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22話 新称号ゲットだぜ

 俺は発見した花屋を見て回っていた。


 店には10種類近い花と、それを使った小物などが置いてある。


「これは押し花か? しかも栞に加工してある」


名称:押し花の栞・コスモス

レア度:1 品質:★4

効果:なし。小物。


 ポプリと違って香りもないし、本当に観賞用だな。一応栞になってるけど、本なんかないから使い道ないし。


「いや、本当にないか?」


 他のゲームだと、図書館に行って本を読まないとレシピやスキルが手に入らないという設定がある場合もあるが、このゲームに図書館はない――と思ってたんだが。この栞を見たらもしかしてと思ってしまうな。


 始まりの町に無いだけで、先に進むとあるんだろうか? でも言語系のスキルはないんだよな。俺が取得条件を満たしてないだけなんだろうか。


「とりあえずポプリと栞は1つずつ買っておこうかな」


 合わせて300Gだし、安い物だ。一応、使い道が無いか店の人に聞いておこう。


「これって、何かに使えます?」

「おいおい、ずいぶんな物言いじゃねーか!」

「あ、すいません。その、効果がなしってなってるんで」


 おっと、NPCのおじさんに睨まれてしまった。ちょっと不躾だったか。AIに好感度があるのか分からないけど、嫌われてるよりは好かれている方が良いはずだ。俺は慌てて、言い訳をした。


 俺の言葉に納得したのか、おじさんは頷く。


「ああ、お前さん異界の冒険者か? そういえば異界の冒険者は全員が鑑定スキルを持ってるんだったな」

「そうなんですよ」

「効果と言われてもな。見て心が和むとか、人に贈ると喜ばれるとか、そんな感じだな」


 本当に普通の花や小物扱いらしい。


「じゃあ、逆に花を買ったりもしてくれるんですか?」

「ああ? お前さん、花を育ててるのか?」

「今はチューリップを少しだけですけど」

「この町じゃチューリップは人気がねーんだよな。一応、1本10Gで買い取ってるが」


 安い。メチャクチャ安いぞ。これだったら料理に使える可能性があるバジルルを栽培する方がいい。


「なあ、花を育ててるんなら、これを栽培できないか?」

「これは何です?」

「ワイルドストロベリーの種だ」

「え? イチゴ?」

「イチゴの野生種だな。味は全然良くないが、香りがいいからお茶に入れたりするんだ。うちはハーブは取り扱ってないが、これだけは俺が好きで仕入れてたんだ。だが採取してた婆さんが病気で引退しちまってな。栽培してくれたら20Gで買うぜ」

「ご自分では栽培しないんですか? 難しいとか?」

「いや、農耕持ちなら簡単だぞ。ただ、野菜よりも優先する奴がいないってだけで。おれが育てないのは単純にスキルが無いからだ。で、どうだい?」


納品クエスト

内容:ワイルドストロベリーを栽培し、その実を10個納品する

報酬:200G、ミントの種

期限:なし


 安い。言葉通り1つ20Gでの納品だ。だが、俺は受けることにした。そもそもギルドを通さないクエストなんて初めて見たし。住人からのお願いなら受けておいた方が良さそうな気もする。


 それに報酬のミントの種も気になった。多分効果はないのだろうが、新たなハーブだしね。バジルとミントがあったら、色々幅も広がりそうだ。


「受けます」

「そうか! よろしく頼むぜ!」


 こうして俺は、ワイルドストロベリーの種を5つ手に入れたのだった。



「うーん、無いな」


 花屋で依頼を受けた後、ゴミ拾いを完了させるために俺は歩き回っていた。森で隠密の訓練をするエルフさんや、釣りをしているドワーフさんらの好奇の視線に耐えつつゴミを探し回ったのだ。


 だが、100個にはどうしても届かなかった。やはり水路も探さないとダメみたいだ。


「仕方ない、また水に濡れますか」


 問題は水路でも見つけられなかった時だろう。


「そしたら、湖だからな~」


 湖潜って探せとか言われたら最悪だ。少なくとも、今の装備とスキルでは無理である。


「水路で見つかってくれよ~」


 そう願いつつ水路でのゴミ拾いを始める。1つ、2つと順調にゴミを拾う。


「あれ? ここおかしいな」


 だが、今度は地図作成に問題が発生だ。


「やっぱ、この橋は地図にないぞ」


 目の前にあるのは、水路にかかるアーチ状の大きな石橋なのだが、それが地図には記されていなかった。


 ステータスのマップ機能から確認できる、自動作成マップにはこの橋が描かれている。ただ、依頼時にもらったイベント地図には影も形もなかった。


「うーん、何かあるのか?」


 橋を観察してみるが、特に他の橋と違うところはない。普通の橋だ。次は橋の下に潜ってみた。そして気づく。


「これは……扉だ!」


 橋の袂に、鉄の扉がヒッソリと取り付けられていた。暗がりなうえ、石材と同じネズミ色をしているため、近づかなければ絶対に気づかないだろう。


「開かないか……」


 鍵がかけられているのか、錆びついているのか、どうやっても扉は開かない。


「鍵が必要か?」


 きっと、イベントか何かで開くのだろう。残念だが、諦めるしかない。


「うーん、こんな情報あったかな?」


 ゲーム開始前に集めた序盤情報の中に、こんな情報なかったと思うけど……。まあ、全部のイベントを覚えて居る訳じゃないし、大したイベントじゃなかったんだろうな。


「いいや、とりあえずこの場所のことは覚えとこう」


 俺は扉を諦めてゴミ拾いに戻ることにした。開かない扉よりも、目先のクエストだ。そろそろ日が傾いてきているし。


「お、ゴミ発見」


 そして、100個目のゴミを拾い、クエスト達成条件を達成する。時間は結構ギリギリだ。あと10分もせずに、日は完全に落ちるだろう。


「あとは中央広場に行って、地図を埋めるだけだな」


 そして、東区から中央広場に向かっている途中だった。


 ピッポーン


 本日2回目のアナウンスだった。


『おめでとうございます』


 おお? なんか祝福された。良い知らせか?


『初ログイン時から、一切の殺生を行わなかったユートさんに、称号「不殺」が授与されます』


 まじで? 称号だって?


「おおおおぉぉ、やったな俺! 新称号ゲットだぜ! しかし、不殺と書いてコロサズね」


 頬に十字傷のある侍みたいな称号だな。しかし、どういう条件で称号を獲得できたんだ? アナウンスの言葉から考えると、ログインしてから何も殺してないっていうことが条件みたいだが……。どうしてこのタイミングなんだ? 時刻は18:16で、トリガーになりそうな時刻でもないし。


 いや待てよ、ゲーム内総ログイン時間が96:02になってる。アナウンスがあった時は96:00だったんじゃないか?


 初ログインから数えて、ログインしてるゲーム内時間の総計が96時間内で、モンスターや動物を殺さないことが、『不殺』の獲得条件なのだろうかね。好きで殺しをしなかった訳じゃないんだけどな。思わぬ幸運だった。よし、詳しい情報を見てみよう!


称号:不殺

効果:賞金3000G獲得。ボーナスポイント4点獲得。特殊スキル:手加減を獲得。


手加減:次に繰り出す攻撃、スキル、魔術、アイテムで、敵のHPを0にしない。


 白銀の先駆者よりも良いな。ボーナスポイントも2多いし、スキルもかなり使える。特にこの特殊スキルは、テイマーにとってはかなり有用だ。テイムするときにモンスターのHPが減っている方が成功率が上がるし。今の俺には全然使いこなせないが。


「しかもこの情報、売れないか?」


 もうアリッサさんは知ってる可能性が高いけど、一応持ち込んでみるかな。


 もしアリッサさんが知ってないのなら暫くこの称号を独占できるかもしれないけど、それよりもお金の方が重要だ。どうせそのうち、俺以外の誰かが発見するだろうし。なら畑や原木を買うための資金を増やした方がマシである。


「さっそく行ってみようかな」



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