21話 花屋発見
ログインした俺は、すでに慣れた感のある調合を行う。調合が1、料理が2つレベルアップした。俺ってばテイマーだったよな? いつの間にか調合のレベルが一番高いな……。
雑草だけは収穫するだけで、インベントリに仕舞うしかないけど。本当に使い道あるよな?
おっと、出かける前に乾燥させておいた草をチェックしておこう。
――おや?
「まじか。ゴミ?」
なんと道具箱に引っ掛けてあった毒草、麻痺草、出血草が、ゴミというアイテムに変化していた。勿論、ゴミ拾いのクエストにも使えない正真正銘のゴミだ。見た目は黒ずんだ草だが、こうなるともうどうにもならない。捨てるしかなかった。
「……乾燥実験は中止にしとくか。大人しく掲示板見よう」
気を取り直して、作ったものをアリッサさんの店に売りに行こう。最初はテンションサゲサゲだったが、歩いている内に気分も晴れてきた。まあ、実験してればこういう事もあるよな。
俺はアリッサさんの店で薬類を売りつつ、オルト用の蜜団子なども買う。そろそろなくなりそうだったからな。1つ50Gだった。
それでも4450Gも手に入ったが。やばい、手持ちが15000Gを超えた! 今日中に絶対に原木と畑を買おう!
まあ、原木を買うためにはギルドランクを上げなきゃいけないから、今日もマッピングだけどね。
「おお、近くで見ると、すごい迫力だな」
東区の象徴である巨大な木を見上げ、思わずため息をつく。
東区は他の区画と一味も二味も違う。なにせ、唯一他とは全く違う構造をしているし、景色にしても変わっている。
地図を見て地形の確認をしておこう。まず特徴的なのが、東区の北部を占める大きな湖だ。水練ギルドがあり、釣りや操船の練習ができるらしい。
そして、東区のほぼ中央に鎮座するのが、公称256メートルの巨大な木、『水臨大樹』だ。湖や水路、外堀の水は、この木が生み出しているという設定らしい。町のどこからでも見ることができる大木だが、近寄ってみるとその姿に圧倒されそうになる。
あと、湖の東岸。外壁のそばには小さいながらも森があり、森林ギルドが管理している。普通に入ることはできるらしいが、特に何かが採集できるという事もなく、森林ギルドの訓練以外ではあまり利用する人はいないらしい。
「まずは路上のゴミ拾い&マッピングだな」
それから地道に東区を歩き回り、黙々とゴミ拾いをしていると、ピッポーンというアナウンスチャイムが聞こえた。
『運営からのお知らせです』
「おお、何だろう」
『サービス開始から、ゲーム内時間で4日間が経過しました。集計データを公開させていただきます』
そう言えば、もう12:00だ。ゲーム内時間で4日。リアルでちょうど1日が経過したことになる。
「集計データね」
添付されていたデータを開いてみる。
「へぇ、すごいな。スキル個別の取得人数とかまで載ってるぞ」
現在の最高基礎レベルは18か。絶対βテスターなうえに廃人だろうな。その後、自分に関係ありそうなデータを確認してみた。
まずは称号系のデータだ。全体で獲得者は5名。少ないな。最多取得者は1つなので、俺も含まれている。称号に関しては色々と複雑な気分だが、こうやって特別な感じを出されると、やっぱりちょっと嬉しい。
次はテイマーの人数だ。全体で78人。現在のプレイヤー数43076人に対して、かなり少ない。最も多い、ソルジャーは803人なので、ほぼ10分の1しかいない計算だ。まあ、不人気職なので仕方ないとは思うが、少し寂しいね。
もう一つ目についたのは、テイマーの数がサモナーに大きく負けていることだ。サモナーを選んだプレイヤーは541人。どうもサモナーを主人公にした作品の人気によって、サモナープレイヤーが増えているらしい。うーん、テイマーの6倍か。何故かすごく悔しいな。
入手従魔の最大数は7体となっている。羨ましい。俺はまだオルトだけだし。
テイマーの従魔は、従魔術と使役のレベルが上がると、支配できる数が増える。Lv1で1匹ずつ、あとはそれぞれのスキルが5の倍数の時に増えていく。俺は従魔術がLv5、使役がLv3なので、最大3体まではテイムできるはずだ。まあ、戦闘力がない俺には、かなりの難題だ。できるだけ早く、戦闘力を増やしたいとは思ってるけどね。
それ以外で気になるのは、畑関係かな? 畑の所持数の最も多いプレイヤーは、12面だ。他の町でも畑はあるし、ファーマー系のトップならそのくらいいくのだろう。
あとは特に目を引くデータはないな。所持金とか、むしろ悲しくなるし。今後は4日に1度、集計データが公開されるのか。楽しみにしてよう。
もう一つの情報として、ゲーム内で10日後。リアルでは3日後から何かイベントがあるらしい。内容は明かされていないが、場所は始まりの町だそうだ。
どんな内容なんだろうか。まあ、今のままだとまともに参加することさえ危ういかもしれんからな。頑張ってレベルを上げよう。
「じゃあ、マッピング&ゴミ拾いに戻るか」
残りは半分くらいだ。
そのままマッピングを続けると、湖があるおかげで他の地区よりも早く終わった。何せ、陸地が半分くらいしかないし。マッピングの依頼は、中央広場を埋めれば達成できるだろう。だが、問題はゴミ拾いだ。
「あと5つ足りないな」
どこを探しても、あと5つが見つからない。ただ、その代わりに面白い店を見つけたけどね。
「あの、ここって昨日もありました?」
「そりゃあ勿論だ! 創業から20年。一日も休んだことはねーよ!」
それは中央広場から東区へと延びる大通りから、一歩入った路地にあった。この通りは何度か通っているし、絶対にこんな店なかったはずなんだが。
それは色とりどりの花を売る花屋だった。一本から買う事が可能で、ブーケや花束なども売っている。
俺は興味津々で店の中を覗いてみた。
「おおー凄いな」
花屋には切り花だけではなく、鉢植えやドライフラワー、さらにはポプリや押し花などの加工品まで置いてあった。とにかく花全般を売っているらしい。
店先の花をいくつか鑑定してみる。
名称:コスモス
レア度:1 品質:★7
効果:なし。観賞用。
これ以外にもサルビアやカーネーションが売られているが、名前の表記以外はすべて同じだった。
だが、分かったぞ。多分、この店を発見できたのは植物知識のおかげだ。このスキルが無ければ雑草を売っているだけの店だからな、入る事さえ出来ないんだろう。まさかこんな店があるなんて。
次はポプリを鑑定してみる。
名称:ポプリ(ラーベンダ)
レア度:1 品質:★5
効果:なし。小物。
小物っていうカテゴリーがあるのか。軽く嗅いでみると、ラベンダーの匂いがする。目に見えた効果はなくても、これは面白そうだ。
それに、ハーブ系の匂いを利用できるなら、調合や錬金に雑草を利用することもできるかもしれない。これはぜひ他の小物も見てみなくては。
「何か生産のヒントになるものがあるかもしれないしね」