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149話 無人販売所再び


 ルフレの好みが分かった後、俺は様々な料理に挑戦してみることにした。さっき作った魚料理の量産に、新たなピザやみそ汁の開発。


 デザートもちょっと作ってみた。とは言え砂糖が無いので、ハチミツの甘みを生かした物に限られるけどね。チーズもあったので、クリームチーズケーキに挑戦してみたら何とか上手くいったらしい。


 おかげで料理のレベルが4つも上昇した。レベル20で覚えたアーツは粉砕。その名の通り、食材を粉々にできるアーツだ。肉ならミンチ、野菜などならすり下し、食用草は粉末にできた。料理がより楽になりそうだ。


「にしても。ちょいと造りすぎたな……」

「フム」


 余った食材なども色々と使ったせいで、簡単な物から手の込んだ物まで、全部で45種類。70個程出来てしまった。いや、ルフレは料理の腕もいいから、一緒に料理するのが楽しいんだよね。これを俺だけで消費するのは無理だ。どっかで売るとか?


「そうだ、無人販売所! あれで売れるんじゃないか?」

「フム?」

「ついて来いルフレ!」

「フム~」


 俺はルフレと一緒に農業ギルドへダッシュした。


「すいません」

「おう。何の用だい?」

「無人販売所を出したいんですが……。今、始まりの町でも使ってるんですけど、こっちの町でも利用できますかね?」

「無理だな。お前さんのギルドランクだと1つしか出店できん。始まりの町の販売所をこっちに持ってくることは可能だが、どうする?」


 どちらにせよ、始まりの町の販売所じゃ今はサクラの木工用品を適当に並べているだけだ。だったらこっちに移動させるのも悪くないかな?


 どうせ始まりの町にはしばらく戻れないし。いや、自力で戻ればいいけど、時間がかかる。そして、転移は金がないので使えない。


「直ぐに移動できます?」

「ああ、任せとけ」

「じゃあお願いします」

「おう! 手伝いは雇わなくていいのかい?」


 一番安いNPCなら1日100Gで雇えるが、農業Lv1しかスキルを持っていない。正直、雇う意味が無かった。


「うーん。今は良いです」


 早速畑に戻ってみると、お馴染みの無人販売所が第1畑の前に出現していた。相変わらず仕事が速いぜ。


「さて、中は……」


 やはりサクラの木工品が登録されている。結構売れてるな。残り僅かだ。前の無人販売所がそのまま移って来たってことなんだろう。


「さて、料理は何を登録するかね……。お? 登録できないのもあるな……」


 ほとんどの料理に自家製の野菜かハーブを使っているので、登録できないことはないと思うんだが。


 サクラの木工品は畑で穫れた雑草を使った雑草水で色付けをしていたので、無人販売所に登録できた。なので、畑で収穫した物を1つでも使用していれば登録できると思ってたんだけどな……。


 ちょっと調べてみよう。軽く掲示板をのぞいてみる。すると、ちょうど無人販売所について語る掲示板があった。


「うーん? ちょっと違うな」


 ここは俺の求めていた掲示板じゃなさそうだ。無人販売所を使う側ではなく、買う側の情報交換掲示板だった。少し興味があったので軽く読んでみると、なんか俺の事が書いてある。自分が掲示板に書かれてるのを初めて見たけど、なんか変な感じ。


 悪口が書かれてないか、ちょっとドキドキしながら掲示板を読んでみると、ハーブティーの茶葉の販売を最初に始めた伝説的販売所とか書かれていた。思ってたよりも大事でした。そしてその伝説的な販売所が無くなりました。すいません。


「……他の掲示板見よう」


 探して回ると、ようやく発見した。考えてみたらファーマーしか使えないんだから、それ系の掲示板を見れば良かったんだよね。


 その中で、「登録できる物とできない物があるけどどうなってるんだ」という疑問を語り合っていた。


 その掲示板によると、単に1種類だけ自分の畑で穫れた物が含まれてれば良いと言うものではないらしい。完全に検証されたわけではないようだが、3~4割ほどは含まれていないといけないようだった。サクラの木工品で考えると、木材、水、雑草の内、雑草が畑の産物なので、33%が畑産と言う事になる。


 料理にもその法則が当てはまっていた。魚介系の具材をたくさん使い、バジルルしかハーブを使っていない「魚介類の煮物」は登録できなかったが、魚を複数のハーブで焼いた「川魚のハーブソルト焼き」は無人販売所に登録出来たしな。


 今後、畑で穫れた材料で調味料を作り、それを料理に使用すれば登録できる商品はもっと増えるかもしれない。まあ今は登録可能な品をとりあえず登録しちゃおう。ああ、勿論ルフレの食事用の魚料理は残すよ?


「ルフレ。好きなのを5つ選べ。それは売らないから」

「フム! フム~……」


 ルフレが真剣な顔で料理を選んでいる。俺はその間に魚料理以外を登録することにした。


 他にもフルーツジュース、ナッツクッキーは残さないとね。他の料理の中で値段が中くらいの物から選んで登録していく。値段は以前の反省を生かして、付けられる最高額を付けておいた。1つ800~1500Gくらいだな。


「ピザ、豚汁、カルツォーネ、ミックス野菜ジュース、チーズケーキ……お?」


 登録できる商品が5個から6個に増えていた。多分、ギルドランクが上がったからだろう。


「じゃあ、野菜のアヒージョにしておくか」


 でも、料理はちょっとずつ素材を変えて作ったせいで、同じ物が1つとしてない。そのせいで、各種1つずつしか登録できなかった。


 まあ、売れたら儲けくらいの感覚だからそれでもいいけどね。いや、待てよ。もしかしてNPCに任せられないか? 雇ったNPCに、売れたら補充してもらえばいい。1つでも売れれば元は取れるし。いやいや、売れるかどうかも分からないし……。


 なんてことを考えていたら、販売所の前に数人のプレイヤーが立っていた。明らかに俺と販売所を見ている。


 え? お客さん? もう? 早くね?


「あのー、見ていいですか?」

「は、はあ。どうぞ」

「やった! 噂の白銀さんの販売所が利用できるなんて!」


 噂の? いや、さっき掲示板で色々と書かれてたし、おかしくはないか。にしても、1発で俺だってバレても全然驚かなくなってしまった。うちの子たちは目立つし、もう仕方ないもんな~。


 ただ、心配が1つ。ハーブティーとか木工品を期待してきてくれてたら、完全に期待外れである。ややお高めの料理が売られているだけだし。無人販売所から離れて畑仕事をする振りをしつつ、ドキドキしながらプレイヤーたちをコッソリ見ていたら、話し声が聞こえて来た。


「こ、これは……白銀さんの新作か?」

「ま、まじ? 見せて」

「おお、すげー。これがイベントを勝利に導いたという、ピザと豚汁?」

「ちょ、買い占めんなよ!」

「俺が一番に来たんだぞ!」


 良かった。怒っている風ではなさそうだ。それに、料理はまだまだ珍しいらしく、売れないこともなさそうだった。


「これは、NPCを雇った方がいいかもな」


 俺がずっと畑にいられる訳じゃないし。ログアウト中も売れたら、少しは資金繰りが楽になるかもしれん。


 俺は無人販売所の前で盛り上がっているプレイヤーたちを横目に、農業ギルドへと急ぐのだった。


本日、作者のもう1つの作品「転生したら剣でした」のコミカライズ最新話がデンシバーズにて公開されますので、そちらもよろしくお願いします。

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