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209話 やっと落札できたけど


 欲しいものが何一つ落札できん!


「だが、次こそは!」


 攻めてやる! 少し無理してでも行ってやるさ! 決意を新たにした俺は次の出品を待っていた。この辺りはイベント報酬のゾーンであるらしく、その後もイベント関連のアイテムが続々と出品されている。


 イベント時に俺はテイマーだったのでテイマーの秘伝書をゲットしたが、当然他の職業にも秘伝書がある。そういった秘伝書が20程出品され、落札されていった。


 そして秘伝書ゾーンが終了し、いよいよ俺が狙っていたアイテムが出品される。


「次はこちら! 神聖樹の苗木です!」


 よしきた! これを狙っていたのだ。イベント報酬ではドリモの卵と秘伝書をゲットしたので、ポイントが不足してしまって手が届かなかった。カタログにこの名前を発見した時、絶対にゲットすると決めていたのだ。


「最初は2万Gから!」


 これは何があっても絶対に手に入れて見せる!


 マナー違反とは思いつつ、俺は一発目からかましてやることにした。何が何でもこれを買うのだと見せつけ、他の落札者の心を折ってやるぜ!


 俺は最初から10万Gで入札する。くくく、どうだ! これなら入札できまい!


「おおー!」

「まじか」

「あれ、白銀さんじゃ――!」


 周囲からどよめきがあがった。皆、驚いているらしい。いきなり大台に乗せたからな。しばらく待っていても、再入札はない。どうやら作戦が的中したようだ。狙っていた奴もビビッて手を出しあぐねたのだろう。


「では、神聖樹の苗木は10万Gで落札です!」

「よし!」


 オークショニアの宣言にあわせて大きな拍手が起きる。まあ、他人の落札に対して拍手をするのはマナーみたいなものだが、妙に拍手が大きくない? 何でだ?


「まさかあれをあの金額で――」

「集計掲示板でダントツ不人気だったアイテムだろ?」

「さすが白銀さん」


 皆、驚いているらしいな。結構な大金をいきなり注ぎ込んだから、注目されるのはしかたないか。まあ、欲しいものが落とせたんだし気にしないでおこう。


 これでオークションにつぎ込もうと思っていた資金は残り90万。まだまだ戦えるぞ。神聖樹が想定を大きく下回る安さで落札できたから余裕もできた。次に狙っていた品も、絶対に手に入れてやる。


「次の商品は武器だな」


 オークションはさらに進む。お次は武器ゾーンだ。強力かつユニークで、俺には装備すら不可能な武器が次々と競り落とされていく。杖はいくつかあったんだが、装備できないか、能力的に俺とは相性が悪いものばかりだった。


 防具ゾーンも似たようなものだ。だが、俺はある装備品に目をつけていた。そして、遂にその防具の番が回ってくる。


「次の商品はこちら! 精霊使いのピアス!」


 使役系職業用の頭防具なのだが、その効果が面白かった。それは、配下の精霊の能力が僅かに上昇すると言うものだったのだ。


 以前、転職欄にエレメンタルテイマーの名前が出たことがある。これは精霊系の従魔が三体以上いた場合につける職業だ。その情報を元に考えると、オルト、サクラ、ファウは精霊扱いなのだろう。


 ルフレもそうだと思う。オレアは微妙かもしれないが、樹精のサクラが精霊なら、同系統のオレアも精霊枠に入る可能性が高いと思われた。


 気づいた時には驚いたね。なんか知らん内にモンスが精霊ばかりになっていたのだ。しかも今後の計画では最低でも二体は精霊が増える予定である。火霊門と風霊門の精霊達も狙っているからね。となると、精霊を強化できるアイテムは是非ゲットしておきたかった。


 少し心配なのは、ピアスであるということだろう。だって、リアルではピアスなどというお洒落アイテムとは無縁の生活を送ってきたのだ。なんか気恥ずかしかった。いや、装備するのは美形のアバターなのだし、似合うだろうけどね。やはり気恥ずかしさは覚えてしまうのだ。


 以前イベント報酬でもらったピアスは、小粒な石が一つだけの地味なピアスだったからまだ平気だったんだけどさ。こっちはそこそこ大きな宝石のピアスで、ちょっとハデだった。すっごい偏見なのは分かっているが、ヴィジュアル系バンドマンが耳に付けてそうだ。


「いやいやまだ競り落としてさえいないんだぞ? 着けるのが恥ずかしいとかいう前に、まずは落札せねば」


 そして競りが始まったんだが――。


「あっれー?」


 またもやあっさりと落札できてしまった。開始金額である1万Gに対して、威嚇の意味を込めて5万Gで入札したら、そのまま誰も競っては来なかったのだ。


 ちょっとやり過ぎたのだろうか? 考えてみたら、精霊系のモンスをテイムしているプレイヤーはそこまで多くはない。もっと安くても落札できたかもしれなかった。


「次からはもっと低価格から入札して行こうかな」


 まあ、落札できたからよしだ!


 ただ、軍資金がかなり余ったな。入札を予定していた物はこれで終わりだし。どうせだから気になったアイテムに入札してみるか。


 そう思ってオークションを見守っていると、時おり良いアイテムが出てくる。空きスロットが3つも有るブーツとか、かなり有用そうだったのに。だが、そういったアイテムはたいてい激しい競合となり、落札することはできなかった。


 その後もオークションは進み、アイテム部門にさしかかる。ポーションや酒なども出品されているが、俺は自作できるからなー。他にも4種の属性結晶詰め合わせや、ボスのレア素材が人気を集めていたようだな。


 商品は残りわずかだ。最後は雑貨や小物部門である。会場のプレイヤーたちにはゆるい雰囲気が漂い始めているな。ここからは、完全な嗜好品のコーナーだ。大勢のプレイヤーにとってはおまけのゾーン。彼らのオークションはすでに終わっているのだろう。


 かくいう俺も、体の力を抜いている。もうなにがなんでも落札したい物はないからね。


 今は和風の小物やインテリアのゾーンであるようだ。和柄の壁掛けや、和傘、提灯型ランプなどが次々と出品されていく。面白そうではあるが、いまいち食指は動かない。納屋に似合うとも思えないのだ。


「お次はこちら!」


 ただ、次に出品されたものを見て、ちょっとだけ目を引かれた。


 インテリア扱いのホームオブジェクトなのだが、なかなかに渋い茶釜であった。黒い金属製の、小振りな茶釜だ。表面がはげてボロくも見えるが、俺は嫌いではない。それにあれだけボロボロだったら、うちのボロ納屋に置いても違和感無さそうだ。


 特殊な効果はなにもないが、落としてみようかな? 2000Gからとなっていたので、とりあえず入札してみる。今度は5000と抑えめだ。その後俺以外にも入札者はいたが、誰もあまり本気ではないらしい。たぶん、俺と同じ衝動入札か、せっかくオークションに来たのだからという記念入札なのだろう。結局、12000Gで落札することができたのだった。


次は、9日、12日に更新予定です

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