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193話 いでよ、アース・ドラゴン!


 だいたい全部の卓を回ったかな? もう花見が始まって1時間以上経過している。


「……すっごい見られてるな」


 いつの間にか、畑の周りに凄い数のプレイヤーたちが集まっていた。全員が何とも言えない顔でこちらを見ている。


「まあ、酒も料理も揃ってるしな」


 きっと宴会に混ざりたいんだろう。だが、これ以上は畑に入りきらないし、あの人数を参加させるのは無理だ。


「ま、気にしないでおくのが一番だな。顔見知りもいないみたいだし」


とりあえず一度NPCたちの下に戻って落ち着こう。


「うちの子たちともゆっくり花見を楽しみたいしな」


 そう思ったんだが――。


「オルトがいない?」


 ノームハーレムにもオルトの姿はない。どこに行ったんだ? 首をひねっていると、納屋の扉がバタンと開く。オルトだった。


「オルト、納屋なんかでどうした?」

「ムム!」

「おいおい、引っ張るなって。にしても慌ててるな」

「ムッムー!」


 俺のローブの裾をグイグイ引っ張るオルト。まるでローブを剥ぎ取ろうとしてるかのような力強さである。何がしたいんだ? いや、待てよ。この反応、クママの卵が孵化する直前にも見たことがある。


「もしかして!」


 俺は慌てて納屋に駆けこむ。そして、孵卵器を見て絶句した。


「ひ、ヒビが!」


 やはりそうだった。孵卵器にセットしてある土竜の卵にひびが入っていたのだ。元々、オルトの行動に注目が集まっていたのだろう。そこに俺の叫び声だ。周囲の人間を集めるには十分だった。


「何々?」

「なんかあったの?」

「あ、あれ見て!」


 納屋の入り口や窓から、皆がこちらを覗いている。うーむ、全員集まって来たんじゃないか? 皆が納屋を見ようとして、押し合いへし合いが凄い。これ、放っておいたら喧嘩とか始まるんじゃないか?


「ど、どうしよう。すっごい騒ぎに!」

「ムー」

「無理やりにでも解散させるか? いや、待て、孵卵器を外に出せばいいのか? 皆、これが見たいんだし」


 そもそも、孵卵器は納屋の中に置いておかなくてもいいはずだった。単に、俺が気分の問題で納屋に設置しているだけで。


「問題は動かせるかだけど……よし、動かせるな」

「ムム!」


 オルトが先導してくれた。身振りで野次馬と化した花見の参加者たちをどかして、道を作ってくれる。オルトにどけと言われて、どかない参加者もいない。慌てて左右に割れて行く。


「はいはい、どいてくださーい」

「ムーム!」


 とりあえず孵卵器を桜の前に置く。ここなら皆も見えるだろう。それを見たイワンが、興味津々の様子で聞いて来る。


「あの、白銀さん、それは?」

「イベントの報酬でもらった土竜の卵だな」


 そう答えた瞬間だった。テイマーたちからどよめきが起きる。


「ま、まじか! あれを手に入れていた奴がいたとは!」

「さすが白銀さん。斜め上を行く」

「でも、白銀さんの卵ってことは、竜の目はなくなったわね」

「なんで?」

「だって、白銀さんよ?」

「なるほど。絶対に可愛いはずだもんな」


 どうやら土竜の卵が珍しいみたいだ。考えてみたら、最高ポイントだし、俺以外に入手したプレイヤーがいないのかもしれない。


 あと、何人かのテイマーが駆け出していくのが見えた。多分、俺と同じでイベント卵がまだ孵化してなかったプレイヤーたちだろう。確認しに行ったに違いない。


「白銀さん! 私もいくね!」

「俺も!」


 アメリア、オイレン、イワンもか。まあ、テイマーにとっては一大事だから仕方ないけど、参加者が減っちゃうな~。


 そんなことを考えていたんだが、それは杞憂であった。皆、自分の孵卵器を抱えて戻って来たのだ。あっと言う間に納屋の前に10以上の孵卵器が並ぶこととなる。


「それにしても、白銀さんの孵卵器凄いね。なんか緑色してるし」

「ああ風属性付加戦闘技能孵卵器だな」

「名前なが! っていうか、それってもしかして属性結晶使う奴か?」


 ウルスラもオイレンも何故か絶句している。いや、モンスターはテイマーにとって一番重要なんだから、最高の素材を使うのは当たり前だろう? まあ、俺も最初は悩んだから、気持ちは分かるけど。


「羨ましいぜ」

「でも、精霊門のおかげで属性結晶が少しは出回るだろうし、きっとチャンスは来るわよ」

「だな」


 頑張ってくれ。現状だと、土結晶が一番使いやすいだろう。


「孵化にはもう少し時間がかかるだろうし、お花見に戻りましょう?」

「ま、そうだな」


 ただ、皆の卵が何なのか話を聞いていたら、あっという間だった。最初に孵化を迎えたのは、オイレンの蜜熊の卵である。彼らはハニーベアと予想しているらしい。まあ、これはハニーベアだろうな。


 そして、卵からは予想通りにハニーベアが生まれたのだった。「クマ?」と円らな瞳で周囲を見回すハニーベアに、見守っている周囲のプレイヤーたちから「きゃー!」とか「ほー」と言った様々な声が上がる。一番多いのは黄色い悲鳴だったけどね。さっそくオイレンが抱きかかえているな。


 その後に孵化を迎えたのは、アメリアの卵だ。なんと、俺が最後まで迷った風狼の卵であるという。


「キャン!」

「ちっさ!」


 勇壮な巨狼を想像していたせいで、思わず叫んでしまった。現れたのは狼というか、ちっさい子犬の様なモンスターであった。緑色の体毛に、白い毛で模様が入っている。


「かーわーいーいー」

「キャウン?」


 アメリアが喜んでいるからいいけど。鑑定してみると、確かにリトル・エア・ウルフという種族名になっていた。これが風狼に間違いないだろう。


「能力はどうなんだ?」

「うん! 風魔術があるね! あと、ダッシュスキルがあるみたい!」


 基本はワイルドドッグの上位互換の様な能力であるらしい。だが、そこに魔術の要素があるようだ。ダッシュは短時間移動力を上昇させる技だったはずなので、速さも期待できそうだった。


 ステータスを皆で確認する。この小ささで、基礎能力はワイルドドッグより上か。進化したらエア・ウルフになるんだろうが、かなり強くなりそうだな。ただ、俺の土竜の卵はこのエア・ウルフよりも高ポイントだった。きっともっと強いに違いない。リトル・アース・ドラゴンとか?


 その後、皆の卵が次々と孵っていくな。未見のモンスばかりなので、見ているだけでも面白い。そして、俺の卵が孵ったのは、最後の最後だった。


 残りは俺の孵卵器だけとなり、皆の視線が全て集中する中、卵のヒビが一周し、孵卵器が光り輝く。


「きたきた!」

「何が生まれるんだろうな!」

「そりゃあ、なにかモフモフでしょ!」

「可愛い子にきまってる!」


 皆、何を言ってるんだ? 土竜だぞ? ドラゴンに決まってる! 来い! アース・ドラゴンよ!


体調不良のまま無理をしても良いことが無いと思いますので、今週は執筆を休むことにしました。

書き溜めた分を予約投稿してありますので、更新は3日に1回となります。

8月の初週中には2日に1回更新に戻せると思います。

ただ、感想等のチェックも引き続き停止すると思いますので、しばらく誤字の修正等が先に延びてしまいそうです。ご了承ください。



先週末から体調不良のせいで感想のチェックができていなかったのですが、その間に感想欄が荒れてしまっている様です。

私も知人に言われて気づきました……。

私見となってしまいますが、感想欄はあくまでも作品に対する感想や、誤字脱字を報告をしてもらう場所だと思っています。

作品に対する思い入れを強く持っていただけるのは嬉しいのですが、ディスカッション等は他の場所で行っていただけると幸いです。もしかしたら他の作者さんの中にはそう言ったことを許している方もいらっしゃるかもしれませんので、あくまでも私の場合は、となりますが。


また、作品にたいするご意見を頂けるのは有り難いですが、その意見を絶対に取り入れられる訳ではありません。

その事に関してもご了承ください。

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