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198話 竜血覚醒


 ドリモやジークフリード、アカリたちも目立っているが、違う意味で目立っているのがタゴサックとふーかだった。


「おらぁ!」


 タゴサックは巨大な鉄の棍棒で戦っている。細長いリーチ優先の武器だ。それだけなら他にも使っているプレイヤーはいるだろう。だが、ツナギ風の防具を着込んだタゴサックが細長い鉄の棒で戦う姿は、族同士の抗争で暴れるレディースにしか見えなかった。アカリの隣でタゴサックが戦う姿は、シュールでさえある。


 あと、他のファーマーたちも、ちょっとおもしろい。クワやスキの装備が多いんだが、寛ぐ用の布服や作業着なので、ちょっと農民一揆感があったのだ。なんか、すっごい悲壮感があって、応援したくなった。


 もう一人目立っているのがふーかだ。こっちはフライパンを振り回して戦っており、緊張感が感じられない姿だった。花見の料理を作るためにコック服装備だったため、より場違い感が否めないのだろう。


 ただ、皆の頑張りを見て俺もやる気が出て来たぞ。


「俺たちも皆に負けてられないぞ!」

「ラランラ~♪」

「――♪」


 ファウの魔術攻撃力上昇の歌に後押しされ、俺とサクラは魔術を連発する。MP回復効果のおかげでバンバン打てるのが気持ちいい。ボスが範囲攻撃オンリーで、ヘイトとか気にしなくても済むのが楽でいいのだ。


 しかも攻撃のモーションも大きいので、酩酊スモッグは察知することも可能である。大声での麻痺状態にさえ気を付ければ、ほぼノーダメージも夢ではなかった。


 周りでは他の遠距離系プレイヤーが同じ様に攻撃を放っている。テイマーには後衛職タイプが多いので、モンスの数も多いな。特に、ノームたちが後衛組の前を固めてくれているので非常に心強い。


 たまにハナミアラシが前衛を通り越して、ゴミをこちらに向かって降らしてくることもあるのだが、ノームの鉄壁の防御の前にことごとくが撃ち落とされている。ちょっとばかり「ムームー」とうるさい気もするが、俺以外のノーム好きたちがうっとりと見ているので、文句は言うまい。おかげでダメージも食らっていない訳だしね。


 ただ、俺を同類のように扱うのはやめてくれ。確かにオルトは可愛いし、ノームは可愛いと思う。だけど、俺はショタコンでも子供好きでもないのだ。


 ノームを見ながら「ご飯が美味しく食べれますね!」とか言われても同意できないんです。「可愛いですね」とか「良い光景ですね」くらいだったら同意できたのに。しかも、ゴハン美味しい宣言にうなずく奴が多いのはなぜだ?


「……これ以上考えると色々怖いから、やめておこう」


 俺はノームたちから視線を外し、他のテイマーのモンスをチェックしてみた。モンスの中で特に目を引くのは、やはりアメリアのリトル・エア・ウルフだろう。


 これが中々足が速い。多分、追い風を連続発動しているんだと思う。今はレベルが低くて攻撃力が低いので牽制以上にはなっていないが、育った姿を想像すると末恐ろしいな。絶対に戦いたくない。


「それにしても、だいぶ押せ押せだな」


 前衛組の直接受けるダメージが大したことが無いので、攻撃の手が緩まないのだ。ガリガリとハナミアラシのHPが減っていく。元のHPが大きいので時間はまだかかりそうだが、相手の攻撃力が低い上、攻撃頻度も低いからな。これって楽勝なんじゃなかろうか?


 だが、それもハナミアラシのライフが残り2割ほどに減少するまでだった。


「ホゲエエェエェ!」

「うわ、新しい攻撃か!」

「あ、あれはバッカルコーン!」

「やっぱクリオネじゃねーか! なんで花見妖怪がクリオネなんだよ!」

「さあ? 運営の趣味じゃね?」


 なんと頭頂部がパカッと開き、そこから触手のような物が出現したのだ。クリオネが獲物を捕食する時の姿にそっくりだった。


 6本の触手が個別に動き、前衛のプレイヤーを重点的に攻撃していく。あれはヤバいな。コクテンの仲間が一発でレッドゾーンに追い込まれた。ドリモが食らったら一発でアウトだ。


 さらに、開いた頭部からキラキラ光る液体のようなものを吐き出している。どうも、体に当たるとネバネバして、動きが封じられてしまうらしいな。


 酩酊やネバネバで行動不能に追い込んで、最終的に触手で止めを刺すスタイルであるらしかった。ドリモは掘削スキルで地面に隠れられるので酩酊スモッグはかわせているんだが、触手はかわしきれんだろう。一旦下がらせた方が良さそうだった。


「ただ、その前にあれを試しておこう」


 竜血覚醒をまだ使っていなかったのだ。


「ドリモ! 竜血覚醒を使ったら、一度戻って来い!」

「モグ!」


 さて、どんなスキルなのか。説明だけだと攻撃系なのか、強化系なのか、補助系なのかも分からないからね。


「モグモ~!」


 ドリモの可愛らしい雄叫びの直後、その体を覆い隠す程の強い光が発せられる。おいおい、光の柱が立ち昇っているんだが。エフェクトが凄まじく派手だ。


「おおー!」

「かっけー! 何だあれ!」

「ドラゴンだ!」


 光の柱が消え去ると、周囲のプレイヤーが騒めく。あ、あいつよそ見して触手で吹き飛ばされた! ああ、死に戻った! すまん!


 いや、でも無理もないか。なんと光の奔流が収まった後、そこにはドリモの姿ではなく、一匹のドラゴンの姿があったのだ。


 鋭い牙に、太い爪。天を突く様な尖った角に、ゴツゴツと硬く茶色い鱗。瞳孔はトカゲのように縦長で、尾は太くたくましい。背には蝙蝠に似た翼を備え、明らかにモグラではない。


 それは紛れもなく、ドラゴンだった。なんと竜血覚醒はドラゴンに変身するスキルだったのだ。まあ、大きさはほぼドリモと同じくらいだけど。ドリモと違って4つ足で地面を踏みしめる姿は、小型であっても雄々しく頼もしい。


 全体的にはほぼオーソドックスなドラゴンだ。ちょっとだけずんぐりむっくりな体型だけどね。ただ角だけは、後ろではなく前にせり出す、トリケラトプスの様な形をしている。あれで突かれたら痛そうだな。


「モグ~!」


 ああ、鳴き声はドリモのままなのか。するとドラゴンモードのドリモは、そのままハナミアラシに向かって突進していった。エフェクトから判断するに、追い風と強撃を使っているな。


「モググ!」


 しかもクリティカルのエフェクトだ。ドリモの角の一撃で、ハナミアラシのライフがメチャクチャ減った。多分、前線メンバーのアーツ並みだろう。さっきのツルハシ強撃も凄かったが、こちらはそれ以上だ。


 ただ、攻撃の直後にドリモの姿はもとのモグラさんに戻ってしまった。どうやら変身していられるのは10秒くらいであるらしい。とは言え、ドリモのMPはそれほど減っていない。これってもしかして、竜血覚醒が連発出来るんじゃないか?


 そう思ったんだが、スキルが灰色に変色して使用できなくなっている。その横には23:59:44の表示だ。これはスキルのクーリングタイムである。


「再使用に24時間か……」


 本当に奥の手だな。いや、今はボス戦に集中せねば。


 その後、戻って来たドリモを労いつつハナミアラシに攻撃を続け、なんとか30分経過する直前で撃破することに成功した。最期はアカリが放った剣アーツがハナミアラシのライフを削りきる。


「ホゲ、ホゲゲゲ……オハナミハ……マナーヲマモッテネェェ!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 断末魔の鳴き声(?)に笑いました。
[良い点] ハナミアラシの最後のセリフに吹いた! (笑)
[一言] いつかこういうVR系ゲームが出たら包丁とフライパンの二刀流で戦ってみたいものですねー ...勿論調理用と戦闘用は別ですよ?
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