139話 水霊の街
水霊の街はどこもかしこも美しかった。全てが白と水色の大理石で造られ、そこに流れる水の音が、まるで川のせせらぎの様に耳に心地よい。
その街を歩くのは、水色の美しい髪をしたウンディーネの少女たち。本当に幻想的だ。
「いやー、これぞファンタジー世界だよな」
テンションが上がって来た! まずはお店に行ってみよう。とりあえず手近な店をのぞいてみる。
「ここは武具屋か」
「いらっしゃーい。ウンディーネの武具屋さんだよ」
売っているのは水属性の付与された武具たちだ。結構性能もいい。ただ、重い物が多く、俺には使えない物ばかりだ。
ただ、面白い装備が2つあったのでつい買ってしまった。
名称:釣り人の履物
レア度:4 品質:★5 耐久:220
効果:防御力+11、釣りボーナス小
装備条件:釣りスキル
重量:1
釣りスキルにボーナスが入る装備だ。防御力も上がるし、値段も8000Gと手が届く範囲だったし。これで釣りをより楽しめるだろう。
それともう1つが、水霊のピッケルだ。
名称:水霊のピッケル
レア度:4 品質:★6 耐久:400
効果:採掘専用、水中での採掘にボーナス
重量:1
この効果で重要なのは、水中での採掘ボーナスだ。つまり、水中に採掘ポイントがあるってことだった。
オルトは水中に長時間入れないと思うし、いざとなったら俺が採掘しないとね。それに、そろそろ俺自身も採掘をしないといけないと思っていたのだ。こういうスキルは、長い時間かけてコツコツと上げなきゃいけない。取得は早い方が良かった。ついでに採掘スキルも取得したし、これからはバリバリ採掘も行うつもりなのだ。
次にのぞいた食材屋さんには、様々な魚が並んでいる。これは嬉しい。以前釣った事のあるビギニウグイにビギニマス、ビギニへラブナもある。ただ、それ以上に目を引いたのが、ビギニウナギにビギニエビ、ビギニシジミだった。
もしかしてここで釣れるのか? とりあえずあとでトライしてみて、ダメだったら買っちゃおう。ウナギは1匹2000Gもするから、ぜひ釣りでゲットしたいところだ。
お次は道具屋さんである。釣り道具が充実していた。ここで水霊の釣り竿、水霊の魚籠、水霊の罠籠、水霊のルアー×2を買ってしまった。34000Gもしたが、これも初期投資だ。魚をバンバン釣り上げれば、美味しいごはんも食べれるし、すぐ買って良かったと思うさ。
「ムー」
だからオルト、そんな目で見るな。ちょっとテンション上がり過ぎたのは認めるからさ。
「さーて、次のお店を見ようかな~」
「ムー……」
オルトの溜息を背に、次の店に向かう。そこは雑貨屋さんだった。水鉱石で作った冷却作用のあるコップとか、面白いアイテムがたくさんである。その中に、俺の目を引くアイテムが置いてあった。
「水草の種? これって、何だ? オルト、畑で育てられるか?」
「ムー」
「無理なのか。設備不足? スキル不足?」
「ムム」
どうやら両方であるらしい。残念だが、今買っても無駄になりそうだ。育てる算段が付いたら買いに来るとしよう。
その次は薬屋だった。普通にポーションなどが置いてある中、水中呼吸薬という薬が置いてある。飴玉の様な形状で、口に含んでいる間は水中で呼吸が出来るようになるらしい。
面白そうだが、結構高い。最も短い30分でも2000Gした。でも、いざという時のために1つあってもいいか? どこで溺れる羽目になるかもわからないし。水魔術のアクアラングと組み合わせれば、かなりの間潜水も出来るだろう。
と言う事で1つ購入しておいた。他では見ない薬だしね。その隣は食堂だった。
「ほう、ここは食堂か」
しかも、テイクアウトも出来るようだ。メニューを見ると、魚の塩焼きや、煮魚など俺でも作れそうなメニューが多い。アクアパッツァやブイヤベースなんかお洒落でいいな。帰ったら試したい。
どうしても我慢できず、ビギニアユの塩焼きを買ってしまった。700Gもしたが、メチャクチャ美味しい。これは簡単に作れそうだし、ぜひ真似しよう。
「最後は……何の店だ?」
店の中にはカウンターがあるんだが、商品がない。まるで役所か不動産屋のようだ。
「あのー、ここは何を売ってるお店ですか?」
「いらっしゃいませ! ここはホームオブジェクトを取り扱っております」
「ホームオブジェクト? こんなところで売ってるのか」
ホームオブジェクトとは、自分のホームに設置できる、様々なアイテムのことだ。棚やテーブルの様な生活に必要な物から、彫像や壁掛けの様な、美術品などもある。
普通はホームを購入せねば意味がないが、俺は一応畑がある。物によっては家ではなく、畑専用のオブジェクトもあるそうなので、とりあえず商品を見てみようかな。
「ほうほう、なるほど」
畑に設置できるオブジェクトは4つあった。自動的に水を散布してくれるスプリンクラー。畑であればどこにでも設置できる井戸。あとは水耕用のプールに、水が常に涌き続ける泉である。
どれも面白いし、欲しい。ただ、スプリンクラーと井戸は今は止めておく。緊急性はないからな。
水耕用のプールがあれば水草を育てられるのかと思ったら、それだけでも無理らしい。オルトでさえスキルが足りていない様だ。
俺は取得可能なスキルの一覧を確認してみたが、それらしきスキルはない。多分、初期スキルではないんだろう。農耕のレベルを上げなくてはいけない物と思われた。
そして最後の『浄化の泉』だが、これがなかなか凄まじい。なんと、毎日50個、浄化水が採取できるのだ。調合に使える上、浄化水を畑に撒くと品質を上げることも出来るらしい。
「めっちゃいいじゃないか」
「ムム」
「オルトもそう思うか?」
「ム」
オルトも賛成な様だ。畑も4マスしか使わないし、ぜひ買いたいよな。ただ、値段が20000Gもした。
いや、でも俺はほぼ毎日調合に浄化水を使う。それを考えたら、20日もすれば元が取れるはずだった。
「よし、買っちゃおう」
「ム!」
「ありがとうございます。ではこちらをどうぞ」
「これは?」
店員が差し出してきたのは、1枚の羊皮紙だった。泉の絵が描かれている。
「オブジェクトを設置したい場所にこの羊皮紙を置いて、設置と命じてください。そうすればたちどころに泉が召喚されますので」
なんとこの紙が商品だった。便利だな。ただ、今すぐ設置せずに、後で好きな場所に置けるのは非常に嬉しかった。畑に戻ったら、一番良い場所を考えよう。
「次は釣りだ! いくぞオルト!」
「ムー!」
次回は20日更新で、その後2日に1回更新に戻します。
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