143話 鬼女→美女
狂った水霊2体を命からがら撃破した後、ファング・グルーパーを釣り上げて撃破する事3体。これで全てのファング・グルーパーを倒したんだが……。食べた奴を撃破してもルアーは戻ってこなかった。失った時点で消滅しちゃうんだろう。ちくしょう。
にしても、もし水中を進んできてたら、計5体と戦わなくてはいけなかったってことだ。確実に全滅してたな。攻略するには水中の探索が必要そうだが、そのためにはより難度が高い戦闘をこなさなきゃいけないってことだろう。
「俺たちにはしばらく関係ないか。今は脱出が先だ」
俺たちは入り口に向けて撤退を開始した。まあ、戻るだけならすぐなんだけどね。
「うん? なんで? ええ?」
ダンジョンに入るのが初めてだったせいで全然知らなかったが、どうやらフィールドのようにモンスターがリポップするらしい。
なぜ今更そんな事を確認しているのかって?
「アアアア!」
倒したはずの狂った精霊が目の前に居るからだよ! くそ、釣りに時間をかけ過ぎたか。
「いくぞ!」
今回も俺が大ダメージを喰らうだけで何とか倒せたな。なんか、俺ばっか死にかけている。ただ、そのおかげで1つ分かったことがあった。
「ムー!」
「おお? もしかして回復魔術? オルト、覚えたのか!」
「ムム!」
どうやら20レベルで土魔術のアースヒールを習得したらしい。これで回復手段が増えた。ダンジョンを死に戻りなしで脱出できる確率があがったな。
「この部屋、また魚がいるな」
1部屋につき、1時間くらいでリポップか? 狂った水霊さえいなければ部屋を延々行き来して魚狩りが出来るのに……。
まあ、今日の所は帰り道の奴だけ狙っていこう。俺たちは再びファング・グルーパーを1匹釣り上げ、止めを刺した。やはり超弱い。なのに経験値はそれなりで、俺、サクラ、クママもレベルアップできた。ファウに至ってはもうレベルが10だ。やはり魚はおいしい。
サクラは盾術というスキルを習得し、樹精の小盾という装備も獲得している。より守備力が上昇したのだろう。これは非常に助かるな。
「皆、この先もモンスターが復活してるはずだ。気を抜くなよ!」
その後、俺たちはポンドタートル1体を撃破し、最初の部屋に戻って来たんだが――。
「あれ狂った水霊だよな……? でも、羽衣の色が変なんだけど」
他の水霊が水色地に薄緑の模様が描かれた羽衣なのに対して、この水霊は薄水色地に藍色の模様が描かれた羽衣を身に着けていた。
髪の毛の色も、他の狂った水霊に比べて明るめかな?
「もしかしてユニーク個体か? よ、よりにもよってこんな時に……。でも、やるしかない! 今回も麻痺狙いで行くぞ! クママとオルトはタゲ取りを頼む!」
「クマ!」
「ムー!」
そして激戦が始まった。なんとこの水霊は範囲攻撃を持っており、俺とオルトは回復に追われてしまったが、リックとサクラは麻痺攻撃を繰り返す。だが、途中で白梨が底をついてしまった。
あとはサクラが頼りだ。水霊の激しい攻撃に耐えつつ、諦めずに戦闘を続ける。
途中で1回マナポーションを使い、回復を継続させながらもなんとか俺たちはこの水霊を麻痺させることに成功していた。あとは皆で総攻撃を加え続けるだけだ。
「よし、あとちょっとだ!」
もうポーションも傷薬もないので、これ以上戦闘が長引くのは怖い。だが、ユニーク個体の狂った水霊のHPを残り1割ほどに削ったところで気づいてしまった。
「テイムのチャンスだな……」
そうなのだ。麻痺している上、HPも残り僅か。テイムのいい対象だ。だが、もしテイムできずに麻痺が解けたら?
オルトのMPは残りギリギリで、回復はもうできない。俺も、テイムにMPを割いたら、回復は難しいだろう。ポーションもない。
範囲攻撃をくらったらHPが半減しているファウ、クママは確実に死に戻る。オルトも結構ピンチかもな。
ただ、狂った水霊のユニーク個体だ。これは逃すには勿体なさすぎる。
「……よし、危険覚悟でここはテイムを狙おう! みんな、攻撃一旦止め!」
「ムム!」
「もし麻痺が解けて死に戻ったらごめんな!」
「クマ!」
「ヤー!」
クママとファウが気にするなとでも言うようにサムズアップしてくれる。ええ子たちやで! ということで、俺は手加減で水霊のHPを限界まで削り、テイムループへと突入した。
「テイム。テイム。テイム。テイム――」
うちの子たちがいつでも攻撃できる準備をしながら、固唾を飲んで見守る。俺はテイムを繰り返すが、一向に成功しない。やはりレベルが上でユニーク個体。一筋縄じゃいかないか。
俺は彫像のように固まり、山姥の彫像のように見える狂った水霊にテイムを繰り返した。
「テイム! テイム! テイム――」
全然テイムできないな! それでもテイムを繰り返していると、なんと水霊の麻痺が解けやがった!
「アアアア!」
「やっべ!」
範囲攻撃じゃ無くて助かったが、いきなりぶん殴られて、俺のHPがレッドゾーン突入である。くそ! これでテイムできなかったら総攻撃するしかない!
「テイム!」
「アアア――……」
水霊の体が一瞬輝きに包まれる。おおおお? 上手くいったのか? やばかった……。まあ、結果良ければすべて良しだ!
「フム♪」
変わったね~。鬼女みたいな顔だった狂った水霊が、町にいたウンディーネたちと同じような美少女に変化していた。
身長は130センチくらいで、サクラと同じくらいだ。中学生くらいに見えるな。ひまわりの様な明るい笑顔でニコニコと俺を見つめている。
名前:ルフレ 種族:ウンディーネ 基礎Lv15
契約者:ユート
HP:40/40 MP:58/58
腕力7 体力7 敏捷10
器用16 知力15 精神11
スキル:醸造、水中行動、調合、釣り、発酵、水魔術、料理
装備:水霊の杖、水霊の羽衣、水霊の髪飾り
名前はルフレ。やはりユニーク個体だった。というか、醸造があるんだけど。料理も。これは今後すっごく役立ってくれそうだ。
コマンダーテイマーの能力である編成従魔+1の効果で、ルフレもそのままパーティに加えられる。
ただ、懸念が1つ。
「なあ、ルフレ」
「フ?」
「お前の水魔術、戦闘に使えるか? 攻撃魔術を撃てるかってことなんだが……」
「フムー……」
「ああ、やっぱ無理なのね」
「フム」
オルトと一緒で生産特化型でした! まあ、そうだとは思ったけどね! 杖を持ってるし、オルトと並んで壁役を頑張ってもらえばいいか。
「よし、みんな自己紹介しろー」
「ムーッムムー!」
「――♪」
「キュッキュ~」
「クマクマクマー」
「ヤー!」
「フム~♪」
また賑やかになったな。にしても、また可愛いタイプ……。なんでだ? しかも人型だし。俺がこのゲームを始める前に思い描いていたテイマーって、もっとこう獣や鱗まみれの硬派なイメージだったんだけどな。
俺、完全に可愛い子を狙って集めてる軟派野郎だって思われてるかね。うーん、狙ってるわけじゃないんだけどな~。まあ、そこは仕方ない。土竜の卵が孵れば、きっと格好いい系になってくれるはずさ。
「よーし、とりあえずダンジョンから脱出するぞー」
何せ、死にかけだ。ルフレのスキルの検証は外に出てからだな。
「これからよろしくなルフレ」
「フム~♪」
ルフレの外見は、身長130センチ、中学生程度とさせていただきます。
色々と迷って変更を繰り返してしまい、申し訳ありませんでした。




