表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/871

261話 アメリアと洞窟


「ちょ、こわいこわい!」

「アメリア大丈夫か?」

「こーわーいー」


 北の地下洞窟をアメリアとともに攻略中の俺だったが、道中はかなり順調であった。


 やはりアメリアのパーティは強い。ノームたちが防ぎ、ウサギたちが遠距離攻撃。その分担が出来ていることによって非常に安定した立ち回りができるのだ。


 進化したウサギたちは属性攻撃が可能になっているらしく、意外と攻撃力が高かった。


 ただ、戦闘以外では少し手こずったけど。アメリアは高所恐怖症であるらしい。以前の村防衛イベントで、俺と同じようにグラシャラボラスにぶん投げられて死に戻ってたけど、あれも相当恐ろしかったそうだ。


 サクラの作った命綱に掴まりながらノームたちに補助してもらいつつ、涙目で難所の急坂を登っていた。登りきった時には完全に泣きが入っている。


「や、やっとついた……。高いし暗いし狭いし足場不安定だし……!」

「まあまあ、ここを過ぎればもう難所はないから」

「ほんとう?」

「ああ、もうちょっと頑張ろうぜ」

「うん」


 恐怖症とまではいかなくとも、暗い場所も狭い場所もあまり得意ではないらしい。なぜ洞窟に来たのか。いや、確実にオルトに釣られてだろうけど。


「でも、ここは私だけじゃ絶対無理だったよ」

「え? そうか?」

「うん。あの坂で詰んでたと思う。あんなの、怖すぎて命綱なしじゃ登れる気がしないもん」

「少しは役に立ってるなら良かった」


 道中の戦闘じゃ、完全にアメリアの寄生になってるのだ。


「それに、これも売ってもらったし」


 アメリアの腰で光を放っているのは、俺が渡したコケ籠だ。サクラが早速作ってくれていたのである。


 店売りの品とほぼ同じものだ。むしろこっちの方が色合いがカラフルかな。中に仕込むヒカリゴケも遮光畑で少しずつ育ててあったので、量にも問題はない。


 因みに値段は2000Gにしておいた。本当は材料費だけでいいと言ったんだが、アメリアがせめてこれくらいはと2000Gを渡してきたのだ。


 店売りの物は2000Gちょいだったし、フレンドのアメリア相手だったらもう少し安くてもいいと思ったんだけどな。


 アメリア曰く、サクラお手製の木工作品なのだから、そんな安く売るなどあり得ないらしい。もし無人販売所で販売する時は、最大の値段を付けるようにと忠告されてしまった。


「とりあえず、ちょっと休憩させて!」

「はいはい」

「あー、疲れたー」


 俺も初めてここを登りきった時は、疲れ果てて動けなかったから仕方ない。


「ジュース飲も」


 アメリアが岩の上に座って、何やら赤い飲み物を取り出した。


「アメリア、それなんだ?」

「これ? カボチャ苺ジュースだよ!」


 なに? それは聞き捨てならんぞ?


「イチゴを手に入れたのか?」

「いやいや、ワイルドストロベリーのことだよ」

「あ、なるほど」


 話を聞くと、アメリアも花屋から始まるチェーンクエストを進めているらしい。考えてみれば、ノームを複数体所持しているのだ。作物も育てられるだろうし、ワイルドストロベリーを育てていてもおかしくはなかった。


「ワイルドストロベリーと橙カボチャを混ぜたんだ」


 その組み合わせは試したことがなかったな。ハチミツとか混ぜて甘さを足すことが多いのだ。


 ちょっと興味がある。鑑定した感じ、雑草であるワイルドストロベリーを使っているせいかバフはないようだ。だが、ジュースで重要なのは味だからな。


「なあ、それもう1本ないか?」

「ごめん、いまこれしか持ってない」


 残念。余ってたら譲ってもらおうかと思ったんだが。


「これ興味あるの?」

「おう。まだその組み合わせは試したことがなかったからな」

「じゃあさ、トレードしない? 別にこれが好きって訳じゃないから。むしろ、こればっかり飲んでて、もう飽きちゃったんだ」


 それは有り難い提案だ。結局、俺はハチミツピーチジュースとカボチャ苺ジュースを交換してもらったのだった。


 味? はは、想像通り甘さ控えめで青臭かったよ。だが、あれでもアメリアの作れるジュースではましな方であるらしい。改めて育樹と養蜂の有難味が分かるね。


「うーん、さすが白銀さんのジュース。おいしいねぇ」

「まあ、いろいろ研究してるからな」


 料理系に関してはそれなりに自信があるのだ。


「そう言えばさ、お茶の試飲会には参加するの?」

「なに?」

「あれ? 知らなかった?」


 試飲会? 聞いたことがないが、何かのイベントか?


 アメリアが詳しく説明してくれたが、公式のイベントではないらしい。ハーブティーを作っている料理系プレイヤーや、ハーブを栽培しているファーマーたちによるハーブティーの品評会のようなものを、開催するらしい。


「へぇ。面白そうだな」

「じゃあ、参加する? 明日だけど」

「え? そんな簡単にいいのか?」

「別に招待状とかあるわけじゃないし。主催者がフレに声をかけてるだけだから」


 始まりの町の会場に行けばそれで参加できるそうだ。楽しみだな。



 1時間後。


「ウサぴょん! 頑張って!」

「ピョン!」


 俺たちはポルターガイスツ相手に有利に戦いを進めていた。チームを組んでいるとボスが強くなるのだが、それ以上にアメリアたちが強い。


 それにボスの能力値が上昇しても、その数が大幅に増える訳じゃない。そして、追加されるポルターガイストは所詮はポルターガイスト。アメリアのウサギたちの攻撃が当たれば一撃で倒される。


 結果として、ポルターガイストは増える端から駆除されてゆき、ボスのHPがガリガリと削られていった。


 道中は人数が少ない方が有利だろう。特にあの激坂は少人数の方が登りやすいはずだ。前の奴に巻き込まれたりする危険も減るし。


 だが、ボス戦では人数が多い方が圧倒的に有利だった。ポルターガイストを駆除する余裕が生まれるからだ。


 うちはファウたちのおかげで命綱が使えて本当に良かったな。


 結局、最初に俺たちが死に戻った時よりも短い戦闘時間で、あっさりとボスを撃破できてしまっていた。


 さて、この先はどうなっているかね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ