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287話 シルフの長

 日付が変わり、俺たちのパーティが風霊門に一番乗りとなった。なんか、すごく後味が悪いんだけど。別にズルをしたわけじゃないんだけどさ……。


 まあ、今は気を取り直して、風霊門だ。岩の風穴にアメリアが風結晶を捧げると、ちゃんとアナウンスが聞こえてきた。


《精霊門の1つが解放されました》

『風霊門を開放したユートさんにはボーナスとして、スキルスクロールをランダムで贈呈いたします』

《4種類の精霊門が全て解放されました。最初に、四門全ての開放を達成したプレイヤーに、称号『精霊門への到達者』が授与されます》


称号:精霊門への到達者

効果:賞金30000G獲得。ボーナスポイント4点獲得。精霊系ユニークモンスターとの遭遇率上昇。


 やはり称号をゲットできてしまったか。しかもまたユニークモンスターとの遭遇率上昇効果である。多分、非常に有用なんだと思うが、効果は実感できてないんだよな。いや、賞金30000Gだけでも十分か。


「おおお! すごい!」

「称号ゲット!」

「くくく……」


 どうやら他のみんなも称号を獲得したらしい。これで、俺だけが称号を獲得してしまうよりは注目度が下がってくれるかな?


「で、これが風霊門ね」

「なんか怖くない?」

「そうかしら?」


 それは、まるで竜巻だった。風が渦巻く度にゴウゴウという音が聞こえる。ただ、炎の渦巻きである火霊門に比べれば、こちらの方が恐怖心は少なかった。風だけだしね。音はちょっと怖いが、それくらいだろう。


「いくぞ」


 俺はゆっくりと竜巻に手を入れる。激しい見た目と違って、そよ風が体を撫でるような感覚が一瞬あり、すぐに風の壁を抜けることができた。


 すでに見慣れた感のある小部屋。そして、他の精霊門と同じように1体の精霊が俺たちを迎えてくれる。


「よくぞ参られた解放者たちよ。わらわがシルフの長である」


 メッチャ偉そうな幼女キター!


 身長はオルトよりもちょい低いか? 見た目は中性的だが、ノームが少年寄りなのに比べて、こちらは少女寄りだ。


 つまり、幼児枠がノームとシルフ。少年少女枠がサラマンダーとウンディーネってことか。バランスは取れていそうだな。


 床に付くほどの長い白髪が美しい。着ている服は、白地に緑の刺繍の入ったダボッとしたブラウスに、緑のかぼちゃパンツだった。メッチャ可愛い。


 しかし手には金属製のゴツイ長杖を持っており、威厳があるのかないのか、分からない姿である。


「案内しよう。ついてまいれ」


 おお、さすがシルフ。飛べるのか。白い髪を引きずることなく、俺たちの頭と同じくらいの高度でフヨフヨと通路を進んでいく。


「はーい」

「くくく……」


 シルフの長の後について、クルミやリキューが歩き出す。偉そうな幼女様を先頭に、俺たちは通路を進んだ。


「ほれ、見えてきたぞ」


 その先にあったのは、今までの精霊の街とも違う、それでいて同じくらい幻想的な街並みであった。


「うわー、綺麗!」

「うつくしい……」

「幻想的ですね!」

「あれは繭ですかね? 興味深い」


 その街を形容するならば、糸と布と繭、だろうか?


 街全体が緑を基調とした、鮮やかでありながら落ち着きも感じさせる色合いで統一されている。


 その中でまず目に入るのが、繭のような形をしたテントたちであろう。何枚もの布をパッチワークのようにつなげ合わせたテントだ。


 そのテントから四方八方に糸が伸び、周囲に立っている材質が不明な柱と繋がっている。この糸と柱がテントを支えているようだった。


 他の妖精の街よりも天井がかなり高いうえに、緑色に輝く水晶のような物で空が覆われているので、閉塞感のような物は一切感じられない。


「どうじゃ? 美しいであろう。好きに見て回るがよい」


 ということで、俺たちは風霊の街を探索することにした。地面は草原になっており、非常に歩きやすい。


「まずはお店を探そうよ!」

「くくく……爆弾の材料はあるかしら……」


 クルミとリキューが先頭を歩き始めたので、何となくその後についてゾロゾロと歩き出す。リーダーシップを発揮しているわけではなく、単にクルミがせっかちで、リキューはそれにつられているだけだろう。


「この柱……糸でできてるのか」

「近くで見ると綺麗ね」


 俺とウルスラが興味を持ったのは、テントを吊るすための糸を支えている謎の柱だ。高さも太さも電信柱と同じくらいだろう。


 近くで観察すると分かったが、どうやら糸を円状に巻いて、固めた物であるらしい。もしかしたら、テントと繋がっている糸をそのまま柱にしているのかもしれない。


 どう考えても耐久度を得られそうには見えないが、まあファンタジーな上にゲームだしな。何かの不思議パワーが働いているんだろう。


「リアルでは絶対にお目にかかれない建造物だろうな」

「これ、個人所有はできないのかしら?」

「ホームにするってことか?」

「そう」


 ウルスラはこのちょっと繭っぽいテントがかなり気に入ったらしい。


 その後、色々と店を回ったのだが、俺的にはそこまで欲しい物がなかった。実際、他の精霊門で手に入れた素材で作った装備に比べると、武具の性能がいまいちだったのだ。


 食材はだいたい他で手に入るアイテムばかりだった。


 素材は被服や皮革に使えそうな素材が多いんだが、それも俺には不要なものばかりである。


 ただ、ホームオブジェクトショップでは一応面白い物を発見できたけどね。


「風車塔と、風耕柵?」


 風車塔は、作物や鉱物を粉末に変えてくれる施設だそうだ。時間がかかる代わりに、品質の低下が一切ないという。


 風耕柵は一見すると藤棚っぽいが、棒と棒の間が狭いかな。さらに、目の小さい網っぽいモノがたくさんついている。これはエアプランツを育てるための施設であるらしい。まあ、まだエアプランツなんか見つけたことがないから意味ないけど。


 しかし水耕プールで育てられる水草が水霊の試練に生えていたことを考えると、風霊の試練にエアプランツがある可能性はあるだろう。


 あれは空気草という、ダンジョン攻略に役立つ素材だった。きっと何か有用なエアプランツがあるはずだ。


「とりあえず両方買っちゃおうかな」


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