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188話 やって来すぎた参加者たち


 ジークフリードたちの次にやってきたのは、これまた大所帯の一団であった。


「お久しぶりでござる」

「お呼びいただき、恐悦至極」

「桜の下で酒宴とは、忍者冥利につきるでござるなぁ」

「美しい桜でありますね」


 より忍者っぽさとウザさを増したムラカゲ、アヤカゲのシノビ夫婦だった。頭からつま先までを覆う黒い忍び装束に、その下からのぞく鎖帷子。足は足袋を履き、その装備は完全に忍者だ。カッコいいんだが、太陽の下で見るとちょっと間抜けかもしれない。


 しかも、その後ろに数人の忍者を連れているじゃないか! どうやら彼らの忍者クラン――じゃなくて、仲間を集めての忍者党作りは順調であるらしかった。


「なあ、あの隠れ忍ぶ気の全くない忍者たちは何だ?」

「我が党の精鋭たちにござる」

「精鋭?」


 ムラカゲの連れてきた忍者たちの格好は千差万別だった。ちょっと前に流行った、主人公の口癖が「だってばよ!」の忍者漫画の登場人物風の格好はまだマシな方で、中にはピンクや黄色の、超ど派手な原色忍び装束を着込んだ者までいた。


「忍者とは言え、その価値観は様々でござる」

「つまり?」

「彼らは特撮ファンなのですが、何を言っても頑として譲らないのでござる」


 まあ、憧れの忍者は人によって違うだろしな。ムラカゲたちは時代劇派。彼らは特撮や漫画を見て忍者への憧れを募らせたタイプと言うことなんだろう。


「ムラカゲ的にはあれは有りなのか?」

「拙者としては無しでござるな」

「え? それなのに許してるのか?」

「強制しようとしたら、何人かに辞められてしまったので……」


 どこの世界も人を集めるのは何かと大変であるらしかった。ムラカゲを慰めていると、今度は珍しい組み合わせがやって来た。


「こんにちは!」

「久しぶりだな」


 ソーヤとスケガワが一緒に現れたのだ。どうやら生産者同士で繋がりがあったようだ。しかも結構仲良さげである。


 ショタエルフと美形の青年のコンビ。腐ったお姉さま方が好きそうな組み合わせだった。スケガワも見た目だけは美形だからな。まあ、スケガワはそのカップリングを聞かされたら死ぬほど嫌がるだろうけどね。


「何を持ってきたらいいのか分からなかったんで、ジュースを買ってきました」

「俺は酒だ!」

「助かるよ」


 飲み物はどれだけあっても足らないだろうから、マジでありがたい。それにスケガワはつまみも持ってきている。ジャーキーか。まさかゲームの中にあるとは知らなかった。是非作り方を知りたいが、スケガワは知人の料理人から買って来ただけらしい。さらに塩の焼き鳥の盛り合わせも取り出す。気が利くね。


 こいつ、リアルじゃ確実に成人だろうな。しかもそれなりの酒飲み。エロ鍛冶師なんぞと自称し、エロの良さとやらを熱く力説する変態が成人しているということに、少しばかり戦慄してしまったぜ。


「どうしたんだ白銀さん?」

「い、いや何でもない」


 スケガワたちの後に姿を現したのは、今日一番の大所帯である。もはや群衆と言っても良い数だろう。まあ、プレイヤーの数はそこまで多くはないだろうが。


「きゃほー! 久しぶり!」

「ウルスラ、テンション高いな」

「だってお花見だよ? 宴会だよ? テンション上がらない訳ないじゃん!」

「オイレンも来てくれたんだな」

「当たり前だ! 樹精ちゃんたちと花見! 来ない訳がない!」


 オイレンはウルスラが連れてくると言っていたので連絡を取らなかったが、ちゃんと連れてきてくれたらしい。


 ウルスラが連れてきたのは、オイレンシュピーゲルと、俺の知らないテイマーさんたちだった。ウルスラを含めて7人、モンスだけで35体の大所帯である。一応、気を使って小型のモンスばかりなんだが、それでも凄まじく目立つ。見たことのないモンスがたくさんで、非常に興味深かった。


 一番多いのはノームか? いや、リスの方が多いかもしれない。あと、リトルベアやハニービーも結構多いな。うちの子たちに構成が似ている。まだゲーム序盤だし、テイマーの従魔って似ちゃうのかね?


「さすがにこの数のモンスの食事までは用意できんぞ」

「それは構わないよ。自分たちで持ってきてるからさ」

「そうそう。それに人間用の食べ物も色々もってきてるからさ」


 俺がオイレンたちと話している内に、彼らのモンスとうちの子たちが交流している。リックなどはすでに他のリスたちと追いかけっこを始めていた。ルフレやオレア、サクラは動物型のモンスを撫でたりしている。


 ファウだけはさっきから料理人たちが作業をしてるテーブルの端に腰かけ、ゆったりとした曲を静かに爪弾いている。どうやら料理をしているふーかたちのためにBGMを流してくれているようだ。あとで褒めておこう。


「畑の中で遊ばせていいから。でも、作物を傷つけないように頼む」

「勿論! みんなには言い聞かせるように伝えておくね」


 システム的に守られているので大丈夫だとは思うけど、一応注意しておく。好きにしていいとか言ったら、シッチャかメッチャかになりそうなのだ。


「というか、すでにヤバそうだけど……」


 最後にやってきたのはアリッサたち早耳猫と、その知り合いの面々である。俺が知っているのはアリッサ、農業関連を販売するメイプル、鍛冶師のルイン、テイマーのカルロに、防具屋のシュエラ、セキを加えた面子だな。


 それ以外の人たちは早耳猫のクランメンバーらしい。一番人数が多かった。まあ、手土産が1番豪華だったのもアリッサさんたちだったけどね。樽酒に数々の宴会料理、さらに果物やジュースも盛りだくさんだ。


「こんなにいいのか?」

「勿論」

「いやー、助かる。予想よりも人数が多くて、ちょっと困ってたんだよ」

「私を誘った時の気軽さを聞くに、絶対そうなると思ったわ」


 なんと、アリッサさんにこの事態を予想されていたらしい。うーん、何故だ? まあ、とにかくそのおかげで助かったことは確かだし、ここは喜んでおこう。


「それにしても、参加者だけで50人オーバーか……。予想よりも大規模になっちゃったな」


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