207話 従魔の宝珠
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とは言え、今日は大きめのアップデートがあったのでもう昼前だけどね。
昨日はカルロと別れた後、順調にギルドポイントを稼ぎ、獣魔ギルドのランクアップに成功していた。
「ふふふのふ。いやー、綺麗だね」
昨夜作ったばかりの従魔の宝珠を見ると、自然と笑みがこぼれてしまう。作成自体は錬金があれば難しくはなかった。従魔の心と宝石を合成するだけなのだ。
最初は従魔の心・オルトと緑翡翠で作ってみたが、基本は宝石の姿になるらしい。ただ、その中にチロチロと炎の様な魔力が揺らめき、かなり美しいのだ。
それを武具屋に持ち込むと、武具の空きスロットにセットしてくれるという訳だった。この後、オークションに行く前にルインの店に行ってみるつもりだ。
「クックマ!」
「キュ~!」
「おはよう2人とも。今日も元気だな」
畑に足を踏み入れた俺を出迎えてくれたのは、クママとリックだ。左右から俺の足にしがみ付いて、頭をグリグリと押し付けている。
今日も甘え上手なクママたちに構ってやっていると、オルト達もやって来た。順番に頭を撫でてやりながら、俺は畑のことを頼む。
「じゃあ、畑は任せるからな。オルト、オレア、サクラ」
「ムッム!」
「トリリ!」
「――♪」
オークションは13時からだから、あと2時間半くらいしかない。それに、カタログの配布がその前にあるはずだった。最悪でもオークションが始まる直前までに用事を全部済ませたいからね。俺はルフレとファウを伴って、ルインの店へと向かった。
「お、久しぶりだなユート」
「どもども」
「ヤー」
「フムム~」
「モンスたちも久しぶりだな」
ルインは顔は怖いのに優しいから、うちの子たちもがっつり懐いている。ぶっちゃけ、俺以外のプレイヤーの中でも上位に入る懐かれ方なんじゃないか?
「ヤ~♪」
「フム~♪」
ガシガシと頭を撫でられ、くすぐったそうな顔で喜びの声を上げている。ちょっと乱暴目な撫で方も楽しいみたいだった。キャッキャと声を上げている。
「で、今日はどうした? 何かとんでもない素材でも仕入れたか?」
「いやいや、とんでもないってなんですか」
「お前が持ち込むもんは大抵とんでもないじゃないか」
「そんなことないでしょ? そもそも、一昨日からずっと土霊門と町周辺でしか戦ってないですし、ルインさんが喜ぶ様な素材は持ってませんよ」
「そうか。残念だ」
「今日はこれをセットしてほしくて来たんです」
俺は緑翡翠の従魔の心をルインに手渡した。さすがに見ればそれが何なのか分かるらしい。感心したように見つめている。
「ほう。お前もついにこれを作れるようになったのか」
「つい昨日、ランクが上がったんで」
「そうか。で、どの装備にセットする?」
「これって、一度セットしても取り外しできますよね?」
「勿論だ。スロットの効果を消去する方法で取り外せる。まあ、金はいただくがな」
俺はその後、装備品を全部見てもらい、どの装備にいくつの空きスロットがあるか鑑定してもらった。すると、獣使いの腕輪に空きが1つあり、他の装備には空きがないことが分かった。意外と少ないもんだな。
ただ、ブルーウッドの杖、魚鱗のローブに関しては空きスロットが強化で埋まっているだけなので、その効果を消去すれば空きが出来るらしい。
「じゃあ、とりあえず獣使いの腕輪にセットしてもらえますか?」
これは従魔術の効果が上昇する効果があり、基本取り外すことが無いアクセサリだからね。ただセットは数秒で終わってしまった。二つを並べてルインがスキルを使用したら、従魔の宝珠が解けるように消えて終わりだ。
しかも見た目は何も変わらない。ちょっと不安になって鑑定をすると、きっちり従魔の宝珠がセットされていた。よかった。
「よ、よし。さっそく試すぞ!」
「フム!」
「ヤー!」
ルフレは胸の前で手を組み、ファウはその頭の上で固唾を飲んで見守る。
「えーっと、召喚!」
『どの従魔を召喚しますか?』
今はルフレとファウしか連れていないから、パーティの入れ替えではなく、単に誰を召喚するかだけ尋ねられたようだ。
「とりあえず音声入力を試してみよう。じゃあ、オルト!」
従魔の宝珠をセットしていた獣使いの腕輪がペカーッと光ったかと思うと、目の前にオルトがいた。
「ム?」
「成功だ!」
「ムー!」
よく分からないけど俺が喜んでいるのは理解したらしい。俺の足にギュッとしがみ付いてとりあえず喜んでいる。
「これで12時間は使えない訳か」
やっぱ複数欲しいな。もし可能なら、オークションで空きスロットがある装備をゲットしようか? まあ、空きスロットの有無が分かれば、だけどね。
今回は全部手動で選んだけど、予めどのモンスを呼び出して、誰と入れ替えるかということを設定しておくこともできるらしい。アミミンさんはそれを利用しているから、あれだけ早くスムーズにモンスの入れ替えをできたに違いない。
後、召喚された直後のオルトの様子を見たら、事前に召喚後の行動を教え込んでおく必要もありそうだな。ポカーンとしたまま死に戻ったりしたら最悪だ。
「とりあえず畑に戻るか」
「ム!」
俺はルインに代金を支払い、オルト達を連れて畑に戻った。道中でスネコスリが出現するという草むらに行ってみたけど、まだまだ長蛇の列ができている。これはしばらくは無理そうだ。
「この全員が足をくすぐられに来ているわけか……」
そう考えたらカオスな場所だぜ。さすがゲームの中。
「オークションまでまだ時間はあるよな?」
オークションに参加するには始まりの町にいればいいらしい。ただ、特設の会場も設けられ、希望者はその会場からオークションに参加できるんだとか。会場への入場は、始まりの町にさえいれば転移で入ることができるみたいだな。
最初なんだし、できれば会場に入って参加してみたい。入場開始前に始まりの町にいなければ。
「よし、張り切って畑仕事を全部終わらせよう!」
「ムム!」
「フム!」
「ヤー!」
忙しいがエンドレス……。
次回は3日後の予定でしたが、4日後の更新とさせていただきます。
申し訳ありません。




