187話 やって来る参加者たち
マルカのパーティメンバーに手伝ってもらいながら会場の設営を行っていると、また参加者がやって来る。
「あのー、すいませーん」
「お花見って、ここでいいんですか?」
「すげー、何だこの畑!」
「さすが白銀さん!」
次に来たのはタゴサックとふーか、他数人のプレイヤーたちである。面白い組み合わせだな。だが、話を聞いてみると、料理人であるふーかは、タゴサックの野菜の1番の取引先であるらしい。
トップ料理プレイヤーのふーかと、トップファーマーのタゴサックだ。言われてみればそういう付き合いがあってもおかしくはなかった。
タゴサックたちが連れて来た他のプレイヤーたちは、それぞれがファーマーかコックのプレイヤーであるらしかった。見覚えがある顔が混じっているのは、イベントで同じサーバーだったからだ。
俺は手早く全員とフレンド登録を行って、畑に迎え入れた。
「やあ、今日は誘ってくれてありがとうな。実は料理なんだが、ここで作ってもいいか?」
「え? タゴサック料理できるの?」
「いやいや、俺じゃない。俺たちが提供した食材を使って、ふーかたちに料理を作ってもらおうと思ってな。いいアイディアだろ?」
「確かに」
ふーかたちの料理なら誰も文句は言うまい。むしろ俺も興味ある。設営が無ければ一緒に料理するのにな。
「隅を貸してもらえれば、そこで作るんで」
「なければその辺で適当に」
「スペースはいくらでもあるから、好きに使ってくれ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、お借りします」
ふーかたちはさすがの手際の良さで調理器具を取り出すと、すぐに料理を始める。あの大量の野菜がタゴサックたちファーマーの提供したものなんだろう。パッと見、見たことのない野菜が少しある。
うーん、めっちゃ興味があるんだけど。花見の最中に聞いてみよう。飲みにケーションは社会人に必要なスキルなのだ。お酒が入ったら口が軽くなるかもしれんしね。
「どうも」
「お久しぶりです」
「うわー、ここがあの白銀果樹園かー」
「まさか噂の場所に入れるなんて思わなかったわね」
タゴサックたちの直後に到着したのは、イワンたち高校生ズだった。テイマーのイワンを先頭に、タカユキとツヨシの補習コンビ。第2エリアのセーフティエリアで紹介されたセルリアン、ヒナコの5人である。畑に興味があるのか、しきりに周辺を気にしていた。まあ、プレイヤーメイドの果樹園は確かに珍しいかもね。
「本日はお招きいただきありがとうございます!」
「これ、つまらないものですが」
「お納めください」
それぞれが持ってきた料理をテーブルの上に取り出すと、律儀にお礼を言って頭を下げる。相変わらず礼儀正しいな。俺が同じ年だった時は、もっと馬鹿だったはずなんだけどな。
イワンが連れて来たノームが、オルトやアメリアのノームズと寄り集まって何やらムームー言っている。その後、オルトがノームたちを連れて畑に歩いていった。オルトがドヤ顔で「ムム」と言うと、他のノームが興奮した様子で「ムムー!」と叫んでいる。畑でも自慢しているのかね?
その後ろ姿をアメリアが陶然とした顔で見つめている。まあ、参加者が集まるまで適当に遊んでてよ。
その後にやってきたのが、アカリとジークフリード、イベントで一緒だったコクテンたちの攻略組である。アカリはちょうど数分前にログインしたばかりで、ジークフリードが花見に誘ったようだった。グッジョブだ。
「お久しぶり!」
「ユートくん、久しぶりだね!」
「本日はお邪魔致します」
みんな相変わらずだな。アカリは以前装備していた物よりもさらに一回り大きい巨大な大剣を背負い、どこぞの長期連載漫画の復讐狂戦士みたいな姿だ。メチャクチャかっこいい。
ジークフリードは、サラブレッドと比べるとちょっと小振りな白馬を伴っていた。その銀色の鎧といい、完璧な西洋の騎士である。大げさな身振りも相変わらずだ。
コクテンは相変わらずの腰の低さで挨拶してくる。完璧なビジネスリーマンだ。いい人なんだけど、コクテンに会うと日常を思い出しちゃうよね。自分がこっちだとちょっと気が大きくなっている分、その落差の大きさにハッとしてしまいそうになる。いや、コクテンのせいじゃないんだけどさ。
にしても、アカリとコクテンたちのパーティは、確か前線攻略組じゃなかったか?
「なあ、来てくれたのは嬉しいんだけど、こんなところで遊んでていいのか?」
「なにがだい?」
「いや、攻略組のアカリやコクテンたちが、こういった遊びに参加してくれるとは思わなかったから」
攻略組というのは他のプレイヤーに先んじて効率的に攻略を進めるために、一分一秒を争っているイメージだったのだ。だが、コクテンたちもアカリも、戦闘が楽しいから前線で戦っているだけで、攻略組と言われるほどに先を目指すことに熱心ではないらしい。
騎士のロールプレイを楽しんでいるジークフリードにしても、攻略は目標であって目的ではなかった。
「それに、たまたま近くにいたしね」
「そうそう」
彼らは土霊の試練に挑戦するために、ちょうどこの近辺にいたらしい。タイミングが良かったようだ。
「うーん、賑やかになって来たな」
もう30人を超えてしまった。想定よりも多いな。自分の想定の甘さを悔やんでいると、まだまだ参加者はやって来る。
「やべー、想定があまかったかもしれん……」




