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280話 人形コンプ


 テフテフ、オバケの露店を攻略した俺たちは、3つ目の露店へと向かう。


「次はおはじき弾きか」

「モッフ~」


 モフフと遊ぶのは、おはじき弾き。


 あれだ、冬のオリンピックの定番、カーリングに似ている。所定の場所から的めがけて交互におはじきを指で弾き、止まった場所の得点で競い合う。的に届かなければ、そのおはじきは取り除かれてしまう。相手のおはじきをどうやって弾くかがキモであろう。


 これがなかなか難しかった。意外と力の込め方が繊細で、下手すると明後日の方に飛んで行ってしまうのだ。しかし、8回目にしてモフフが大失敗をしでかし、そのおかげで何とか勝利することが出来たのだった。


「モフフ!」

「はいはい、握手ね~。お、人形もくれるか。ありがとうな」

「モフ!」


 やっぱり正々堂々の勝負で勝利した方が、NPCの反応が良いな。


「最後はコガッパのベーゴマ対決か」


 他の3人はモフフと対戦が出来ないので、先にコガッパのところに行っている。


「どうだ?」

「これは今までで一番難しイ」

「改造ベーゴマを使っても、上手く回せなければ負けなのです」


 このベーゴマ対決は弾き飛ばした相手のコマの飛距離で得点が変化する方式みたいだな。しかし、そもそも回すことさえできていないようだ。


「一応、ここに紐の巻き方などを書いた紙があるんですけどね」


 エリンギが渡してくれたのは、数種類の紐の巻き方が書かれた藁半紙である。こんなところもレトロ重視か。


「男巻きに女巻きね」

「実はこれには少し自信があったんですが、ダメでした」

「え? ブランシュはベーゴマやったことがあるのか?」

「いえ、やったことは無いんですが、大好きな漫画でベーゴマの話題が出ていたんです」


 詳しく聞いてみると、某少年誌で100巻以上の連載が続いていた日本一やんちゃな警察官が主人公の漫画のことだった。ブランシュは日本にきてからその存在を知り、すぐにはまって全巻読破したそうだ。


「リョーさんが、ベーゴマのちん――」

「はいストップ! それ以上は禁止です! 男巻きって言おう!」

「でも、リョーさんは、まん――」

「それもダメ! 今の時代は色々あるから! とりあえずそれは女巻きにしといて!」

「は、はあ。分かりました」


 危ない危ない。


「うーん、シューターさえあれば……」


 エリンギがそんなことを呟いている。もしかしたら子供の頃はブレーダーだったのかもな。巨大なベーゴマを手に、四苦八苦しているようだ。


 そんな2人を尻目に、速攻で勝利を挙げていたのが冬将軍である。どうやらドワーフの器用さが発揮されたらしい。


 リアルスキルが高くなくても、ステータス補正で勝利が可能ってことなのだろう。全然気付かんかった。いや、俺はそこまでステータスが高くないから、あまり関係なかったというのもあるけどさ。


 それから15分後。


「よっしゃああ!」

「カパー!」


 10度も挑戦してればビギナーズラックって起こるよね。これまで練習ベーゴマでもほとんどまともに回せなかったのに、一か八か挑戦したら偶然綺麗に回せてしまったのだ。いや、うちの子たちとの練習が生きたのだと思っておこう。


 結果、俺のベーゴマはコガッパのコマを弾き飛ばし、勝利を収めていた。


「ふー、これで全部に勝利だぜ!」


 課金してないので賞品はショボいが、満足だ。人形も4つコンプだし!


「さて、これで全部を回ったんだけど……」

「何か変化はないですか?」

「うーん」


 とくにアナウンスがあったりもしないし、目に見えて変化もない。露店で勝つというのはあまり意味がなかったかな? そう思っていたんだが、何やらうちの子たちが騒がしい。


「モグモ!」

「ヒムー!」

「クマ!」


 さっきまでは練習用に購入したレトロオモチャで遊んでいたので、それがヒートアップして来たのかと思ったんだが……。


 違っていた。全員が同じ方向を指差して、俺に何かを訴えている。


「キキュー!」

「ヤーー!」

「ちょ、分かったから耳を引っ張るなって!」


 ちびっ子コンビが左右から耳を引っ張る。これ、リアルだったら耳が千切れるレベルの激痛だからね? CV冨永さんの少年が「姉さん痛いよ!」って言いながら涙目になる奴だ。


「向こうに何があるんだよ?」


 とりあえずモンス達が指し示す方に歩き出すと、ようやく俺は異変に気付いた。朽ちた屋敷の前に、赤い和服を着たおかっぱの少女が立っていたのだ。小学校低学年くらい? オルトと同じくらいの背格好である。

 

 少女はにっこりと微笑んでおり、不思議と恐怖は感じない。むしろ優し気な印象があった。


「うーむ、座敷童?」


 そう、その少女はどこからどう見ても、座敷童にしか見えなかった。


「ほほう? なるほど、遠野ですからね」


 エリンギが納得したようにうなずいている。遠野は座敷童伝説が残る場所であるそうだ。なるほど、この場所の名前は朽ちた遠野の屋敷だし、座敷童系のイベントが起きてもおかしくないか。


「あれが座敷童ですか」

「なんダ? 座敷わらシ?」

「あっ!」


 近づこうとすると、座敷童が屋敷の敷地の中に入って行ってしまった。そして、少し歩いた場所で振り向き、こちらを手招きしている。


「来いってことか?」

「行ってしまいますよ!」


 座敷童が再び歩き出した。やばい、このままだと見失うかも。俺たちはその後を追って走り出す。


「通り抜けられましたね!」

「そう言えバそうだナ!」


 座敷童と出会うことが、この屋敷に入るために必要なイベントだったのだろう。まあ、どうして出現したのかは分からんが。


 俺たちは朽ちて骨組みだけになった扉を開き、玄関に足を踏み入れる。すると、エリンギたちの姿がいつの間にか消えていた。


「あれ? みんな?」

「ヒム!」

「いや、お前らじゃなくて……」


 パーティではなく、プレイヤー単位で分けられてしまったようだ。


「どうしようか……引き返す?」


 この先戦闘がなければ問題はないだろう。それに、もし引き返してイベントが終了してしまったら最悪だ。


「うーん、とりあえず先に進むか」


 少し先にある扉の前に、座敷童が立っているしな。


新作が30話超えましたので、そちらもよろしくお願い致します。


レビューをいただきました。ありがとうございます。

新刊発売のタイミングにレビュー。さらにやる気が湧いてきました!

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