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240話 地下水道


 マンホールを降りると、そこはレンガ造りの小さな部屋だった。天井は2メートルちょいくらいの高さかな。


「みんな大丈夫か~?」

「ヤー!」

「ムムー!」

 

 飛べるファウはそもそも梯子なんか使わない。オルトも普通に梯子を下りて来たな。ヒムカ、ルフレ、サクラも人型なので大丈夫だ。


 問題はドリモだ。一応二足歩行だが、手は鋭い爪が生えているし、足も短い。梯子を上手く下りれるかな?


「下で支えようか~?」

「モグ」


 マンホールの入り口を見上げながらドリモに声をかけたが、どうやら助けは必要ないらしい。首を横に振っている。


「モグ」

「だ、大丈夫か?」


 多少もたつきながら、梯子に足をかけるドリモ。とても大丈夫には見えん。下から見ると、オーバーオールの尻尾穴から飛び出した尻尾がヒョコヒョコと左右に揺れていた。短い脚をチョコマカと動かしながら、梯子をちょっとずつ降りようとしている。


「モグ」

「あっ!」


 俺は思わず梯子の下で身構えてしまった。だって、足を踏み外して落下したように見えたのだ。


 しかし、それは見間違いであった。


 シューッ!


 ドリモは自ら足を梯子から外し、両手で梯子を握ったまま下に滑り降りて来たのである。梯子の両端を握った手の力で、軽く勢いを殺しているようだ。本来なら問題なく華麗な着地をきめていただろう。


 ドシン!


「ぐへ!」

「モ、モグ?」


 俺が下にいなければね。


 勢いよく下りて来たドリモのプリティーヒップを、前に突き出した両手で受け止めようとしたんだが、当然俺の貧弱な腕で受け止めきれる訳もない。


 ズシンと腕にかかった重みに耐えきれず、俺はそのまま前に倒れ込んでしまった。ドリモの背中に顔面を押し付ける形だ。


「いててて」


 いや、ゲームの中なので別に痛みなんかないんだけどね。こういう時って反射的に「痛い」って言っちゃうのだ。


「大丈夫かドリモ?」

「モグ~」


 無事らしい。俺の腕を尻で押しつぶしただけだしな。ドリモが俺の手をグイッと引っ張って、立ち上がらせてくれる。


「ありがとな」

「モグ」


 褒めても素っ気ない。だが、それがカッコイイね! やだ、惚れちゃいそう!


「ムー?」

「ヤー?」


 そんなことをしている俺たちをよそに、オルトとファウが部屋から続く通路を覗き込んでいた。2人とも夜目持ちである。先が見えているんだろう。


「どうだ? 敵はいそうか?」

「ム!」

「ヤー!」


 首をフルフルと横に振るオルト達。どうやら敵は見えないらしい。それでも油断はできない。初めての場所だし、慎重に慎重を期さねば。


「じゃあ、先に進もう。オルトとドリモが先頭。その後ろにヒムカとルフレ。サクラは俺の後ろだ。ファウは俺の肩の上にでも乗っててくれ。敵が出た時は、教えてくれな」

「ヤー!」


 ファウが右腕で力こぶを作り、左手で右の袖をまくるやる気満々ポーズで頷いてくれる。頼もしいね。


「ここは……下水道か」


 しばらく進むと、通路の横に水の流れている場所に出た。下水と言ったが、いわゆる汚物を流す場所ではなく、雨水などを集めて排出するための場所だと思われた。


 匂いもしないし、水が意外に透き通っているのだ。もしかしたら中水道なのかもしれない。


「下水道マップか……」


 RPGなんかだとよくあるダンジョンだ。だが、俺はこの手の下水道ダンジョンがあまり好きではない。だいたい迷路化しているうえ、梯子を登ったり下りたりするギミックが用意されていて非常に面倒なことが多いからだ。


「とはいえ、ここまで来て引き返す選択肢はないんだ。とりあえず進もう」

「ム!」

「モグ!」


 気合を入れ直して先に進むと、案の定行き止まりである。隙間の狭い鉄格子が通路と水路にはめ込まれ、進むことが出来なくなっていた。隙間が狭すぎて、ファウでさえ通り抜けられない。


「こういう時のお約束は、格子の棒が何本か外れるっていう展開だが……」


 動かんね。俺の腕力不足かと思ってオルトとドリモにも試してもらったが、どうにもならなかった。魔術などで破壊もできない。


「しかも攻撃魔術がぶっ放せるってことは、完全にダンジョン扱いってことだよな」


 警戒レベルを上げねば。


「にしても、どうすればいいんだ? 途中で隠し通路でも見付けろってことか? もしくは先に進むためのキーアイテムが不足してるとかかね?」


 精霊様の祭壇みたいに、鍵がなくちゃ先に進めないという可能性はあるな。


 だが、悩んでいるとルフレが水の中に飛び込んだ。そして、そのまま水にザブンと潜ってしまう。


「ちょ、ルフレ。どうした?」

「フムー!」

「あれ?」


 なんと、ルフレが鉄格子の向こう側にいた。水中に穴が開いているパターンだったか。


「汚水じゃないって時点で気付くべきだったな。ただ、ヒムカは水に入れるか?」

「ヒム……」


 俺の質問に対して、ヒムカはすっごい嫌そうな顔で頷いている。一応水には入れるようだ。火の精霊とはいえ、体が火で出来ているわけじゃないからだろう。


 しかし、水路に降り立って腰まで水につけているヒムカは心底嫌そうな顔だ。


 この先も何度も水に入る可能性はあるし、無理に水中行動をさせていたら好感度が下がってしまうのではなかろうか? 


ここはヒムカとリックを入れ替えておこう。

「ヒムカは畑で留守番しててくれ」

「ヒム」

「そして、リック召喚だ!」


 クママとどちらにするか少し悩んだが、採取に期待してリックにしておいた。


「キキュー……ギュー!」

「やべ! リック! ほら捕まれ!」

「キュー!」


 水路に入っていたヒムカと入れ替えたせいで、リックは召喚直後に水路の中に落下してしまっていた。パニックに陥って溺れかけたリックを慌てて救出した。


「大丈夫か?」

「キキュー……」


 俺の手の平の上で毛をブルブルして水気を飛ばしている。ダメージもないし、少し慌てたくらいで済んだようだ。


 まあ、溺れかけたところ悪いが、すぐにまた水中に潜ってもらうことになるんだけどね。



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