表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/871

181話 日本の心


 ログインしました。


「さて、今日はどうしようかな」


 土霊の試練での採掘と素材収集は一段落着いたし、そもそも俺たちではまだ中ボスにさえ勝てない。ゲットした土結晶は、アシハナとタゴサックに売ることになった。アシハナはソーヤ君も誘うって言ってたし、ちょうど良かったのだ。


 今日は北の町で山羊乳を探したり、できれば第4エリアに向かってみようと思う。別に攻略しようとは思ってないよ? 入り口の付近でコソコソと採取をしたら、新しい作物が手に入るかもしれないと思っているだけだ。


「まあ、まずは畑だな」


 実は昨日のログアウト前に、水霊の街で水耕用プールを買っておいた。東の町に設置したが、水は最初から入っており、意外と使いやすかったな。


 植えた作物は水草だけである。今のところ苔玉にしか使ってないけど。どうやら雑草を使うよりも、水草を乾燥させて使った方が苔玉の品質が上がるらしいのだ。まあ、水耕が必要な作物もそのうち登場するだろうし、今のうちに使用に慣れておくという事で。


「フムム~♪」


 ただ、ウンディーネのルフレが楽しそうに遊んでいたので、どうやら水棲系のモンスターの住処にできそうだった。例えば魚系モンスをテイムしたとして、水槽を買わなくても済むかもしれない。


 ただ、水耕プールよりも期待しているのは、遮光畑の方だ。こちらもキノコの原木やヒカリゴケを増やし、他にも作物の種を蒔いてみたのだが、いったいどうなっているだろうか。


 遮光畑には実験も兼ねて色々と植えてみた。薬草、毒草、微炎草、食用草に、ホレン草、ソイ豆、キャベ菜、白トマト、群青ナスなどだ。野菜に関してはホワイトアスパラガスの様な軟白野菜が作れないかと考えている。


「畑はどうなってるかな~」

「ムッムム! ムム!」

「――! ――♪」

「トリトリリー!」


 畑に足を踏み入れた直後だった。妙にハイテンションなオルトとサクラ、オレアに囲まれた。オルトとサクラはグイグイと俺を引っ張る。オレアは後ろから俺を押すんじゃない! かなり興奮している。これは何か進展があったらしいな。


 俺は引っ張られるがままに、オルト達の後に付いていった。どうやら果樹園に向かっているみたいだな。


「何があったんだ?」


 首をひねっていると、視界の隅を薄桃色の何かが横切った。なんだ? 虫か? 首をひねって確認するとどうやら花びらのようだった。その直後、さらに数枚の花びらが俺の頭に落ちて来た。髪の毛に引っかかった花びらを手に取ってみる。


「この花びらは――」

「ムッムー!」

「――♪」

「トリトリー!」


 どうやらオルト達が案内したかった場所に到着したらしい。なるほど、これは確かにテンション上がるよな。


「ほほおぉぉ……」


 俺も思わずため息を漏らしてしまった。そのまま目の前の光景に見入る。果樹園の隅で花びらを舞い散らせる桜の木の姿には、それだけの美しさが備わっていた。


「ついに咲いたか」

「ム!」

「――♪」

「トリ~」


 たかが雑木のはずなんだが、やっぱり桜は特別だよな。日本人の血には桜を美しいと感じるDNAが組み込まれているのではなかろうか。不意打ちで現れた満開の桜の木を見たら、妙に感動してしまった。リアルだったら涙を流していたかもしれない。


「これで花見の依頼もこなせそうだ」


 それに依頼などなかったとしても、この光景を見てしまっては花見をせざるを得ないだろう。静かにお茶を飲むのも良し、皆で騒ぐのも良し、今からワクワクしてしまう。


 俺はずっと桜を見ていたかったんだが、どうやらオルト達の報告はこれで終わりではなかったらしい。立ち尽くす俺の腕を、3人が再び引っ張り始めた。


「おいおい、まだ何かあるのか?」

「ム!」


 残念だが仕方ない。それに桜はまた後で見れるからな。再び連行された俺が足を踏み入れたのは、設置したばかりの遮光畑だ。地下なんだが、ヒカリゴケのおかげで視界は確保されている。


 せっかく遮光にしているのにヒカリゴケは良いのかと思ったが、オルトが問題ないと首を振っていたので、多分大丈夫なんだろう。


「ムムッ!」

「――♪」

「トリリ~!」

「おお、これは!」


 オルト達が俺を急かした理由が分かった。


「ついに白変種ができたのか!」

「ムー!」


 なんと、赤テング茸の生える原木に、赤いキノコに混じって白いキノコが生えていたのだ。1つだけだが、赤テング茸・白変種だ。やはりきっちりした遮光畑が必要だったみたいだな。


「でも、1つしかできなかったのは何でだ? 遮光したとしても、必ず白変種になる訳じゃないのか?」

「ム!」


 俺の言葉にオルトが頷く。


「なるほど。つまり遮光畑で育てると、低確率で白変種が出来る可能性があるってことか」


 俺は期待に胸を躍らせながら他の作物を調べてみるが、ほとんどは品質が下がっただけで、特に変化はなかった。唯一大きな変化があったのが、ソイ豆である。


「お、なるほどこうなったか」


 なんと、ソイ豆はソイもやしになっていた。どうやら、これはリアルと同じ方法で良かったみたいだな。しかも1つの豆から結構な量のもやしが生えている。意外と量産もできるかもしれない。料理のアクセントに使えるだろう。


「今後はもやしも育てるとしよう。あと、キノコの原木を増やそうかな」


 他の野菜などでも試してみたいし、夢が広がるな。遮光畑を設置して良かったぜ。



レビューを頂きました。とても嬉しいです。

毎回、レビューを頂く度にやる気が湧いてきますね。

これでまたしばらく戦えますwww

ありがとうございました。


作者のもう一つの連載作品「転生したら剣でした」の3巻が明日発売です。

出遅れテイマーともども、そちらもよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ