278話 レッツ、メンコバトル
屋敷の周りをグルッと一周した俺たちだったが、いくつかの謎を見つけ出していた。
どうやら、露店の店主たちがプレイヤーによって見え方が違うようなのだ。屋台は普通の人間なのだが、ゴザのような物を敷いて商売をしているNPCが、どうやら怪しかった。
「やっぱり、ゲットしたレトロオモチャによって変化するみたいですね」
俺には露店の店主がどう見てもコガッパ、オバケ、テフテフ、モフフに見えるのだが、エリンギたちには普通の人間NPCにしか見えない場合があるのだ。
「私たちは南の地下墳墓を攻略できていないので、欠けたおはじきを持っていません。そして、私達にはモフフが見えていない」
「やっぱ、東西南北の地下ダンジョンのNPCからアイテムをもらってるかどうかが鍵か」
「どうすル?」
「とりあえずゲームをやってみましょうか?」
「そうだな。そうするか」
店主がダンジョンNPCの露店は、全てがちょっと変わっていた。射的や食べ物系の屋台などではなく、店主とレトロゲームで対戦できるという露店だったのだ。
メンコ、ベーゴマ、おはじき弾き、ビー玉落としの4種類だった。そう、これは4つの地下ダンジョンで入手したアイテムを使った遊びである。お手玉だけは見当たらないが……。
やっぱこれを遊んでみろってことなんだろうな。ゲーム的に考えるなら、ここでNPCに勝利すると、イベントが起きるのだろうか?
「とりあえず、ここで遊んでみるか」
一番近くにあったテフテフの露店の前に立ってみる。すると、ウィンドウに料金100Gと表示される。
「安いのか高いのかわからんけど……」
支払いを済ませると、テフテフが何やらカードを手渡してくれた。それは、様々なポーズをしたテフテフの描かれたメンコである。
「えーっと、ルールは……ふむふむ」
意外と簡単だな。
お互いにメンコは5枚。そして、最初に地面には10枚置かれる。
メンコを投げて、地面のメンコを裏返せたら、そのメンコに描かれた得点が加算される。成功しても失敗しても、1投で交代。ただし、失敗した場合は自分の投げたメンコは地面に置かれたままとなり、1点分のメンコ扱いになる。
交互にメンコを投げていって、5投した後の得点で勝敗が決まるらしい。
多分、正式なものじゃなくて、LJO風のルールなのだろう。
「メンコか……。なあ、エリンギたちはやったことあるか?」
「ないです」
「私も」
「俺もダ」
まあ、仕方ないよな。俺たちの世代でやったことがある人間の方が珍しいだろう。それこそ、俺たちの祖父母世代の遊びだ。
「まあ、とりあえずやるだけやってみようか。何度もチャレンジしていればその内慣れるだろうし」
と言うことで、テフテフとメンコバトルである。テフテフが適当に並べたと思われるメンコ。その中で、特に大きなメンコには5点。中くらいのサイズに3点。一番小さいメンコには1点と書かれている。
この横にメンコを叩きつけて、風圧でひっくり返すってことだよな?
「もしかしたら俺の内に眠るメンコの才能が目覚めてしまうかもな」
「おお! 期待してるゾ!」
「頑張ってください!」
「よーし! 行くぜ! 唸れ俺のメンコよ! ちょりゃあああ!」
ペッタン……。
「白銀さん……」
「……ま、まあ初めてやったんだし、仕方ないだろ?」
「ヒムー……」
「ヤー……」
だから皆そんな目で見るなって! ヒムカ達まで! だって仕方ないじゃない! 初めてやったんですもの!
「ほ、ほら。テフテフがやるぞ。これを見て研究だ!」
「そ、そうですね」
「キキュ!」
「モグ!」
「クマ!」
皆が見守る中で、テフテフがどうやって持っているのか分からない状態でメンコを持ち上げると、ふわりと浮き上がる。多分、ドラちゃん方式なのだろう。そのまま地面にメンコを叩きつける。すると、見事に1点のメンコがひっくり返ったではないか。
「テフー!」
「おー。なるほど」
ただ力任せに叩きつけるのではなさそうだ。角度なども重要なんだろう。
「次こそは――!」
なんて決意したものの、結局5投して1枚しかひっくり返せなかった。テフテフはきっちり5枚とっている。
「負けか……」
ただ、単純に勝ち負けだけではないようだ。なんかウィンドウが表示されている。
「へえ、勝敗とは別に、賞品があるのか」
「1点の場合はハチミツだな」
しかもメチャクチャ品質が悪い。そして高ポイントの商品になると、ポーションやマナポーションの詰め合わせ、バフの付いた甘味などが並んでいた。
「すごいですね。この辺のアイテムなんか、ショップで購入したら10000Gはしますよ」
「でも、今のを見ていると中々難しいのではないですかね? 20ポイントなんて、全部をめくらないと無理ですよ?」
「それもそうですね」
「なあ、次は俺ガやってもいいカ?」
賞品に関しては、とりあえず脇に置いておこう。それよりも、勝敗だ。せめて勝ちたい!
「テフ」
すると、テフテフが何やら俺たちを手招きしている。蝶の羽で手招きとか、器用だな。
「なんだ?」
「テフー」
「練習用メンコ1000G?」
「テフ!」
商売上手! つまりこれで練習しろって事なのだろう。なるほどね……。
「とりあえず何度か挑戦して様子を見てみようかな」
その後、皆で何度かメンコに挑戦したんだが、勝利できる者は現れなかった。俺が1度5点ゲットしたんだが、テフテフは6点で勝つことはできなかった。モンスはさすがに遊べないらしく、応援である。
「難しいですね。日本の子供はこれで遊んでいたのですか? 器用なのですね」
「すごいナ! さすが日本ダ」
「いやそんな、間違った日本のイメージを持ったまま来日しちゃった観光客みたいなこと言われても……。俺たちだって全然成功してないだろ?」
これは練習用メンコを買うしかなさそうだ。
「1つくれ」
「テッフ!」
「ふふん。これで俺もメンコマスターになってやる!」
 




