表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
232/870

232話 お嬢さん


 さて、再び火霊の試練に戻って来たわけだが、大問題発生である。


 問題の元は、初めて戦闘に参加したヒムカではない。むしろヒムカは思いのほか活躍していた。


 盾役としての能力は、進化前のオルトとほぼ同じなのだが、炎熱耐性のおかげで燃焼状態にならないので、このダンジョンでの盾役としては非常に優秀なのだ。通常攻撃力の低いファイアラークであれば、安心して任せることができるだろう。


 問題はヒムカではなく、サクラであった。


 木の精霊であるサクラが火属性のダンジョンでどこまで戦えるか、様子見のつもりで連れて来たんだが……。


「~!」

「またか! ほらサクラ、水だ!」

「――……」


 どうやらサクラは燃焼状態になりやすいらしかった。ファイアラークやサラマンダーの攻撃ですぐに燃えてしまう。水属性のルフレが燃焼にならないのと逆だ。


 2戦に1回は燃焼状態になってしまい、その火を消し、傷を癒すために俺とルフレのMPが凄まじい速度で減っていった。


 しかも、ファイアラーク、サラマンダーは樹属性の攻撃に耐性があるらしく、サクラの攻撃の威力は半減だ。


 今回、パーティはヒムカ、サクラ、ルフレ、ファウ、ドリモ、オルトの構成である。クママが外れた分、サクラに頑張ってもらうつもりだった。だが、サクラがこのダンジョンとの相性が悪すぎて、クママの代わりが全く務まっていない。


 リックの代わりにヒムカが入ったことで、より火力も落ちている。1回の戦闘にかかる時間が倍近くなっていた。


 戦闘が長引けばダメージも多く喰らうし、燃焼になる可能性も高くなる。結果としてMPやアイテムの消費も上がるのだ。


「うーん、メチャクチャ効率が悪いな」

「――……」

「ああ、サクラ、そんな悲しそうな顔をするな。お前のせいじゃない。最初から相性が悪いことを知っていて、連れて来た俺が悪いんだ」

「――」

「そう自分を責めるな。な?」

「――」


 慰めても、サクラは首を横に振って悲し気な顔をしていた。うーん、これはこのまま探索を続けていたら、好感度が減少したりしちゃうかもしれないな。


 しかも焼け跡が痛々しすぎる。燃焼状態になった後、しばらくの間黒い煤が付いたような焦げ跡のエフェクトが消えないのだが、美少女の姿をしているサクラは他の子たち以上にその姿が痛々しかったのだ。


 リックやドリモ、クママの場合は毛皮がちょっと汚れただけに見えるし、オルトは泥んこ遊びをした後にしか見えないんだけどね。


 結局、俺たちは一度畑に戻り、サクラの代わりにクママを加えることにした。今後はフィールドやダンジョンと、モンスの相性をもっとしっかり考えなきゃダメだな。


「はぁ……。サクラには悪いことをした」


 サクラの悲し気な表情が頭から離れん。


「ムム」

「慰めてくれるのか?」

「ヒム」

「クックマ」

「フム~」

「モグ」

「ラランララ~♪」


 皆が慰めるように俺の足をポンポンと叩いてくれる。ドリモは手の甲で軽くだけどね。ルフレの頭の上に載っているファウが軽快な音楽を奏で始めた。皆の心遣いが嬉しいぜ。


「よし、気を取り直して、ダンジョン行くか」

「ムム!」


 うちの子たちとスキンシップしながら、再び火霊門をくぐる。サクラには悪いんだが、やはりクママが入ると安定感が違っているな。サクサクと攻略が進むのだ。リックがいないので採取の効率は落ちたが、火霊の試練で戦うなら現在のメンバーがベストであろう。


 そのまま戦闘を続けること数度。


「フムム~ム~!」

「よし、レベルアップだ!」


 どうやら精霊門の4大精霊たちは、25レベルで進化であるらしい。


「えーっと、進化の前にスキルを覚えたか」


 オルトは10レベルで収穫増加を覚えたが、ルフレは25レベルで新スキルを習得していた。ここは精霊でも微妙に違うんだな。


「水中行軍スキル? これは凄いな」


 パーティメンバーの水中行動力を上昇させるスキルだった。呼吸が長くなり、泳ぎも上手くなるってことだろう。水中での探索が非常に楽になるスキルだ。


「しかも進化するわけだろ? ワクワクしてきた! ルフレの進化先は何があるかな~?」


 ステータスウィンドウから、ルフレが進化できる種族を確認してみる。オルトの場合は4種類だったが、ルフレはどうだ?


「えーっと、ウンディーネクッカー、セルキー、ウンディーネフロイラインか」


 やはり3つだった。ルフレからはまだ従魔の心をゲットできていないので、好感度マックスで選択できる進化先がまだ解放されていないのだ。


 おそらく正当進化と思われるクッカーは、醸造、料理スキルが上級になり、水魔術が特化になるらしかった。また杖術・特化が追加され、覚えるスキルを選択できた。選択肢には料理特化らしいスキルが並んでいる。


 セルキーは確かアザラシの皮を被った海の妖精だっけ? 萌え方面に寄せれば着ぐるみ系かな? リアルに寄せたら、結構キモイかもしれない。能力的には水中探査特化かな? 釣り、水魔術、水中行動が上級となり、水中探査、杖術を覚えるらしい。しかも戦闘行動も解禁になるので、一気にパーティ戦闘力が上昇するのが魅力だな。


 ただ、本命はユニーク進化先である次のウンディーネフロイラインだろう。フロイラインってどんな意味だっけ? 調べてみるか。


「ふむ……ドイツ語でお嬢さんか」


 しかもウンディーネっていう言葉もドイツ読みだったという記憶がある。それに合わせたのだろうか? ぶっちゃけ、ゲームの中は語感や知名度が優先なので、言語なんかメチャクチャだけどな。


「やはりユニーク進化先は通常進化の中間みたいなスキルか」


 水中行動、料理が上級に、水魔術が特化に進化し、治療者というスキルを覚える。そして残った枠を自分で選ぶことができた。


 オルトの進化先に選んだノームリーダーも、ノームファーマー、ノッカーの通常進化先の良いとこ取りであったが、ウンディーネフロイラインも、クッカー、セルキーの良いとこ取りだな。それに、治療者がかなり凄い。


治療者:スキル使用中、魔術、アイテムでのHP回復量にボーナス。パーティメンバーが多い程、精神力上昇。スキル使用中、隠れ身効果あり。


 回復役のルフレには相当有用なスキルである。隠れ身のスキルがあるおかげで、敵からの被弾も減る。オルトの守護者も相当強力なスキルだし、この治療者もきっと強いだろう。俺はユニーク進化を選ぶことにした。


「ルフレ、行くぞ!」

「フム!」

「進化、開始だ!」


名前:ルフレ 種族:ウンディーネフロイライン 基礎Lv25

契約者:ユート

HP:70/70 MP:88/88

腕力10 体力11 敏捷17

器用21 知力20 精神19

スキル:醸造、水中行動・上級、調合、釣り、発酵、水魔術・特化、料理・上級、水中行軍(25)、治療者、醸造促進

装備:水精霊の杖、水精霊の羽衣、水精霊の髪飾り


「フムムー!」


 白い光を放ち、ルフレが進化を開始する。


 身長は伸びたな。140センチちょいくらい? 着ている羽衣も、薄水色地に藍色の模様なのは同じだが、より複雑な模様に変化した。あと、所々にヒラヒラが増えたかな? より女性的になったと言えるかもしれない。


「おー、可愛くなったじゃないか」

「フム~!」


 俺が褒めると、ルフレが満面の笑みを浮かべてピョンピョン飛び上がって喜ぶ。少しお姉さんになったのに、天真爛漫は変わらないみたいだね。


出遅れテイマー、マイクロマガジン社版に関するお知らせです。

イラストを担当してくださる方が決定いたしました!

なんと私も大好きなNardackナルダクさんです。今からワクワクしてしまいますね!


ただ、転生したら剣でしたの執筆もあり、出遅れテイマーをお届けできるは来年の春夏ごろになりそうです。

お待たせして申し訳ありません。

続報が入りましたら、また後書き等でご報告いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ