259話 アメリアと再合流
クリスたちを見送った俺は、そのまま畑に戻っていた。アメリアに連絡を取るためと、パーティを入れ替えるためだ。
俺はまずアメリアに連絡を取ることにした。フレンドコールをかけると、数度の呼び出し音の後にアメリアが応答する。
「はいはーい。さっきぶり!」
「アメリア、さっき見つけたダンジョンなんだが、この後どうする?」
「もち行くよ! 白銀さんは?」
「よければ一緒に行こうと思ってな」
「やったー、オルトちゃん達と一緒!」
これは絶対にオルトを連れて行かないといけなくなったな。
「じゃあ、ダンジョンの前で待ち合わせでいいか?」
「ううん。私がいくよ。始まりの町の畑だよね?」
「いいのか?」
「うん。白銀さんの畑を見てみたいし」
まあ、来てくれるならいいか。
「じゃあ、準備して待ってるよ」
「また後でね!」
さて、アメリアが来る前に入れ替えを済ませちゃおう。
「パーティはオルト、リック、ルフレ、ファウ、ドリモ、サクラだな」
クママとヒムカは、ポルターガイスツ戦ではあまり活躍できないのだ。次頑張ってもらおう。
「クママとヒムカはオレアと一緒に留守を頼む」
「ヒム!」
「クマ!」
「トリ!」
敬礼するヒムカたち。それに対してオルト達も敬礼返しをする。ドリモも、敬礼はしっかりやるんだよな。その横で、妖怪たちが必死に跳んで主張している。自分たちを忘れるなということなのだろう。
「分かってるって。チャガマとスネコスリもたのむ」
「ポン!」
「スネー!」
俺が撫でてやると、2匹は気持ちよさそうに目を細める。一応、俺に懐いてくれてるんだよね。
そうやって妖怪たちと触れ合っていたら、オルトたちが一斉に抱き付いてきた。
「ムム!」
「フムム!」
「クックマ!」
どうやら自分たちも構えということらしい。俺はオルトとルフレの頭をワッシャワッシャと撫でつつ、クママのお腹をムニムニする。うーん、良い手触りだ。
「ヒム!」
「――!」
「トリ!」
「分かってるよ。ほれ」
「キキュ!」
「ヤー!」
「はいはい。お前たちもね」
結局、他の子たちも撫でることになったな。周りに寄ってきていないのはドリモだけだ。これはドリモも愛でなくてはなるまい。
「ドリモー」
「モグ」
「おいおい、なんでそんな後ずさりするんだよ?」
「モグ……」
俺が手をワキワキさせながら近づくと、ドリモが何故か怯えた様子で後退る。
「ドリモ、観念しろ」
「モ、モグ……」
俺はイヤイヤするドリモを捕まえると、そのオーバーオールの中に手を突っ込んだ。
「ホレホレ、ここがいいのか?」
「モグ~」
「ここがええのんか?」
「モグモ~」
やばい、腹の毛がきもちいい。クママよりも長毛で、手に毛が絡みつく感じが何とも言えない。実家で飼っている犬を思い出した。
だが、そんなことをやっていると、強烈な視線を感じた。
「白銀さん……。ぐへへ」
「ア、アメリア」
アメリアが何とも言えない顔でこっちを見ていた。ニヤケ顔に見えるが、多分呆れられているんだろう。だって、冷静に自分の姿を見たら、ド変態にしか思えないし。
「……待たせたな」
「え? 止めちゃうの?」
やめて! それ以上は突っ込まないで! 調子に乗ってたのは謝るから!
「ダ、ダンジョンに行こうか?」
「まだ遊んでてもいいよ? ていうか遊んだら?」
「いや、急ごう!」
30分後。
俺たちは北の町の地下洞窟に戻ってきていた。入り口の周辺にはちらほらとプレイヤーの姿がある。
「もうアリッサさんがここの情報を売ってるみたいだな。あ、そうだ。アメリアにも情報料を分けないと。すまん、忘れてた」
「はっ! 私も白銀×ドリモとか、スネコスリちゃんの衝撃が強すぎて忘れてたわ」
「じゃあ、早耳猫に売った金額の半分な。ほれい、受け取れ」
「え? 半分? え? え?」
俺がお金の譲渡申請をすると、なぜかアメリアが驚いた様子でステータスウィンドウを見ている。
「ちょっと待って! こんなもらえないから!」
「いや、でも折半するっていう話だったろ? ここの情報、20万で売れたからさ」
「そ、そんなしたの? 情報ってそんなに高いの? いえ、これが噂の白銀効果……? 普通そんな高い情報なんてそうそう……」
「どうした?」
「ちょ、ちょっと高かったから驚いただけよ。でもその値段は白銀さんが探索した情報もあわせてでしょ?」
「アメリアが発見した入り口の情報が一番高いんだし、むしろ折半でいいのか?」
そもそも、入り口さえ見付ければ地図や採取物、出現モンスターの情報は簡単に入手できるのだ。それこそ誰だって。やはり一番重要なのは、隠された入り口を発見することだろう。そう考えたら、アメリアの役割の方が重要だったよな。
「なんなら折半じゃなくて、7割くらいは――」
「あ、いい! 折半でいいです!」
「そうか?」
「うん!」
ま、折半の方が揉めなくていいか。
「それよりも、早く入りましょ!」
「おう。それにしても、凄いパーティだな?」「でしょ? 可愛いっしょ?」
「いや、まあ……」
可愛いというか、バランスが悪いというか・……。何せ、兎3、ノーム2だ。ノームファイター、ノッカーに加え、ハートラビット、クリアラビット、ブラックラビットの3種類である。
「やっぱノーム4体はさすがにバランス悪いからね! 少しは考えてるんだよ!」
「あ、そう」
考えてるやつは、兎とノームだけでパーティは組まないだろう。まあ、アメリアの兎たちならきっと強いんだろうが……。
「前回の反省を生かして、機動力重視だよ!」




