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218話 ネトオク終了

 ネトオクが終了した。そもそも、アリッサさんの露店から戻って来た時には、終了の10分前だったのだが。


 結局俺が入手できたのは効果も何もない安物チックな急須と、それとセット売りになっていた、特に絵柄も何もない白い湯呑の2つだけだったな。湯呑は少し大きめのゴツイタイプだが、番茶を飲むには適していそうだ。


 勝負はラスト数分だと分かっていたが、ここまでの激闘になるとは思わなかった。終了3分前から入札を開始し、顔の見えない競り相手と交互に入札すること6回。元々4万だった急須に俺が8万の値を付けたところで、相手が入札してこなくなった。


 残り30秒。だが、俺はこの時点で安心していない。相手がラストギリギリに入札しようとしていると判断したからだ。なので、残り5秒の時点でさらに1万上積みして9万Gで入札してやったのだった。


 結果として俺の金額が入札金額と承認され、俺のインベントリに急須と湯呑が送られてくる。急須は横手と言われる、取っ手が横についているタイプの急須であった。9万もしたが、どう見ても安物だ。だが、まあいいさ。


「ポコー!」


 お供えしたらチャガマも喜んでいるし。今日はもうハーブティーはお供えできなかったけど、急須と湯呑はお供えできた。というかお供え扱いじゃなくて、プレゼント的な意味かも知れんが。


「なあ、明日からは番茶はその急須と湯呑で淹れてくれるんだろ?」

「ポンポコ!」


 どうやら問題ないらしい。今はちゃっちい薄汚れた湯呑茶碗だからね。これでもっと美味しく飲めるというものである。


 この後は、南の森の先にある角の樹海に行くつもりだ。明日は火の日。火霊門が開く日だからな。もうすでに火霊門は解放済みなので初回解放ボーナスは貰えないが、早めに行ってダンジョンに潜りたい。その方が効率的だしね。


 土霊門と同じ様に、日付変更と同時に火結晶を捧げたいところであった。そのためには、今日の内に角の樹海にある、大松明にたどり着いていないといけない。


 すでに早耳猫や掲示板で情報は色々と仕入れてあるので、準備を整え次第すぐに出発するつもりだ。準備というのは、南の森のフィールドボス戦で必要なアイテムを買わないといけないのだ。


 ウンディーネのルフレをお供に俺が向かったのは、ソーヤ君の錬金術ショップである。


「ソーヤ君、どもー」

「フム~」

「あ、ユートさん。お花見の時はありがとうございました」

「いやー、こっちこそ。ボス戦を手伝ってもらってありがとうね。オークションはなにかいい物落とせた?」

「素材は幾つか。レシピも開放されましたし、結構頑張りましたよ。ユートさんはどうです?」

「俺も結構頑張ったよ? 称号を手に入れたしね」

「宵越しの金は持たないですか? さすがですね。何を買ったんですか?」


 俺はオークションで落としたものを教え、さらにチャガマを入手した経緯を語った。ソーヤ君も驚いているな。まあ、今それなりに旬な妖怪の情報だから仕方ないが。


「さすがですねー。まさかそんなコンボが……」

「フム!」


 なぜかルフレがドヤ顔だ。俺が褒められてるんだからな?


「あ、これアリッサさんに情報売ったから、しばらくは内緒にしておいてね」

「分かりました。ねえ、そのタヌキさんには、畑に行けば会えますかね?」

「放し飼いって言うか、俺の畑で好きに遊んでるから、来てくれれば会えると思うよ?」

「じゃあ、出来るだけ早く遊びに行きます!」


 フレンドのソーヤ君なら畑に入れるから好きに遊びに来てほしい。うちの子たちも喜ぶだろうしね。


 実際、アシハナやアメリア等、他のプレイヤーはちょくちょく遊びに来ているらしい。らしいというのは、あまり鉢合わせしないからだ。


 別に俺のことを避けているわけじゃないと思う。多分。さ、避けられてないよね?


 まあ、俺はゲーム中で深夜になるとログアウトして、食事をとったりしている。そして、他のプレイヤーは大抵、暇になる夜に遊びに来ているらしかった。他のプレイヤーの来訪はログに残るので、それを見れば分かるのだ。


 多分、昼はうちの子たちは畑の世話をしているので、遠慮しているのだろう。昼間は俺と一緒に出掛けちゃってることもあるしね。


「実は角の樹海の松明に行きたいんだけど、まだ南の森のフィールドボスを倒してないんだよね」

「あ。もしかして、だからうちに来てくれました?」

「ソーヤ君のところなら例のアイテムが手に入るかと思ってさ。どうかな?」

「うーん、すいません。うち、爆弾は取り扱ってないんですよね。いえ、少しはありますけど、南のフィールドボス戦で使えるタイプがないんです」

「あー、そっか」

「フム~……」


 実は南の森のフィールドボスは、蜂巣型という少々特殊なボスなのだが、範囲攻撃に弱く、火炎属性の爆弾を利用して圧勝する戦法が確立されていた。


 金をかければ生産職でもあっさり突破が可能なため、初期の頃は南の森を突破するプレイヤーが多かったらしい。


「水系統の爆弾はあるんですけど……」

「他に爆弾買えそうな心当たりない?」

「そうですね……。ちょっと待っててください」


 さすがソーヤ君。アシハナも紹介してもらったし、前はフレンドが少ないって言う話をしてたけど実は顔が広いよね。いや、あれから交遊の輪が広がったってことなんだろう。俺だってフレンドが増えたしね。


 誰かに連絡をしてくれているらしい。そのまま十数秒ほど会話をしている。どうやら話を付けてくれたようだ。


「えーっとですね、今すぐにここに行けますか? もうすぐログアウトしなきゃいけないみたいなんですけど、15分以内に来れるんなら、爆弾を売ってくれるそうです」

「ここ?」


 ソーヤ君が始まりの町のマップを指差して、目指す場所を教えてくれるんだが、それは何の変哲もない路地であった。


「ここに何があるんだ?」

「いえ、何もありません」

「?」

「フム?」

「そのですね。何もないんですが、僕の知人がここで待っててくれるはずです。その人は結構上位の錬金プレイヤーなんですが、人見知りな上、少々個性的でして、あまり目立つ場所に行きたくないって言うんですよ」

「だからこの裏路地か……」

「はい。でも、爆弾づくりの腕は確かですよ」


 裏路地で取引って、なんかヤバいブツの受け渡しみたいだな……。爆弾だから、危険物に変わりはないんだけどさ。


「むしろその道ではトップと言っていいかと思います」

「へー。何て言う人なんだ?」

「リキューさんて言うんですけど、知りません? 爆弾魔とかボマーって呼ばれることも多いんですけど」


 知らない。というか、俺はそれ系の情報はほとんど仕入れていないからね。でも、異名を聞いただけでまともなプレイヤーではなさそうだと理解できた。


「人見知りが凄まじいんで、普段は他のプレイヤーに絶対に会わないんですけど、噂の白銀さんなら1度会ってみたいって」

「いいの?」

「はい。ただかなり変わってるんで、気を付けてください」

「え? ど、どんな風に変わってるの?」

「フ、フム~」


 ソーヤ君の言葉を聞いたルフレもちょっと怯えた表情をしている。


「……初対面だと色々戸惑うと思いますけど、悪い人じゃないんで……と、とにかく行ってみてください! 時間がギリギリです!」


 そうだった、時間がないんだった。俺たちは不安な気持ちを抱きつつも、とりあえず指定された場所に急ぐことにした。


「リキューさんによろしく伝えてください!」

「わかった」

「フム!」


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