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19話 ゴミ拾い


 俺はひたすらゴミを拾い続けた。ゴミは石ころに留まらず、草や割れた花瓶など、多岐にわたる。拾ったゴミが20を超えた。


 マップを確認すると、南区はほぼ回り終えていた。それでも、ゴミを20しか拾えていない。


「次は西区に行くか」


 俺は西区を歩きながら、ゴミを拾っていた。マッピングも、ゴミ拾いも、すこぶる順調だ。ただ、いくつか気になることもある。


「おいあれって……」

「間違いない、白銀――」

「し、白銀って、あの?」

「モンスを連れてない銀髪テイマー……」


 なんか、妙に人の視線を感じた。それと共に、何やらヒソヒソと小声で話している。いや、分かっているのだ。何やらじゃない。完璧に俺が面白称号の獲得者だとばれている。


 ミレイの薬屋で情報を得たのは50人ほどだというが、その50人が友人知人などに話しまくって、そこからさらに広まる。それを繰り返したらあっと言う間に広まるだろう。


 最初の50人がそれぞれ5人に教えて、さらに教えられた250人が5人に教えたら、それだけで1550人に広まる計算だ。


 噂話って怖いな。なんか周りの奴らがみんな俺のことを知っているように見えてきた。自意識過剰だと思うが……。


「はあ、逃げたって、逃げ場もないしな。無視無視」


 すぐにイベントやらなんやらで、俺のことなんか忘れられるだろうし、それまでの辛抱だ。


 そう願いたい。


 そこから、俺は周囲の視線に耐えながら、クエストを進めた。集中していると案外気にならないもので、夜になる頃には完全に慣れてしまっていた。行く先々でヒソヒソされたら、「ああ、またか」としか思わなくなってくるのだ。


「西区は大体回ったな」


 マップ埋めは順調だが、ゴミ拾いは微妙だ。22個しか拾えなかった。しかし西区はほとんどの場所を回っただろう。


「でも、このペースだと、東西南北全部まわってゴミ拾いしても、100個に届かないよな」


 1区画20個前後のゴミが落ちているとすると、4区画で80程度。100個は達成できない。


 そんな俺だが、実は気になっていることがある。


「あそこ、確実に緑マーカーが出てるんだよな」


 そこは水路だった。横幅7、8メートルほどの、運河と呼ぶには狭くて浅い水路だ。各区画の中心にある目抜き通りに沿うように、この水路は走っている。


 その水路の中に、緑マーカーが見え隠れしているのだ。


「ほっ!」


 トングを伸ばして水路の中のゴミを拾うことを試みる。水路の端に落ちているおかげで、中に入らなくても何とか届いた。


「よし、採れた!」


 それはやはりゴミだった。


 ゴミ拾いの達成に光明が見えた。だが、同時に最悪の結果でもあった。


「だって、水路にゴミが落ちてるかもしれないってことだろ?」


 今のゴミは、浅い場所にあったから岸からでも発見できたが、深い場所にあるゴミは岸からじゃ見つけることはできないだろう。つまり水路に入らなくてはならないということだ。


 ただ、すでに辺りは暗い。夜に水路に入ってゴミ拾いをするのは色々な意味で勘弁だった。下手したら、街中で溺れ死ぬという、前代未聞の死に方をするかもしれない。


「そんな死に方したら……」


また噂が広まってしまう。しかし、ゴミを100個拾おうと思ったら、ほぼ確実に水路に入らないとならないだろう。


「明日だな」



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