300話 コンプリート
「どうもー」
「いらっしゃいませ」
課金でマスコット枠を増やして再ログインした後、本日3度目の不動産屋に足を踏み入れていた。
相変わらずの対応で出迎えていただきました。多分、プレイヤーの中では利用してる方だと思うんだが、「また来ましたね?」的反応がない。
まあ、大人数を一度に相手にしているのだろうし、きっと処理速度優先なのだろう。
俺はマスコット一覧の中から、コガッパ、モフフ、テフテフを選んだ。さらに、ホームに設置できる施設、オブジェクト一覧を確認すると、案の定項目が増えている。
オバケの時と同じだ。
「追加されているのは、河童石、ツユ草、獣道? どれも訳が分からんな……。まあいいや、とりあえず全部タダだし、設置しちゃおう」
どこが河童なのか分からない、冷蔵庫サイズの黒っぽい岩の河童石。見た目がほぼ雑草の群生地であるツユ草。この2つは、とりあえず柳の古木の周囲に設置しておいた。
獣道だけは特殊なようで、ホームの周囲を囲む生垣に設置するようだった。見た目は生垣の下に空いた狭い穴でしかない。
ピッポーン!
『妖怪マスコット、及びその関連施設をコンプリートしました。『妖怪マスコットの保護者』の称号が授与されます』
おお、こんなことで称号が!
称号:妖怪マスコットの保護者
効果:マスコット所持枠+1。妖怪マスコット及び関連施設の情報を一部開示。
マスコット枠が+1という最高の効果だった。お金とかボーナスポイントよりも断然嬉しい。さらに、妖怪マスコットと、その関連施設の情報が一部開示、となっている。
「これは――」
ピッポーン!
「え? また? 何が起きた?」
ホームに追加した無料施設の情報が開示されているかもと思い、確認しようとした瞬間だった。再びアナウンスが鳴り響く。
『おめでとうございます。全プレイヤー中、最速で所持称号が10種類を達成しました。『最速の称号コレクター』の称号が授与されます』
「おお、そういえば今ので10種類目だったか。それでまた称号がもらえるの?」
称号:最速の称号コレクター
効果:賞金10万G獲得。ボーナスポイント4点獲得。ランダムスキルスクロール1つ授与。敏捷+1。
賞金がかつてない額だった。ボーナスポイントも多いし。しかもスキルスクロールまで? どんなスキルが入手できるかはランダムだが、ボーナスポイントを使わずにスキルを入手できるんだ、どんなスキルでも文句を言わんさ。
「……これで称号は11種類になったわけだ」
白銀の先駆者、不殺、大樹の精霊の加護、ユニークモンスターマニア、絆の勇士、村の救援者、妖怪バスター、宵越しの金は持たない、精霊門への到達者、妖怪マスコットの保護者、最速の称号コレクター。
この調子で頑張ろう。
「おっと、施設情報を確認しないと」
称号よりも、そっちの方が気になってしまっている。だって、称号はたまに貰うことがあるけど、マスコット関連のイベントはまだまだ新鮮に感じるからね。
「おお! やっぱり!」
ステータスウィンドウからホームの情報を確認してみると、柳の古木を含む無料オブジェクトの効果などを知ることができた。
まず一番最初に確認した柳の古木だが、柳のオブジェクトと、日本在来昆虫、魚類の生息する池が設置され、さらに庭のランダム自然設定に微風(涼)という項目が追加されているらしい。微風(涼)が吹くと、冷気を好むモンスターと、アンデッドタイプのモンスターの好感度が上昇するという面白い効果だ。
河童石は、庭の自然設定に雨(河童)、という設定が追加される効果があった。これの効果は凄まじい。何せ、この雨が降ると、庭の畑に植えている野菜の品質が僅かに上昇する効果があると言うのだ。さらに、キュウリであれば確実に1段上昇するそうだ。柳の古木と比べて「単なる庭石かよ。微妙だなー」なんて思ってごめんなさい。
獣道も中々面白い。効果は、庭の自然効果に獣来訪という設定が追加される。時おり狐や狸が出没するそうだ。触れ合えるかどうかは分からんが。そして、この施設の効果で獣が出現すると、獣タイプのモンスターの好感度が上昇するらしい。うちだと、リック、ドリモ、クママである。
「これは最後の1つも期待できそうだ!」
そう思ったんだが、その効果は微妙だった。いや、人によっては凄まじいのだろうが、俺には効果がなかったのだ。ただ、構わない。それ以上にロマンがあるからな。
ツユ草は、庭の自然設定に蛍が追加されるという効果がある。効果としては昆虫系モンスターの好感度上昇なのだが、うちにはいないのだ。しかし蛍が見れるだけでも十分だ。このツユ草が開花して蛍が舞うらしい。メッチャ綺麗だろうな。
「よし、ホームに戻――る前にマメ柴ゲットだぜ!」
いやー、ヤバいな。初日でうちのホームがマスコット天国になってしまった。まあ、本望ですけど!
早くホームの様子が見たくて、思わずダッシュしてしまった。ホームに戻ると、新しくゲットしたマスコットたちが庭の中央で大人しく待っていた。その眼差しが「早く名前をつけろ」と訴えかけている。
「コガッパはタロウ。モフフがホワン。テフテフがオチヨ。マメ柴がナッツだ」
道中考えてきたから、スラスラと名付けは終了した。すると、喜ぶマスコットたちが、俺の周辺で踊り出す。なんか盆踊りっぽいな。
遊んでいると思ったのだろう。他の子たちも集まってきた。いつの間にか皆が俺の周りで踊り始めたではないか。まるで盆踊りのようである。
全員勢ぞろいだ。ファウだけは踊らずに、俺の肩の上でリュートを弾いているけどね。
「うーん、壮観だぜ……」
ただ、どうやってここから出ようかな?
出遅れテイマー300話です! これも皆様の応援のおかげ!
一時期はどうなることかと思いましたが、なんとか続けることができています。
ありがとうございました。これからも拙作をよろしくお願い致します。




