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142話 巨大魚

「よしよし、モンスターは――いるよねぇ!」


 次の部屋に足を踏み入れた途端、水の中から狂った水霊が飛び出してきた。このパターン心臓に悪いわ~。


「相手は1体だ! いくぞ!」

「ムムー!」


 今度はテイムをせずに攻撃に専念して見た。モンス達も一度戦った相手だからか、動きが良い。


 今回は俺が1回大ダメージをくらっただけで、うちの子たちは微ダメージで勝利できたが……。やはり俺が足を引っ張る。


「さて、この部屋には何があるかな~」


 スキルで色々調べてみると、水中には魚影があった。なんとダンジョン内で魚が釣れるらしい。これはトライせねば!


 俺は休憩がてら、少しだけ釣りをしてみることにした。部屋の端に立ち、釣り糸を垂れる。


「……」

「…………む!」

「………………ほっ!」

「またか!」


 全然つれないんだが。エサをガンガン取られてしまう。どうもダンジョン内の釣り場はランクが高いみたいだ。しかも、底の方にあるちょっと大きめの魚影は、反応すらしない。


 エサのランクが足りてない様だった。


「しかたない、こっちを使ってみよう」


 取り出したるは、1つ2000Gもする水霊のルアーだ。何度も繰り返し使える利点はあるものの、魚に取られたらアイテム自体が失われてしまう。もし一発目で取られたら? 大損である。


 だが、水霊の街で買った物だし、この釣り場に合わないと言う事はないだろう。


「よっと……」


 ルアーを沈める事しばし。


「キター!」


 水底に居た巨大な影が食いついた! 俺はリールを巻きながら、巨大魚と格闘する。良い引きだが、俺からは逃げられないぞ! だが、あとちょっとと言うところまで魚を引き上げた時だった。ブツリという嫌な音と共に、竿の重みが消え去ってしまう。


「持ってかれた! 2000Gのルアーがぁぁ!」


 ちょっと焦りすぎて、リールを巻きすぎたらしい。さて、この後どうしよう。水霊のルアーなら食いついて来ると分かったが……。


 諦めきれないのは、もう少しで釣り上げることができたせいだ。もう一回やれば、釣り上げられるかもしれない。だが、失敗したら、4000Gを無駄にすることになる。


「うーん……。いや、ここは行ったろう!」


 俺も男だ、やられっぱなしで逃げる訳にはいかない。


「とりゃー!」


 水中探査で巨大魚の場所を把握し、その前にルアーを落とす。そのまま軽くしゃくる様にルアーを動かしていると、すぐに巨大魚が向かって来た。


「よしかかった! 今度こそ釣り上げたら~!」

「ムッムー!」

「――♪」

「ヤー!」


 オルトとサクラが隣で応援してくれる。


「キュー!」

「クマクマ!」


 リックとクママは水中を覗き込んで、興味津々な様だ。


 そして5分後。


「おりゃぁー!」


 俺はついに巨大魚を釣り上げることに成功していた。竿を思い切り引き上げた反動で、俺と同じくらいの大きな魚体が勢いよく宙を舞い、部屋の床にドシンと落下する。


 淡水なのに、海水魚のハタやクエに似た外見をしていた。色は茶色地に赤い斑点だ。やっぱりクエっぽいよな。


「はぁはぁはぁ……。さて、なんていう名前の魚か――あれ?」


 赤マーカーが出てるんですけど。HPバーも表示されている。完全にモンスターの扱いなんですけど……。ビチビチと跳ねまわっている魚モンスター。だが、突然その口から水弾が発射される。何とかかわしたが、やはりモンスターだ。名前はファング・グルーパーとなっていた。


 テイムにも指定できる。いや、魚型は育成が難しいって聞いたし、今はいらないな。水中、もしくは陸上活動を可能にするための特殊な装備がなきゃ連れて歩けない上、ホームに水槽などが無ければ牧場に預けっぱなしにしなくてはいけないらしいのだ。


「み、みんな! やるぞ!」


 そして戦闘がはじまる。だが、相手は異様に弱かった。HPや防御力は流石にこのダンジョンのモンスターなのだが、動きも遅いし、攻撃の頻度も少ない。これなら押し切れると判断し、ファウに魔術攻撃力上昇のバフを駆けてもらい、俺とサクラとリックで総攻撃をしかけた。ファウのバフはサクラの樹魔術や、リックの木実弾などにも効果があるらしく、相当な火力を叩き出す。


 やられる前にやれの精神で、ダメージを喰らうことなく倒せてしまった。どうやら水中から釣り上げられたせいで、本来の戦闘力を発揮できなかったらしい。水中だったらかなりの強敵だったんだろうが……。


 これは良いカモを見つけたんじゃないか?


「ほ、他の部屋でもこいつ釣り上げられたら、もしかして楽に経験値を稼げるかも」


 弱くても、経験値はそれなりらしい。だって、オルトとクママが立て続けにレベルアップしたのだ。進化はしなかったけどね。俺の杖スキルも上昇してガードと言う受け技も覚えたし。


 俺たちはこの部屋にいたもう1体を釣り上げて撃破すると、早速次の部屋へと向かってみた。だが、そんなに甘くはないよね。


「やべ! 狂った水霊が2体か!」


 これは危険だ。絶対に逃げたい。だが無理だった。


「入り口をふさがれた!」


 だってこいつらズルいのだ。俺たちが部屋の中央に到達した瞬間に水の中から飛び出して来て! しかも、水中探査に引っかからなかった。俺のスキルがまだ低いのか、そういうスキルを向こうが持っているのかは分からんが。


「仕方ない……。皆、一体に攻撃を集中させろ! リックは白梨を好きに使っていい! サクラも、麻痺攻撃を使え!」

「キュー!」

「――!」


 かなりの激戦ではあったが、俺たちは死に戻りを出すことなく、1体目の狂った水霊を撃破することに成功した。


 リックの投げた白梨の麻痺効果で1体の動きが止まり、1体を毒に出来たおかげである。状態異常は俺が考えているよりもずっと強いな。残った1体の攻撃でオルトが死にかけたが、それでもなんとか俺のモンスター・ヒールが間に合い、俺たちは勝利することができていた。


 だが、ポーションももう尽きそうだ。そろそろ戻るかね……。


「じゃあ、この部屋にいるファング・グルーパーを狩ったら、ダンジョンから脱出しよう」


 それでも魚は狩るけどね!



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