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201話 解放されたスキル


 酔拳が取得できなかったショックを堪えつつ、俺は健気にもスキル一覧をチェックしていた。だってコクテンが取得可能になったスキルを教えてほしいって言うからさー。


 レイドボス戦ではコクテンたち前衛組が1番頑張ってくれたわけだし、そのお願いは断れないよねー。


「★マークがついてるのは5つあるな」


 ★マークがついているスキルの中で、誰でも取得可能だというスキルが酩酊耐性、妖怪察知、妖怪知識の3つである。


 酩酊耐性はその名の通り、酩酊になり辛いスキルだった。酒飲みは喜んでいるが、酔拳との相性は悪そうだな。ざまーみろ!


 妖怪察知はフィールド等で妖怪の近くに行くと、教えてくれるというスキルだ。


 妖怪知識は植物知識と似ていて、妖怪鑑定時に詳しい情報が表示されるようになるらしい。このスキルが無い場合は、ハナミアラシと同じ様に名前とHPだけなんだろう。


 ただ、残り2つのスキルが、コクテンから渡されたリストに乗っていなかった。


「えーっと、妖怪懐柔、妖怪探索の2つだな」

「……2つもですか? す、すごいですね!」

「まあ、これもホストの特権だったのかな?」


 コクテンたちを差し置いて何で俺がって感じだけどね。


 妖怪懐柔は、妖怪からの好感度の上昇率が上昇するというスキルだ。今後、妖怪系のイベントに好感度が関わってくるんだろうか? 好感度を上げないと戦闘できないとか? もしくはハナミアラシの好感度が上がったら何か起きるとか? これは色々なことを示唆しているスキルだな。


 妖怪探索はフィールド上で妖怪が側にいる場合に反応するという、妖怪察知に似たスキルだった。ただ、探索の場合は範囲が狭い代わりに、より正確に場所が分かるという内容だった。


「霊桜の小社がトリガーになっているんですかね? それともイベントホストだから?」

「分からんな~」


 コクテンとスキルについて話していたら、いきなり後ろから声をかけられた。スコップたちだ。やべー、ボス戦とかいろいろあったせいで、すっかり忘れてた!


 だが、怒った様子はない。むしろ謝られてしまった。どうやらNPCたちは酒に酔いつぶれて寝ていたせいで、何も覚えていないという設定らしかった。


「いやー、今日は楽しかったぜ」

「久しぶりに楽しい宴会でした」

「何か困ったことがあったら、力になるからな!」

「僕達もです」

「私とリオンは普段はギルドで働いてるので、また会いましょうね?」


 スコップ一家はそう挨拶をして帰っていった。その直後、イベント終了のアナウンスが聞こえる。チェーンクエストが、これで終了ってことらしい。


特殊クエスト

内容:自ら育てた桜の木の下で、スコップ、ライバ、ピスコを招いて花見をする

報酬:ボーナスポイント3点

期限:なし


 報酬であるボーナスポイントが手に入った。もとはといえばこんなクエストだったのだ。いやー、長かったね。


 俺は取りあえず残っているプレイヤーたちに声をかけて、集まってもらった。


「これでお花見は終了となりまーす。なんか、色々とバタバタしてしまい申し訳ありませんでした」

「いやいや、楽しかったぞー」

「レイドボス戦も勝てたし!」

「最高の花見だった!」


 よかった、怒ってる人はいないみたいだな。むしろ、みんな笑顔だった。俺が頭を下げると、拍手が起きる。なんか、大昔に毎年行っていた、某日本最大の同人誌即売会を思い出した。なんか、寂しさ半分、笑顔半分で、皆が最後に拍手をするんだよね。


 ああ、霊桜装備はちゃんと欲しいプレイヤーに譲っておいたよ。なんと、全部で26万にもなった。高いと思ったけど、性能は良い上にレアだからね。それくらいにはなるらしい。俺の場合は武拳と重枷があるから、より高額になったようだが。


 そうやってプレイヤーたちが三々五々帰っていく中、俺はアリッサさんに再び捕まっていた。


「ねえ、話が逸れちゃったけど。もう1つのアイテム、ハナミアラシの怒りはどんなアイテムなの?」


 おっと、そう言えば酔拳の話に夢中になり過ぎてた。すいません。


「えーっと、ハナミアラシの怒りは――ええ?」

「ボスとの再戦可能アイテムか~。しかも桜の木の前じゃないと使用不可……。これはまた、凄まじいものを……。毎日入手可能なのかしら?」

「さ、さあ?」

「そうよね~。あのさ、何日後かでいいからさ、この祭壇で何が取得できるか、教えてもらえない? もちろん情報料は払うから」

「それは構いませんけど……」

「あと、このハナミアラシの怒りは、しばらく内緒にしておく方がいいわ。下手したら色々なプレイヤーが押し掛けるかもしれないから」

「わ、わかりました」


 レイドボスに挑めるアイテムなんて、そりゃあ騒ぎになるよな。でも、特殊クエスト効果の回復なんかはもうないんじゃないか? だとすると攻略は結構難しそうだな。


「そもそも、このレイドボス戦を発生させるには、どんな手順が必要なの?」


 俺はチェーンクエストの始まりから、全ての情報をアリッサさんに伝える。それを聞いたアリッサさんが、深いため息をついた。


「はぁぁー。これは長い道のりね……」

「そうですか?」

「植物知識は最近広がってきたとはいえ、その後がね……。チェーンクエストを色々熟さなきゃいけないわけでしょう? そのイベントに生産系スキルが必要なわけだし」

「まあ、農耕、伐採、木工、育樹が必要ですね」

「つまり、パーティで分担してスキルを取得するか、生産系のプレイヤーの協力を得るかしないといけない訳よ。そして、高レベルのファーマーの助けが絶対に必要になる」


 そう考えると、普通の前線パーティじゃ、イベントを発生させるのは難しいかもしれない。多分、ファーマー用のチェーンクエストなんだろうし。


「しかも最後はレイドボスよ? ユート君、良くクリアできたわよね」

「まあ、運良くって感じです」

「うちもメイプルをファーマーに復帰させて頑張ってるんだけど、まだ育樹には届いてないのよね……。誰か協力してくれるファーマーいるかしら?」


 アリッサさんはこの後の計画を色々と練り始めた。頑張ってください。


 花見参加プレイヤーが解散したのを見て、やじ馬たちも解散していった。まあ、外から見ていても十分楽しめただろう。


 そう言えば、早耳猫のやらかした人。なんと外からスクショをずっと撮り続けていたらしい。しかも、野次馬にいた知人にも声をかけて、全方位からの絵を押さえていたそうだ。


「それで、その映像を早耳猫のホームページで公開したいってことか?」

「そうなんです。いいですか?」

「他の人が全員オッケーしてるんなら、構わないぞ」


 いやー、この人に頼まれたら嫌とはいえないだろう。ここで断ったら、可哀想すぎる。すると、どうやら俺が最後だったらしい。構わないと伝えたらメチャクチャ驚かれたな。俺って、そういうお願いを断りそうに見える? ちょっとショックだわー。


「こ、このネタ満載映像の公開をこんなにあっさりと……。さすが白銀さんだぜ……!」

「何か言ったか?」

「いえいえ、何でもないです! じゃあ、公開オッケーってことで?」

「お金をとる訳じゃなくて、本当に公開するだけなんだろう? だったらいいよ」

「あざーっす!」


 やらかしさんは、大きく一礼すると駆け足で去っていった。これで少しでも彼の無念が晴れればいいね。


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