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311話 卵と卵

申し訳有りません。予約をミスっておりました<(_ _)>


「さすが第4エリアボスの中でも最強の相手。レイドボス以外で一番の強敵だったぜ……」


 ただ、それに見合った成果もある。なんと、サクラ、ファウのレベルが上がったのだ。2人が同時にレベル30に達していた。そのおかげで新たなスキルも覚えている。


「うーむ、もしかして、もう少しレベリングしてレベルを上げておけば、もっと簡単に勝てたか……? いや、どっちもボス戦じゃ使えないスキルか」


 まずはサクラ。リックも持っている剪定スキルだ。これは植物系からの収穫にボーナスが付くスキルなので、地味だがサクラには非常に合っているスキルだった。


 そしてファウは妖精の癒しというスキルだった。これは翅からキラキラとした光の粒をまき散らして、フィールドにいる際にパーティの自然回復速度を上昇させるパッシブスキルだった。効果は実感しづらいが、長い探索では有用なスキルだろう。


 因みに、ここ数日で他のモンスたちも新スキルをゲット済みだ。オルト、ルフレはレベル30で、ドリモ、ヒムカはレベル20で新スキルを得ている。


 オルトは世話する作物が変異する確率が上がるという、変異率上昇。ルフレは包丁術というスキルをゲットしている。包丁術は、料理中の包丁を使う工程で素材の劣化を防いだり、場合によっては品質を向上させたりする効果があった。包丁を使っての戦闘術ではなかったね。残念だ。


 ドリモは俺も持っている宝石発見スキルを、ヒムカは炉の温度が上昇するという火精陣という生産系スキルだった。見事に戦闘系を外してくる。


 そうそう。スキルと言えば、ドリモの土耐性スキルが消えてしまった。ただ、これは珍しい事ではない。うちでは初めてだけど、他のテイマーさんからは報告が上がっているしね。進化した先の種族がその耐性に優れている場合などには、不必要となって削除されるらしい。


 マスクデータである属性値的な物が関係しているのだろうと言われている。つまり、土耐性は消えたけど、今までどおり土への耐性は高いままということだ。それだけ分かっていれば問題ない。


「スキルの確認はオッケー。ドロップは――」


 実は、ガルーダのドロップの中に、狙っている素材があった。まあ、絶対欲しいというわけではなく、あったら嬉しいなーくらいだが。


「えーっと、あった! やったぜ!」

「フムー!」

「これで巨大目玉焼きが作れるな!」


 俺とルフレが手に入れて喜んでいる素材は、嵐鳥の巨大卵というアイテムだ。卵といっても、従魔の卵とは違う。アイテムの種別が食材なのだ。つまり、食べるアイテムであった。


 当然、孵卵器を使用できないし、温めても孵らない。無精卵ってことなのだろう。これは前線のテイマーたちがボスをテイムできるかもしれないと考え、色々と検証した結果導き出された答えである。


 ガルーダの卵温め動画という、なんとも言えない動画がアップされていたのを俺も見た。孵化すれば感動的な動画になっただろうが、孵らない卵が延々と映されるだけのシュールな動画だった。128倍速で再生しても、まるで静止画を見ているかのような状態だったからね。


 リアルで獣医学部の学生であるプレイヤーが、地熱や火鉱石などを使って孵化を試みたりもしたらしい。あとは鳥系の魔獣に抱かせたり、モフモフのモンスたちに温めさせたりもしたという。しかし、結局は無駄に終わってしまったそうだ。


 俺がこの卵を狙っていたのは、食用のためである。この30センチ以上ある卵で目玉焼きを作ってみたいのだ。


「まあ、孵化させられるとしても、凄い時間がかかるだろうけどね」


 俺は、出がけに確認したリックとファウの卵のことを思い出していた。


 ファウが孵ったときのことを考えると、もう孵化していてもおかしくはないんだが、今朝もその兆候は見られなかった。


 孵るモンスターによってその期間は違うというが、まさかこんなに時間がかかるとは……。その分レアなモンスターである可能性もあるが、さてどんな子が生まれるんだろうかね?


「あとは羽根とか、爪か」


 俺たちがドロップの確認をしていると、急にリックが俺の肩の上に乗り、頬をペチペチと叩いた。


「もう少しで終わるから、ちょっとまってくれなー」

「キキュ!」


 早く行こうと促しているのかと思い、落ち着かせるために軽くリックの首を撫でたんだが、どうやら違っていたらしい。


「キッキュ!」


 リックは俺の前髪を引っ張りつつ、ボス部屋の入り口を指差した。


「あれ? 人がいる?」


 俺たちが入ってきたダンジョン側の入り口から、人が入ってくるのが見えた。しかし、これはおかしい。エリアボスの部屋はパーティごとに作成されるので、戦闘終了しようがフレンドであろうが、基本的には他のプレイヤーは入ってこれないのだ。


「NPCみたいだけど……」


 イベントか? でも、事前に仕入れた情報ではこんなイベントの話は全くなかった。


 俺たちは固唾を呑んで、そのNPCが近寄ってくるのを見つめる。


 身長が180センチほどもありそうな茶髪の男性だ。ヒョロッとした痩せ形なうえに微妙に猫背なので、戦闘力が高そうには見えないな。眼鏡の奥の瞳は細められ、口も柔和そうに緩んでいる。どう見ても善良そうだ。


 これで悪のNPCでしたってなったら、このゲームの運営は相当性格が悪いだろう。


 男はボサボサの頭をポリポリと掻きながら、ゆるい感じで声をかけてきた。


「やあ、こんにちは」

「こ、こんにちは」

「キキュ!」

「フム!」

「ほほう。頭のいい子たちだね。それにそっちの子は樹精じゃないか、実に愛らしい。僕はトーラウスっていうんだ。よろしくね」

「俺はユートだ」


 トーラウスと名乗ったNPCは非常にフレンドリーであった。俺と握手した後は、うちの子たちと順番に握手をしていく。ちゃんと相手の背に合わせて腰を屈めてくれていた。


「テイマーのユート君……。ピスコっていう男性を知っているかい?」

「もしかして、木材屋の?」

「そうそう! やっぱり君がユート君か! 僕はピスコの息子なんだよ」


 なんと、以前花見を一緒にしたNPC、ピスコの息子だった。向こうは厳つい外見だったのに、こっちはナヨナヨタイプか。全然似てないな。


 まあ、ピスコは外見は厳つくても、喋り方は紳士だったから、性格面では似ているのかもしれんけど。


「父がとても喜んでいたよ」

「いや、俺も楽しかったから」

「父が言っていた通り、ユート君は信用できそうな人だね……。ねえ、実は少し困っていることがあってさ、よければ手伝ってもらえないだろうか?」

「内容によるんだけど……?」

「僕は植物の研究をしていてね、今は雑草の図鑑の編纂をしているんだけど、助手が実家の都合でしばらく町を離れてしまっているんだよ。そのせいで作業が進んでいなくてね。その手伝いを探していたんだ」

「なるほど」


 どうやら戦闘系の依頼ではないか?


労働クエスト

内容:雑草の鑑定と仕分け

報酬:1500G

期限:7日以内


「返事は急がなくていいよ。僕はこの先にあるサウスゲートの町に住んでいるから、もし受ける気になったら訪ねてきてくれ。地図には、僕の家の場所を書き込んでおくから」


 トーラウスがそう言った直後、マップが自動的に立ち上がり、青い点が打たれる。多分、この第5エリアの町、サウスゲートの地図なのだろう。


 ただ、俺たちはまだ行ったことがないので、外壁を示す円と2本の大通り以外は何も描かれていない真っ白の地図だ。そこにマーキングされても、訳が分からなかった。


「それじゃあ、また会えるのを楽しみにしているよ」

「あ、ああ」

「またね」

「――♪」


 手を振りながら去っていくトーラウスを、サクラが笑顔で見送る。植物学者って言ってたし、もしかして植物系のモンスターからの好感度が上昇するような能力持ちか?


「このクエスト、どう考えてもチェーンクエストの続きだよな?」


 だとすれば、受けないという選択肢はないだろう。


「まあ、急がなくてもいいって言ってたし。町を軽く見て回った後でもいいかね?」


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