167話 ホームオブジェクトゲット
ログインしました。そして、同時に聞こえるお馴染みのアナウンス音。
ピッポーン。
《アップデートのお知らせです》
以前から告知されていたアップデートの確認だった。少し大きめのアップデートらしく、明後日のゲーム内時間で2時~10時はログイン不可能となるらしい。
様々な仕様の変更に加えて、今後は毎週月の日に開催されるオークション機能の実装が大きな目玉だろう。と言っても、まだプレイヤーの出品は出来ないらしい。今週はNPCが出品したアイテムを落札するだけなんだとか。
金欠だったからあまり期待はしていなかったが、かなりの報酬があったからね。明日の夜には最低でも25万Gが追加されるわけだし。これは楽しみになってきた。オークション用に少しお金を残しておかないとな。もしかしたら何か掘り出し物があるかもしれない。
明後日に開催されるオークションは2種類。1つが始まりの町で開催される、その場で入札額を入力して行って短時間で決まる、いわゆるオークションと言われて想像するタイプの競売。
もう1つがオークションサイトの中から自分が欲しい物に入札をしていき、制限時間終了時に最も高額で入札していたプレイヤーに販売されるネットオークションに近い形態の物だ。
「何か面白い物が買えるといいな」
それよりも、今はホームオブジェクトだ。その前に買い物と農作業を済ませてからだけどね。
「皆、おはよう!」
「ムッムー」
「――♪」
「キキュ!」
「クマ!」
「ヤー」
「フム~」
「トリー!」
うーん、改めて見ると、俺の従魔も増えたな。恒例の並んで敬礼ポーズにオレアも加わって、壮観な眺めだ。思わずスクショしちゃったよ。
俺はその後、皆に畑仕事を任せて、買い物に出かけることにした。連れて行くのはルフレだけだ、発酵樽を買うつもりだからね。ルフレがいてくれた方が良いだろうという判断だ。
アリッサさんから情報を買った、始まりの町の醸造屋で発酵樽を探す。確かに以前は見えなかった店があるな。
「おおー。これが発酵樽か」
「フム!」
見た目は醸造樽とあまり変わらんけど、鑑定すればはっきりと発酵樽と表示される。これでより高品質の調味料が作れるだろう。この後、北の町で山羊乳を買えばヨーグルトにチーズが作れるだろう。あとは……山羊乳酒とか? 確かモンゴルに馬乳酒って言うのがあったはずだ。以前、エスニック料理屋で飲んだ事があるけど、正直口に合わなかった。
「まあ……しばらくは作らなくていいか」
「フム?」
「ルフレ、ヨーグルトとチーズは任せた!」
「フム!」
発酵樽を購入した後は、ルフレと一緒に北の町の牧場で山羊乳を買った。で、帰りにイベント村のアルバさんの牧場に立ち寄ってみた。
牧場の柵の中には牛がいる。これが発見されていないのはどうしてなんだろうな?
「すいませーん」
「はいはい……。おや、いらっしゃいませ。お久しぶりです」
受け答えも普通だ。試しにチーズや牛乳を売ってもらえないか交渉してみる。だが、牛乳は売ってもらえなかった。村に売る分しかないらしい。余剰分は全てチーズにしているんだとか。まあ、仕方ないか。
俺はチーズだけを購入して牧場を後にした。山羊乳はあるから、ヨーグルトはそっちを使おう。
始まりの町へ戻ってからは皆と一緒に畑仕事に精を出す。そして、全ての仕事を終わらせ、水霊の街へと向かう準備を整えていた。
「オレアは一緒に行けないけど、畑の管理はよろしくな?」
「トリリ!」
「敬礼がお気に入りみたいだな。あと、無人販売所の補充も頼むぞ?」
「トリ!」
なんと、オレアは無人販売所の補充業務も出来たのだ。まあ、これも畑の管理と言えばそうだしね。始まりの町に無人販売所が設置中であれば、オレアに任せることができるのだ。なので、今後は出来るだけ始まりの町に常駐させようと思う。
水霊の街の入り口で、ウンディーネの長に挨拶をして街に入る。
「またお邪魔します」
「よくぞいらっしゃいました」
「フム~♪」
サクラは大樹の精霊様に会わせてあげたら好感度が上昇したからね。ルフレやオルトも同じかもしれない。実際、ルフレは長に頭を撫でられて嬉しそうにしているし。
街では食材をささっと大量に買い込み、ホームオブジェクトのリストを見ながら頭を悩ませる。
「スプリンクラーは買っておこう。井戸は……どうしようか」
清水という、井戸水より少し上等な水が無限に湧く井戸なんだが……。畑にはもう普通の井戸はあるんだよな。畑に使ってもいいのかもしれんが、うちの畑はオルトのおかげで品質がほぼ上限だし。水耕用のプールもまだ使えない。
「井戸はまた今度にしよう。となると今必要なのはスプリンクラーだけだな」
始まりの町にはオレアがいるから、スプリンクラーは東の町に設置することにする。3万Gか。思ったよりも安く済んでしまったな。まあ、無駄遣いするよりはいいだろう。
さて、お次はいよいよ土霊の街だ。俺にとったらこっちが本命だからな。気合を入れて買い物するぜ。こちらでもノームの長に挨拶しつつ、街へと入る。オルトからは従魔の心をもらっちゃったから意味があるかわからないけどね。
「さて、土霊の街のホームオブジェクトは全部欲しいんだよな」
特に欲しかったのが、畑の品質上限を上昇させるというワームボックスだ。ただ、これ畑10面にしか効果が無いんだよな……。現在、雑草用の畑が20面だから、それでも40面だ。いや、買えちゃうんだが、どうしよう。
他のを見繕ってから考えてみるか? 2万Gの腐葉土箱は始まりの町と東の町分、2つ欲しい。4万Gの地下用の遮光畑は1つでいいかな? 6万Gもする下級鉱石を自動で生み出してくれるホームマインも、とりあえず1つでいいだろう。下級って言うのがどの範囲なのか分からないのだ。
ここまでで14万Gだ。ワームボックスを4つ買って。合計22万。土結晶のクワを3万Gで購入しても、手持は50万弱である。問題ないな。と言う事で、俺は欲しい物を全て購入してしまう事にした。
お金を使い果たした後、金銭感覚を元に戻すのに苦労しそうだぜ。
「畑に戻る前に、1回ダンジョンにアタックしておくか」
「ム!」
その後、ダンジョンから脱出して自然回復を待つ間に畑に戻り、オブジェクトを設置すれば効率がいい。今日はノームからの土結晶ドロップを狙い、ダンジョンアタックに費やすつもりだ。効率的に行動しないとね。
「よし、まずは本日1回目のトライだ」
「ムッムー!」




