表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/871

172話 ここは天国だったらしい


「やーん!」

「か、かわいいっ……!」


 ノームの長に出会ったアメリアとウルスラの第一声がそれだった。こいつら、本当にノームが好きなんだな。長はちょっと困った顔で、歓迎のあいさつをしてる。


 イワンとオイレンは真面目に話を聞いているが、アメリアたち女性陣はスクショを撮りまくりだ。これ、街に連れて行っていいのか? ノームさんたちがピンチなのではなかろうか? 善良な一般ノームさんをストーキングしたりしないよな?


 NPCに対する盗撮はスクショシステム上許されていると言ってもいいが……。勢い余って攫ったりしないだろうな? でも、犯罪行為をしたら普通に衛兵に捕まるだろうし、そこは自業自得か。


「うう。長ちゃんのお尻可愛い」

「ああ、あの髪の毛に顔を埋めてクンクンしたい……」


 長に街まで案内してもらっている間もこんな感じである。本当に大丈夫だよね?


「おい、イワン、オイレン。いざという時はお前らが止めろよ?」

「ええ? なんで俺たちなんすか?」

「無理ですって」

「だって、お前らパーティメンバーじゃないか。いざという時は連帯責任だろ?」

「り、臨時パーティですし」

「そうそう」

「でも、今はパーティじゃないか。俺はパーティもチームも組んでないから無関係だ」


 いざとなったら見捨てるからね?


「あ、ずるい! 責任逃れだ!」

「ふっふっふ、これが大人というものだ」

「大人はズルいよ!」

「ズルくなくては社会を渡っていけないのさ」


 オイレンとそんなやり取りをしている内に、土霊の街へ到着だ。そこでアメリアたちのテンションが爆発した。今までも高いと思ってたけど、あれでもまだマックスではなかったらしい。


「うっきゃぁぁぁぁーっ!」

「ノーム天国よ! 私たちはついにたどり着いたんだわ! 約束された地へと!」

「あそこにもあそこにもあそこにもあそこにも! ノームちゃんがたくさん! ノームパラダイス!」

「あああ! このパライソに永住したい! ホームは売ってないの? 幾らでも出すから!」

「あわわわわわ、どこからスクショしたらいいのか!」

「はぁはぁ……。ノームたん、触りたい……」


 はい、ウルスラの最後の一言アウトー! 俺はオイレンたちに視線を送ったが、2人とも首を横に振って諦め顔だった。俺だってアメリアたちを止める自信はないけどさ、そこは頑張ってくれたまえ。


「ねぇねぇ! 最初はどこから行く?」

「案内してくれるんですよね?」

「できるだけ可愛いノームちゃんがいるところがいいな!」

「何言ってるのよアメリア。ノームは全員可愛いわよ!」

「た、たしかに!」

「全員平等にハスハスしなくちゃ!」


 気軽に案内を引き受けたのは失敗だったかもしれない。というか、ウルスラがヤバい。軽いおねーちゃんだと思っていたが、ノームに向ける目がちょっとヤバイ気がするのだ。


「ま、まあ、順番に案内していくから」

「お願いしまーす!」

「オルトちゃん、お姉ちゃんと手繋ぎましょう?」

「ム?」


 フレコを交換してしまったから、ウルスラもオルトに触ることができるんだった! や、やべー、大丈夫か?


「ああああ! 可愛い……!」

「ずるいウルスラ! 私も私も!」

「ムムー!」

「私は右? ありがとー! オルトちゃんまじ紳士!」

「ちっちゃいお手て……」


 オルトがサイドを女性2人に挟まれて手を繋がれる。まるで捕まった宇宙人みたいな状態だが、オルトが楽しそうだからいいか。ウルスラも人のノームに変なことをする程、道を踏み外してはいない様だし。オルトを見つめる目は完全に逝っちゃってるけど。


「あ、じゃあ俺はルフレちゃんと――」

「却下!」

「ですよねー」


 オイレンめ、油断も隙も無い。ここはクママとリックのアニマルペアで我慢してもらいましょう。


「クックマ」

「キキュ」

「慰めてくれるのかお前ら……。あ、でもこれはこれで癒されるかも」


 リックのモフモフ尻尾の魅力にやられたようだな! ほっぺに当たるあの魅惑のモフモフの前には誰も抗う事はできんのだよ!


「ランラ~♪」


 イワンの肩にはファウが乗ってリュートを爪弾いている。イワンは邪なところが全然ないので、このくらいは許してやろう。オイレン、そんな物欲しそうな目で見るな! お前には指一本触れさせんからな!


「じゃあ、まずは軽く店から案内するよ」

「お願いします」


 と言う事で、順番に各店舗に連れて行き、商品ラインアップの説明もする。最後に連れて行ったのがホームオブジェクトの販売店だが、皆が思いのほか食いついていた。


「なあ、設置する場所があるのか?」


 俺の疑問はそこに尽きる。畑を持っている俺ならともかく、皆はオブジェクトを設置する場所があるのだろうか?


「今はないですけど、家を借りようかどうか迷ってますからね」

「テイマーは特に」


 詳しく聞いてみると、第3エリア以降には借家やアパートが存在しており、それを借りることができるんだとか。テイマーには庭がある物件が人気で、牧場に預けずともモンスを常駐させられるようだった。


 俺の納屋と違って借りているだけだが、その分初期から内装などが豪華で、しかも改造も許されているので利用しやすいらしい。自分だけの拠点を持ちたいプレイヤーもいれば、倉庫代わりに使うプレイヤーもおり、そこそこ需要はあるようだ。


 納屋はインテリアを少し飾ったりは出来ても、間取りや初期配置の家具を動かしたりはできないからな。現実とは違って、借家の方が自由度が高いらしい。


 俺には使えないので全然気にしていなかったけど、たしかに室内用のホームオブジェクトも複数存在している。


 アメリアとウルスラが食いついているのはノームの置物だ。複数のポーズはあるものの、効果は無し。完全な美術品扱いである。君らこの後、本物のノームをテイムするんだろう? その置物、本当に欲しいのか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ