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145話 素材売却


 ボスである岩石巨人を撃破した俺たちは、第3エリア、東の町へと到着していた。


「おおー、結構大きいじゃないか」


 始まりの町に比べたら小さいと聞いていたが、パッと見それほど変わらないな。道の広さや、壁の高さも同じくらいだし、門も同じくらいの大きさだった。


「まずは農業ギルドだ」

「ムム!」

「――♪」


 一番の目的である畑を買わないとね。ただ、初めての町なのでギルドの場所が分からん。


「仕方ない、ちょっと歩いて探すか」

「クマ!」

「キュ!」

「皆も探してくれよ」

「ヤー!」

「フム~!」


 リックはクママの頭の上、ファウはルフレの肩に乗っている。


 ファウの奏でる軽快な音楽に合わせて、うちの子たちがスキップしながら歩く。ルフレも一緒である。もう馴染始めているようだな。良かった。


「なあ、あれって――」

「え? また新しい――」

「まじか白銀さん――」

「も、萌え――」

「さすが――」


 おっと、ちょっと騒ぎ過ぎたらしい。四方八方からめっちゃ見られている。天下の往来でうるさくしてすんませんでした。俺は皆を急かして小走りでその場を脱出する。


 その後も妙に注目されながら入り口から続く大通りを歩いていると、中央に綺麗な噴水のある広場に出る。綺麗な西洋風の広場だ。


 そこで、俺は意外な顔を見つけていた。


「あれ? シュエラじゃないか。セキも」

「やほー。白銀さんもついに第3エリアに到達したね~」

「久しぶりだ」


 以前防具を売ってもらった裁縫師と皮革師のコンビ、シュエラとセキだった。


「めっちゃ可愛い子連れてるわね。新しい従魔?」

「ウンディーネのルフレだ」

「また色々と注目浴びそうな……。それにしても、その衣装イカしてるわね。私もシースルー系の衣装を作ってみようかしら」

「そっちも相変わらずぶっ飛んだ格好してるな」

「えへへ。可愛いっしょ?」


 シュエラの姿は身長140センチのロリ少女だ。以前と同じピンクのロングツインテールに、右目に髑髏の眼帯。ただ、恰好が赤とピンクのどぎつい彩色のミニスカメイド服に変わっている。


 シュエラがその場でくるりと一回転した。メイド服の裾が一緒にくるりと回り、あざと可愛い。その趣味の人間であれば「萌えー!」とでも叫んでいるだろう。


「まあ、可愛いかな?」

「なんで疑問形かなー?」


 あざとく小首を傾げるシュエラに、セキがぼそりと呟く。


「中身がBBAだとばれているからだろ」

「お前がばらしたんだろうが!」


 セキとのやりとりも相変わらずか。


「で、どう? 装備を新調したりする気はない?」

「いやー。まだいいかな」

「そうよね。それ、第4エリアでもギリギリ使えるレベルだしねー」


 そもそも、このローブは水霊の試練に挑むには適している。ダンジョンにいた時には忘れていたけど、水耐性に水中適応が付いているからな。


 掲示板をのぞいたら、普通のローブで水に入ったらもっと泳ぐのが難しいらしかった。それに、水耐性がなかったらとっくに死に戻っていたかもしれない。このローブを買っておいて本当に良かった。


「今のところは間に合ってるよ」


 とは言え、クママやリックは専用装備がないので、多少は気にしたい。クママの装備は腕力上昇がある物の、防御力は普通だしな。


 でも畑を買う前に装備品にお金はかけられない。水霊の街でも大分散財しちゃったし。むしろ、素材を売ってお金を稼ぎたいくらいだ。


 俺は道中で手に入れた素材を見せてみる事にした。高く買ってくれるなら売っても良い。どうせまた行けば手に入るしね。


「なあ、この素材を見てくれないか?」

「お、何か面白い物ある?」

「まずはこの辺だな」

「あー、岩石巨人の素材かー。レアドロップの岩石巨人の魂もないし、全部で4000Gってとこかな」


 やはりそんな物か。事前に聞いていた通りだな。売ってしまってもいいか。お次は第2エリアの素材である。


 リトルベアやワイルドドッグの毛皮等に、ハニービーやグラスホッパー、スローモスの羽と甲殻だ。こちらは裁縫や皮革にも使える為、シュエラたちも喜んでくれた。それなりに数もあり、全部で11000Gである。悪くはないな。


 最後に取り出したのが、水霊の街の素材である。ポンドタートルから得た池亀の甲羅の欠片、池亀の爪、ファング・グルーパーからゲットした牙大魚の鱗、牙大魚の牙の4種類だ。食材は自分で使うので見せてはいない。あと、レアドロップと、錬金、調合で使える水霊素材と池亀の水袋という素材も手元に残しておいた。


 それでも、素材を見たシュエラの表情が真剣な物に変わる。結構高く売れそうかな? そう思っていたら、シュエラが詰め寄って来た。


「これ、どこで手に入れたの!」

「え? いや」

「ねえ! これ――」


 その剣幕にビビッていたら、セキがシュエラを止めてくれた。


「おい。なに盛大にマナー違反してる」

「うう、だって~」

「お前、こないだも同じことやって客を逃がしたの忘れたのか?」

「ちぇ~。じゃあさ、同じの手に入れたら絶対にうちに持ってきて! ね? シュエラちゃんからのお願い~」


 シュエラは胸の前で手を組むと、ウルウルとした目で俺を見上げた。可愛いね。まったく心は動かされんが。


「いや、他にも付き合いがあるから」


 ルインの所なんかにも持って行かないと。


「くっ。私の必殺技が通用しない!」

「だからそれを止めろと言ってるんだ。引っかかる奴よりも、呆れて帰っちまう奴の方が多いだろ」

「むー! 何でみんなシュエラちゃんの魅力が分からないかな!」

「あざとすぎるからだろ」


 まあ、確かにね。ここまであざといと、逆に冷める。見てる分には面白いんだけどね。ひっかかる奴も、分かっていて引っかかっているんじゃなかろうか?


「とりあえず、これはどれくらいで買い取ってくれる?」

「……そうね……。全部で25000Gでどう?」

「え? まじで?」


 レアドロップは入っていないのに、1体3000G強ってことだ。ボス並だぞ?


「かなりおまけしたからね! 次もうちに持って来たくなったっしょ?」


 なるほど。ただ、これで高いルアーを1つ失っても、ファング・グルーパーを狩る価値があることが分かった。


「新素材は色々試したいし、かなり良い装備が作れる予感がするわ!」

「確かにな。魚素材は珍しいし、きっと良い値がつくぞ」


 まだまだ売れそうだし、用事を済ませたらまた水霊の街に戻ろう。



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