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221話 召喚!


「サクラ、やれ!」

「――!」

「下がれルフレ!」

「フム!」

「いいぞファウ!」

「ラランラ~♪」


 俺の華麗な指揮により、皆が役割分担をしながら出現するモンスターを打ち倒していく。


「よし! そこだ!」

「クマ!」

「やった! 凄いぞ!」

「モグモー!」

「がんばれー!」

「キキュー!」


 うん……。華麗な指揮とか嘘です。むしろ俺必要ないよね? 俺が何も言わなくても、うちの子たちはきっちり自分の役割を分かっているし。ちゃんと役割を分担して戦っている。その戦闘っぷりといったら、俺の魔術が全く必要ない程だ。


 指揮も要らず、魔術も必要ない。回復もルフレで間に合うし、遠距離攻撃はサクラとファウで事足りる。フィールドを歩いている間の警戒もリック達でどうにかなっていた。本格的にやることが無いのだ。


「いやいや、そうじゃない。俺が死んだら即全滅扱いなわけだし、大将は後ろでデーンと構えているものだよな」


 それに、暇なおかげでボス戦のドロップなどをじっくり確認できたしね。実は、1つだけおかしなことがあった。


「何度見ても、ロイヤルゼリーが採れてるな」


 このボスのドロップにはハチミツはあっても、ロイヤルゼリーはなかったはずなんだが……。考えられるのは、養蜂・上級を持っているクママがいるからか?


 普通に考えたら、養蜂・上級を持っているプレイヤーはかなり高レベルだろう。今まで、このスキルを持ったプレイヤーがこのボスと戦闘したことが無い可能性はゼロではなかった。それに、1つしか採れていないってことは、ドロップ率自体も低いんだろうしな。養蜂・上級を所持していても、毎回は採れないのかもしれない。


 でも、これは非常にありがたかった。ロイヤルゼリーはクママでも大量には生産できないからね。アシハナに養蜂箱を発注しているが、出来上がりにはもう数日かかる予定だ。1個だけとは言え、ここで入手できたおかげでクママの食事分は確保できた。


 その間にも、モンスターは出現する端からうちの子たちによって屠られていく。まだこの辺は出現する敵の数も少ないし、まじで俺の出番がないな。


 ちょっとだけ自分の存在意義に疑問を持ちつつ、俺たちは順調に角の樹海を進んでいった。道中で色々と採取は出来ているが、目新しい素材はない。この辺の素材はすでに街でも買えるし仕方ないが。


「お、見えたな。あれが松明か」

「フムー」

「ヤー」


 木々の合間から、燃え盛る巨大な松明が見えていた。外見は本当に普通の松明なんだよね。ただ森に生えている木と同じくらいデカイだけで。でも、これが火霊門の入り口で間違いないだろう。


「ちょっと周辺を探索してみるか」

「キュー!」

「モグ!」


 俺はうちの子たちと一緒に大松明の周りを調べてみたんだが、目新しい発見はなにもなかった。まあ、期待はしてなかったけどさ。


「とりあえず松明の場所は確認できたし、南の町へ向かうぞー」

「――♪」

「クマ!」


 角の樹海のフィールドボスへの対策もバッチリだ。サクッと倒して、南の町へ転移できるようにしてしまおう。



 15分後。


「うわー!」


 俺はボスの迫力満点の突進を間一髪でかわしながら、情けない悲鳴を上げていた。角の樹海のフィールドボスへの対策はバッチリだと言っていたな? あれは嘘だ!


「なんで今回に限って!」


 南の樹海のボスは、カブトンボという、カブトムシにトンボの羽が生えた昆虫型モンスターである。だが、30分の1程度の確率で、クワトンボという特殊な個体が出現するらしいとは聞いていたんだが……。


「まさか出くわすことになるとは!」


 クワトンボはパターンが完全に解明されているカブトンボとは違い、詳しい情報が無い。過去に確認されたドロップが全てカブトンボと同じなので、周回してパターンを探ろうとするプレイヤーもいないせいだ。


 なのでアリッサさんには、クワトンボに当たったら諦めて全力で戦えとしか言われていなかった。掲示板でも同様だ。


 いや、いくつか攻撃パターンの情報は仕入れたよ? でも、その攻撃の前兆や、対処法までは分からない。


「皆! こうなったら仕方ない! 全力で戦うぞ!」

「――!」


 そして、第2エリアのフィールドボス戦が始まったんだが……。


「くそ! また外した!」

「――!」

「ギュー!」

「リック、大丈夫か!」

「クマーッ!」

「ああ! クママも!」


 俺たちは大苦戦を強いられていた。クワトンボが想定以上に速いせいだ。


 防御力が高い甲虫タイプの例にもれず、物理攻撃が効きづらかった。なので、クママたちは壁に専念してもらい、俺やサクラの魔術をメインで攻めようと考えたんだが……。クワトンボは常に細かく移動を繰り返しており、魔術が中々当たらなかった。


 頼みの綱であるサクラの樹魔術・上級も、そこまで劇的な効果は上げられていない。どうも、クワトンボは樹魔術に対して高い耐性を持っているらしかった。


 理想は、前衛で突進をいなして動きを止め、サクラの樹魔術・上級で拘束。俺やドリモの攻撃を叩き込むという流れだ。


 しかし、それが全くうまくいかない。そもそも、前衛のクママやドリモはアタッカー寄りのステータスだ。タンクのように、クワトンボの攻撃を受け止めようとしても失敗することが多かった。


 そして、前衛を突破したクワトンボの攻撃を慌てて避けようとして、俺やサクラは詠唱を中断せざるを得なくなってしまう。上手く発動できても、当たらない。


 それでも死に戻らずに何とか戦いを続けていられるのは、俺たちのレベルが高いからだった。俺たちはこのフィールドの適正レベルを大幅に上回っているからね。ステータスの高さのおかげで何とか対抗できていたのだ。


「でも、これってヤバいんじゃないか……?」


 今はまだギリギリ戦えているが、もし誰かが死に戻った瞬間、均衡が崩れてしまうだろう。特に、クママかドリモが死んだらまずい。


「オルトを召喚しよう」


 実は何度か召喚しようと思ったんだが、クワトンボがガンガン攻めてくるせいで、なかなか入れ替えのタイミングがつかめなかった。それに、誰と入れ替えたらいいかも迷うし。


 ただ、今はリック一択だ。大ダメージをもらっている上、ポーション、薬草、傷薬どれもクーリングタイムが終わっていない。回復魔術を使って回復するよりも、オルトと入れ替えた方がパーティも安定するだろう。


「よし、行くぞ! 召喚、オルト! 送還、リック!」


 俺がそう叫んだ直後、リックの姿が一瞬光って消え去る。そして、その場には新たにオルトの姿があった。召喚成功だ!


「オルト! ボスの攻撃を受け止めろ! できるか?」

「ム!」


 オルトは俺に向かってサッと敬礼をすると、そのまま最前線に飛び出していった。召喚による戸惑いは全くないらしい。


「ムムムー!」


 直後、クワトンボの突進を、クワで受け止める。さすが受け特化型! あの仔牛くらいある巨大昆虫の突進を、正面から完璧に止めたぞ。やだ、めっちゃ男らしくてカッコイイ!


「凄いぞオルト! 皆! こっから反撃だ!」

「ムムー!」


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