。そして、様々な検証が試みられている。それでも、先に進む方法が見つかっていないのだ。


「白銀さんは、可能性としては何があると思う?」


 いきなり話を振られてもな……。


「まあ、定番だけど、対応する色の突撃ヤマメを一定数撃破とかじゃないか?」

「でも、それだったら試してる人いそうだけど?」

「まあ確かに。だったら、対応する色の地底湖魚を一定数入手は?」

「うーん……。漁をしてる人もいるから、そういう人たちが条件を満たしてないわけないと思うよ?」

「そりゃそうか……」


 これくらいは誰でも考え付くよな。ただ、フィルマが顎に指を当てて考えている。


「もしかして、あのヒレの魚だけを狙わないといけないんじゃないですか?」

「どういうことだ?」

「いえ、ここで魚を獲る場合、ほとんどの人は釣り竿か投網を使いますよね? そうすると、他の色の魚も獲れちゃうじゃないですか?」


 つまり、外れの魚は一切無視で、青ヒレの魚だけを連続で獲らないといけないってことか?


「それって試してる人いないのか?」

「うーん、どうだろう。でも、それをするには素潜りをしないといけないでしょ? だとすると、結構難しいんじゃないかな?」


 素潜りで魚を獲るだけならともかく、この地底湖にはモンスターが出現する。そこで素潜りを続けるのは、呼吸時間的にも、戦闘力的にも非常に難しかった。


 水中で活動するためのスキルはたくさんあるが、無限に水中で活動し続けられるスキルはまだ見つかっていない。それができるのは、最初で種族をネレイスにして、鰓呼吸を手に入れたプレイヤーだけである。


 しかし、地上ではステータスにマイナス補正がかかるネレイスは非常に不人気種族であり、第1陣では7人しかいないそうだ。


 しかもその種族的不利から、地底湖に到達しているプレイヤーもフィルマを入れて数人なので、素潜りで青ヒレの魚だけを狙うというのは、相当難しいのではないかということだった。


「ただ、それだと俺たちは全然役に立たないぞ? そりゃあ、一応潜ってはみるけど、またフィルマに負担をかけることになるんだが?」

「ふふ。むしろもっと潜っていられるんなら嬉しいくらいですよ? ねえルフレちゃん?」

「フム!」


 泳ぎが好きな人にとっては、全然負担ではないらしかった。その笑顔を見れば、むしろ嬉しいという言葉は嘘ではないだろう。


 ルフレもニッコニコだ。今後は、もっと水辺に連れて来てやった方がいいかもしれない。いや、庭の池で十分か?


「じゃあ、行きましょう!」

「フムムー!」


 ということで、俺たちは青ヒレの魚だけをゲットするために、地底湖に潜るのだった。まあ、ルフレの水中行軍と水泳スキルのおかげで、意外と泳げるけどね。それでも、陸上よりはやはり動きづらい。


 しかも俺はまだましな方で、うちのモンスたちは完全についてこれていなかった。泳げてはいるが、全然遅い。これはヤバそうだ。モンスターとの戦闘では苦労するだろう。


 しかたないので、モンスたちは陸上で待たせることにする。


 これがダンジョンであれば、こんなに離れることはできない。しかし、フィールド扱いのこの地底湖であれば、ある程度離れてもパーティは解消されないのである。


 アクアラングの術も使い、俺は湖面をゆっくりと泳いでいった。すでにフィルマとルフレは湖底付近を滑るように泳いでいる。マーメイドかペンギンか。とにかく俺とは全く動きが違っている。


 まあ、仕方ない。俺は俺のやれることをしよう。そう思いながら青ヒレの魚を探すんだが、なかなか見つからない。目の前に出てくるのは、赤ヒレか黄ヒレだけである。


 しかし、ルフレはすでに青ヒレを何匹も捕まえているらしい。もしかして、水深が深い方が青ヒレが多いのだろうか?


 時おり突進してくる突撃ヤマメをリキューたちと一緒に倒しながら、魚を捕まえて行った。地底湖魚はその動きが非常に遅いので、俺たちでも何とか捕まえられるのだ。


 しかし、何も起こらない。すでに2時間くらいは経過している。全部で100匹以上は捕まえただろう。


「一度、陸に上がるか」

「そうだね。さすがに疲れたよ」


 俺はクルミたちと一緒に水から上がると、何がダメなのか話し合う。


「やっぱり、魚じゃないのかな?」

「でも、魚が鍵なのは確かだと思うんだが……」

「あ~、白銀現象起きずか~」

「なんだそりゃ?」

「白銀さんと一緒だったらなんか凄いことが起きて、イベントが進むかなーて」

「いやいや、そんな訳ないだろう。何度か大発見はしたことあるけど、ほぼ運だからな」


 ここみたいに、ちゃんとした検証が必要な場所では役に立たないだろう。俺なんかよりも、検証組を連れてくるべきだ。


 そう言おうとした、その時だった。


「くくく……あれ、見て」

「え?」

「ちょ、何か光ってるけど!」


 リキューが何やら湖を指差している。そっちに目を向けると、驚きの光景が目に入ってきた。なんと、湖から細い光の柱が立ち昇っていたのだ。


「え? えええ? ありゃ、なんだ?」



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