26話 謎の卵買いました
ギルドランクが上がったことにより、従魔の売買が出来るようになった。
「早速リストをご覧になりますか?」
「ぜひ」
という事で、現在買えるモンスターのリストを見せてもらったのだが――これが弱い。まあ、ギルドランクが低いから仕方ないのかもしれないが。レベルも1だし、第一エリアでテイムできる牙ネズミ、灰色リス、ラビットだけしか買う事が出来なかった。
これが同じモンスターでもテイムモンスの卵から孵った個体だったり、ユニーク個体であれば強いんだろうが……。俺のランクじゃまだ買えないようだ。
もしくは、そういう強いモンスを売るテイマーがまだいないのか? 考えてみたら、まだサービス開始から間もないわけだし。時間が経てば初心者でもレアなモンスを手に入れられるような、良システムになるかもな。
「うーん、テイム枠は限られてるんだし、弱い奴を買うのはちょっとな……」
俺のスキルは使役:Lv3、従魔術:Lv5で、テイム枠は3しかないのだ。今はやめておこう。そう思ったんだが、リストの下の方に、気になる物を見つけた。
「卵?」
「はい、卵は孵化させる手間もありますし、ややお安くなってますよ」
それも勿論知っている。親が同種のモンスター同士だったら子供はその能力を引き継いだ同モンスターに確定される。その場合、ややユニーク個体や、技を引き継いだ強個体が生まれる可能性が上がるらしい。
問題は親が違うモンス同士の場合だ。どちらかの種族の子供が生まれるのだが、生まれるまでは種族がどちらになるか分からないのだ。しかも、特定の組み合わせでは新種のモンスが生まれることもある。
なので、卵を買って孵化させるのはギャンブルではあるが、思いもがけない強いモンスを入手できる可能性もあるらしい。期待を下回る場合だって当然あるが。
現在買える卵は3つ。うち2つは、両親ともに牙ネズミ、ラビットの卵だな。多少強い個体が生まれるとは言っても、これを買う気にはなれない。
ただ、中々面白い卵が1つ混じっていた。片親がハニービー、片親がリトルベアという卵だったのだ。共に第二エリアの森に出現するモンスターだ。アドバンステイムの候補に入っていたので覚えている。俺のランクでも、卵だったら買えるようだ。
「昆虫と哺乳類で卵が産まれるのか?」
「はい。相性の良いモンスター同士の魔力が混ざり合って出来るのが卵ですから。種族など関係ありません」
「いや、相性って……。熊って蜜蜂の天敵なんじゃ?」
「蜜を好む者同士ですから」
「そういう話か?」
「そういう話です」
まあ、相性の話は置いておいて、この卵は良いな。どっちが生まれてもそれなりに強いし。前衛アタッカーか遊撃アタッカーかの差だ。しかも値段は3000G。他のモンスの5倍以上するが手は出る。出てしまう。
「買っちゃおうかな……」
「どうします?」
「うーん。卵って確かギルドに預けて孵してもらえるんですよね?」
「はい。当ギルドの2階が孵卵室となっておりまして、そこでお預かりすることができます。生まれたらお返しする形ですね。パーティ枠が無ければ牧場へお送りしますし、ホームがあればそちらへ送ります」
俺にはまだ関係ないが、卵から生まれた魔獣がパーティ枠を超えてしまう場合、普通であれば牧場に預けることになっている。その牧場がどこにあるかも分からないし、なぜパーティ枠を超えてテイムしたモンスが一瞬で送られるのかとか、全テイマーが無限にモンスを預けられるほど広い牧場が存在するのかとか、世話しているのは誰なのかとか全てが謎だが。
簡単に言ってしまえばギルドにモンスを預けることができるシステムだった。
勿論その間はレベルが上がらないし、成長もしない。マスクデータとして存在すると囁かれる愛情度も上がらない。余ったモンスを預けるだけの場所だ。
ただ、ホームという物があれば少し事情が変わってくる。ホームには規模によって複数のモンスを配置することが可能で、そこに預けておくと牧場とは違う様々なボーナスを得ることができると聞く。
家型のホームなら掃除や料理をしてくれたり、牧場型ならモンスが自動的に成長したり等々、色々あるようだった。実は、オルトが自主的に畑仕事をしてくれるのも、このホームボーナスらしい。
「じゃあ、卵を買います」
「了解いたしました。では、ギルドへ預けることを希望なさいますか? それとも、孵卵器のご購入を希望されますか? ホームをお持ちの場合、孵卵器を個人で設置可能です」
「え? 孵卵器って個人で購入できるんですか?」
「はい。ギルドの孵卵器は最低レベルの物ですので孵るまで時間がかかりますし、孵化時ボーナスもございません」
「孵化時ボーナス?」
「上級の孵卵器であれば、生まれる子供に何らかのボーナスが発生します。初期ステータスの微増や、スキルの変化などですね」
「という事は、ギルドに預けるよりも、孵卵器を買った方が良いってことですか?」
「はい。ただ注意点がいくつか。まず個人用孵卵器は使い捨てです。一回使えば消滅します。また、卵は生まれてから、もしくは購入から1週間以内に孵卵器に設置できなければやはり消滅します」
ずっととっておいて、後々高級孵卵器を使うっていうのはできないってことか。
「それ以外にも、鍛冶や錬金術などで作り出すことも可能だそうです」
へえ、そうなのか。それはぜひチャレンジしてみたいぞ。まあ、今はレシピも材料も揃ってないから夢のまた夢だけどね。それにしても使い捨て? そこまでは知らなかったな。
「孵卵器はおいくらなんですか?」
「ギルドにお預けいただければ100Gです。お買い上げの場合、最も安い孵卵器で2000Gから。これは初期ステータスのどれかがランダムで+1される効果がありますね」
たった+1なのか。だが、2000Gなら払えるし、買っちゃおうかな。卵と合わせたら5000Gもするけど。
「こちらが孵卵器の一覧となっております。ユート様はギルドランクが2ですので、このランクの物までしかお買い上げいただけません」
購入可能な孵卵器は2種類あった。
通常孵卵器2000G、成長促進孵卵器4000Gの2つだ。
成長促進孵卵器は、初期ステータスがランダム+3効果だ。
即決だな。俺は成長促進孵卵器を買う事にした。これで所持金は5000Gになってしまうが構わん! ふっふっふ。これで卵から生まれるモンスがより強力になるぜ!
使い方は簡単なようで、このまま孵卵器に卵をセットして、置いておけばいいらしい。野ざらしでいいのかと聞いたら、問題ないそうだ。孵卵器の蓋が卵を守ってくれるらしい。
「ありがとうございましたー」
俺は畑に戻って、早速孵卵器を使うことにした。
「いや、でも野ざらしってなんか気になるんだよね……。納屋の中には設置できんかな?」
なんとできました。うんうん、やっぱり屋内に設置した方が安心だよな。
「これで念願の戦闘力が手に入るぞ!」
まあ、孵ってくれるのはいつになるか分からないけどね。




