18話 創意工夫
かなり遅くなってしまいましたが、序盤で経過日数がずれてしまっていた箇所を修正しました。
具体的には、18,19,20話の内容を多少変更しております。
ただ、話の大筋には全く影響がなく、イベントの発生する順番を多少変更しただけですので、
既にお読みの方は改めて再読していただく程の大きな変更は有りません。
さて、傷薬草の調合で得た経験をもとに、次はポーションの作成だ。しかし実験なんて学生時代の化学の授業以来だからな、テンション上がって来た! だが、薬草、陽命草は2つしかない。慎重に行かねば。
「混ぜる前に手を加えてみよう」
以前作ったポーションを思い返すと、ポーションには少し沈殿物があった。あれをどうにか取り除いてみたい。
まずは薬草と陽命草の太い葉脈を、包丁を使って取り除いていく。使うのは柔らかい葉の部分だけだ。
まあ、取り除いた部分に薬効成分が豊富でしたとかいうオチだったら効果が下がってしまうのだが。
次に、浄化水を鍋で沸騰させてみた。いわゆる煮沸ってやつだ。鑑定しても浄化水のアイテム情報に特に変化はないが、調合したらどうだろうか。
この後の手順は傷薬と同じだ。よく混ぜて、魔力を注ぐ。
名称:下級ポーション
レア度:1 品質:★5
効果:HPを40回復させる。クーリングタイム10分。
良し! ★5だ! 何が良かったのかね? 材料自体は、前回★3のポーションを作った時と全く同じものだ。マニュアル作成で品質が1段階上がったのは分かる。あと1つ上がった分は何だ?
「次は浄化水をそのまま使ってみよう」
すると、生み出された下級ポーションは★4のものだった。
「という事は、煮沸に効果があるってことだな」
良い発見をしたな。まあ、掲示板辺りには掲載されている情報だろうが。
やれそうなことはこれくらいか? いや、待てよ? 乾燥の実験をしてみようかな。乾燥させると、株分できなくなる代わりに、調合時に品質が上がる効果があるらしいし。幸い、低品質の毒草、麻痺草。出血草は1つずつ余っている。
「オルト、乾燥って分かるか?」
「ム?」
「分からないか?」
「ム……」
「そうか、分からないか~」
「ム~」
「そう落ち込むなって、俺にだって分からないんだし」
とりあえず、毒草、麻痺草、出血草を、風通しの良いところに置いて実験してみよう。普通、こういう物は一昼夜天日干しすれば、乾燥状態になると相場は決まっている。
「ここなら風通りも良さそうだ」
俺は畑に備え付けられている道具入れの壁に、草を括り付けてみる。日光も当たってるし、まあ大丈夫だろう。
「乾燥にスキルとか道具が必要だったら、全くの無駄になるけどな」
草は今後いくらでも増やせるし、実験に使っても惜しくはない。
「さて、農業ギルドに行きがてら、地図を埋めていこう」
俺は地図を埋めるべく、始まりの町を歩き回る。とりあえず、畑がある南区から埋め始めてみよう。途中、農業ギルドでホレン草の納品も忘れない。これでマッピングクエストを終わらせたらギルドランクがアップするはずだ。
「よーし、頑張ってマップを埋めよう!」
歩き始めて4時間。南区は半分くらいは埋まったか。
「うーん。思ってた以上に広いな」
単に端から端まで歩くだけだったら、1時間もかからないだろう。だが、全ての道を歩いて地図を埋めるとなると、想像以上に時間がかかった。
それでも歩き続けられたのは、単純に面白かったからだ。昼間に歩いてみると、町のリアルさがよく分かる。細かい部分まで作りこまれ、リアルにヨーロッパ旅行に来ている気分に浸ることができた。
「お、もうこんなところか」
いつの間にか獣魔ギルドのそばまで来ていた。全然気付かなかったよ。
西区と南区の境界という、辺鄙な場所にあるあたり、獣魔ギルドの地位の低さがうかがえるな。
俺は気まぐれにギルドに入ってみることにした。周辺の景色が美しいと言っても歩き通しだったし、何か変化が欲しかったのも確かだ。
「こんちわー」
「獣魔ギルドにようこそ」
出迎えてくれたのは黒髪美人のバーバラさんではなかった。金髪のグラマラスなアメリカ系美人さんだ。そばかすがチャーミングだね。
「あれ、バーバラさんは?」
「バーバラは休憩中だから、今はいないわよ」
そうだったのか。てっきりRPG系のお約束で、イベント関連のキャラは24時間変わらないと思っていた。普通の受付が変化するのは知ってたけどさ。まあ、リアルに再現しようとしたら、NPCだって休憩取るよな。
「ギルドに来たんだし、一応クエストの確認くらいはしてくか」
前回来たときは、隅々までは確認しなかった。半日で新しいクエストが追加されるとは思えないが、何か目新しい発見があればいいんだけどね。
「うーん、やっぱり新しいクエストはなさそうだ」
ただ、いくつか気になったクエストがある。前回はスルーした、達成条件が少々面倒そうなクエストたち。
「これとか、マッピングしながらでも行けそうなんだよな」
労働クエスト
内容:町のゴミ拾い
報酬:300G
期限:3日間
詳しく調べてみると、獣魔ギルドで世話をしているモンスターが散歩のときに食べてしまうので町のゴミ拾いをしてほしいという、なんとも気の抜ける内容の依頼だった。散歩の時にゴミを拾い食いするって、犬か! まあ、受けるけどね!
クエストを受領すると、受付で背負う背負子タイプのアイテム袋と、トングを貸してもらえた。これで拾えという事か。
「じゃあ、お願いしますね。ノルマは100個ですので」
「了解です」
とりあえず、ギルド周辺を探してみようかな。そもそもゴミってどんな物なんだ? 空き缶でも落ちてるのかね?
すると、ギルドの前に何か落ちているのが見えた。普通に歩いていたら見逃すのは間違いない、小さな石ころだ。
「これがゴミか?」
ゴミ拾いクエストを受けたことで、ゴミに緑マーカーが表示されるようになったらしい。しかも他の石ころには緑マーカーは表示されていない。どうも闇雲にゴミを拾えばいいわけではないらしい。
「よし、マッピングしながらゴミ拾いだ」
VRゲーム機の中でゴミ拾いとか、どんだけ地味なんだって話だ。だが、これも経験値と貢献度のためだ。




