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225話 地形ダメージ


 火霊の街を一通り見回った俺たちは、そのまま火霊の試練へと向かっていた。


「みんな、初めてのダンジョンだ。気合を入れて、でも慎重に行くぞ!」

「ムム!」


 足を踏み入れた火霊の試練は、なかなか面倒くさそうな造りをしていた。基本は、天井まで3メートルほどの洞窟型ダンジョンだ。だが、当然それだけではない。


 火属性のダンジョンらしく、入り口から続く通路も、たどり着いた最初の部屋も、全ての壁が炎で包まれていた。しかも床の一部が赤熱して光っている。


「これって、床も壁も、触ったら絶対にダメージあるよな……?」

「ム?」

「とりあえず床からチェックだ」


 まずは足を乗せてみる。


「よし、そーっと……熱っ!」


 痛くはないんだけど、赤い床に乗った瞬間、足裏にひり付くような感覚があった。ストーブに指を近づけ過ぎた瞬間の、指先の感覚がなくなるようなあの状態である。


「ダメージは1か。次はもう少し長く行ってみよう。あと、次は手で触ってみるか」


 屈んで、赤い床にタッチする。今度は慌てず、そのまま5秒ほど手の平を床に押し付け続けた。軽く煙なども上がって、なかなか演出も凝っているな。


 赤い床から手を離すと、手の平が赤く燃えたように光っている。これが熱によるダメージエフェクトなんだろう。ただ、すぐに消えたので、燃焼状態になったわけではないらしい。


「ダメージは5ね。つまり1秒1点か」


 手の平でも、靴を履いている足裏でも、ダメージは同じだ。軽減効果があるような装備じゃないと無意味って事らしい。


「まあ、燃焼状態にならないのは助かる」


 毎度毎度燃焼を直していたら、かなり面倒臭いだろう。それに、水をかければ治るとは言え、インベントリには井戸水がわずかと、浄化水しか入っていない。井戸水はタダだが、浄化水を使うのはもったいなかった。


「フム~」

「うん? なんだ?」


 どうもルフレは俺の手の平が心配であるらしい。眉をしかめて、自分の手で包んでさすってくれている。


「フムム!」

「ありがとな。でも大丈夫だから」

「フム!」


 ルフレが「メッ!」とでも言うように、左手を腰に当て、右の人差し指をピッと俺に突きつけて頬を膨らませている。軽く腰を曲げて前傾姿勢なのもポイントだよね。うん可愛い、それしかない。


 だが一応怒っているわけだし、ここは謝っておこう。


「ごめんごめん。そう怒るなって」

「フム」

「でも実験をしてるんだから、仕方ないだろ? まだ炎の壁も試さなきゃいけないし」

「フムム!」

「怒らないでくれってば。むしろ、ヤバそうだったらルフレの水が頼りなんだ。頼むぞ」

「フム~」


 仕方ないなぁって感じで首を横に振るルフレ。実験継続のお許しが出たらしい。では、早速実験してみよう。


「うーん、ちょっと怖いが、試しておかないと」


 俺は恐る恐る、燃え盛る炎の壁に手を伸ばす。リアルだから、かなり迫力があるんだよね。


「キキュ!」

「モグモ!」

「クックマー!」


 リックたちが俺の後ろで応援してくれている。ファウは勇壮な曲をジャカジャカとかき鳴らし、後押しをしてくれているようだ。


「えーい! 男は度胸! どりゃあぁぁぁ熱っ! さっきよりも熱い! げっ! しかも火が消えない!」


 炎の壁の方は触っただけで燃焼状態になってしまうらしい。手が火に包まれている光景は、なかなか恐ろしいものがある。


「フム~!」

「うわっ!」


 慌てていたら、ルフレが即座に水をかけて火を消してくれた。いやー、持つべきものは、可愛くて優秀な従魔だぜ。


「た、助かったよルフレ」

「フム!」


 こりゃあ、かなり難度の高いダンジョンだな。水を常備しておく必要がありそうだ。毎回ルフレに頼っていたら、すぐにMP切れになってしまうだろう。


「ダメージは5……。タッチ1秒で3点、あとは燃焼ダメージが少し入った形かな?」


 モンスターとの戦闘以上に、地形ダメージを気にしないといけなかった。というか、戦闘中に地形ダメージ、燃焼ダメージを食らう事態になったらかなりピンチかもしれん。となると、あの薬にがぜん期待してしまうな。


「次は暑気耐性薬を使ってみよう」


 この暑気というのがどの程度の熱量を指すのかで、効果が変わって来る。単に熱い場所で涼しく感じるだけなのか、熱系のダメージを軽減できる程なのか。


 現在、周囲の暑さはそこまでではない。まあ、周りが火で囲まれているわけだし、多少気温は高いと思うが、無視できる程度だ。


 そう考えると、地形ダメージを防ぐためのアイテムだと思うんだよな。火霊の街で売っていたことからみても、攻略を補助するアイテムだと思うし。


 俺は暑気耐性薬を一気に飲み干してみる。味はサイダーみたいだった。爽やかで、暑い日に飲んだらおいしそうだ。暑気耐性というバフが付いたのが分かるな。


「ていうか、この味どうやって再現してるんだ? この薬を作るための素材に秘密があるのか?」


 むしろそっちが気になってしまった。だって、サイダーだぞ? もし再現できたら、色々な味のフルーツサイダーなんかも作れるかもしれない。


「おっと、効果が切れる前に実験だ。まずは赤い床だな」

「ムー」


 俺が床に足を乗せるのをオルト達が固唾を飲んで見守る。そこまで真剣になることじゃないんだけどな。むしろ全員にガン見されて、ちょっと緊張してきちゃったぞ。


「ふむ……平気だな」


 10秒ほど足を乗せていたが、ダメージを負うことはなかった。暑気耐性のおかげなのは間違いないだろう。次に炎の壁に手を突っ込む。


「ダメージは軽減されても、燃焼状態にはなるのか! み、水!」


 インベントリから取り出した井戸水をかけると、手を覆っていた火が消える。ふー、やっぱ火はまだ慣れないな。


「受けるダメージは減ってるけど……」


 どうやら火の壁に触れたダメージが1点に減り、燃焼によるダメージは軽減なしという感じらしい。


「いいね! これがあれば攻略がかなり楽になるぞ。この薬を飲める人ー!」

「……」


 うちの子たちは誰も反応しない。モンスは飲めないか。残念だ。となると、HPの管理をしっかりしないとな。今まで以上に緊張感のあるダンジョン攻略になりそうだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 1秒1点だと1分でHP全損レベルになるような気が。 回復薬を使いまくれば探索は行けそうやけど戦闘は無理ゲー。
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