135話 羽音の森
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レスラーラビットとの激闘を制した翌日。俺たちは第2エリアの1つである羽音の森へと足を踏み入れていた。
「かなり心配だったけど、羽音の森でも普通に戦えているな」
最初の戦闘を終え、手応えはバッチリだ。俺の魔術やクママの爪なら、弱い敵は一撃である。最もHPが高いリトルベアでも6割くらいは削ることができた。
サクラとオルトの防御も鉄壁だし、リックとファウの援護も悪くない。敵のレベルが上がってもファウが他の子たちと上手く連携をとれるか心配だったが、その辺は全く問題なかった。
オルトとサクラの子供だからだろうか? 特に2人との連携はリックやクママと遜色がないものだ。
また、進化したリックが中々頼もしいのだ。俊敏さが上がって回避率も上がったし、木実弾も敵を引きつけるのに役立っている。挑発効果のある胡桃を使わなくても、青どんぐり弾でも十分敵の気を引けていた。
不完全ながらも避けタンクの様な役回りが出来ているので、他のメンバーへの被弾率が減っている。良いスキルを得たね。
また、ログアウトしている間に掲示板で調べたところ、やはり果物も木実弾で投げられるらしい。判明している所では、緑桃が仲間を微回復、白梨が低確率で麻痺、紫柿が低確率で毒となっていた。
使うのは緑桃だけでいいかな? 梨と柿の状態異常確率はかなり低いみたいだしね。まあ、青どんぐりも結構なダメージを出せるし、リックが一気にエースになってしまった。
今の俺たちなら、相手が同数のモンスターであれば全く問題ないだろう。
「それにしても、ファウはどんどんレベルが上がるな~」
「ヤー!」
「もうレベルが5だもんな」
レベル1から始まっただけあって、ファウはすぐにレベルアップしてくれるのだ。
「レベル5で、何か新しい技とか覚えたか?」
「ヤー!」
俺の質問に対して、ファウがおもむろに歌い出した。
「ランランララーン♪」
おや? 今までの歌と違う気がするな? どうやら新しい歌を覚えたらしい。今までの曲よりもちょっとだけ勇ましいかな?
「効果はなんだ?」
「ヤー!」
ファウが何やら勇ましい顔で両手を天にかざすと、そのまま勢いよく前方に振り下ろす。
こういうジェスチャーを見ると、オルトの子供って感じがするな~。まあ、言葉が話せないモンス達は、ジェスチャーで意思を伝えるしかないんだろうが。
「ふむ……もしかして攻撃魔術か?」
「ヤー♪」
どうやら一発で正解できたらしい。俺も成長してるね!
そうか、ファウの新しい歌は魔法攻撃力増加か。メチャクチャ使えるじゃないか。
「ファウは凄いな~」
「ヤ♪」
思わず肩に乗るファウの頭をナデナデしてしまったよ。すると、他の子たちが突進する勢いでワラワラと群がって来た。
「ムム!」
「キキュー!」
「クックマ!」
「――♪」
そして、俺の前に一列に並んだ。先頭のオルトはお辞儀するような角度で、俺に頭を差し出している。自分たちも撫でろってことなんだろう。
「はいはい、分かってるよー」
「ムー」
その後、俺は順番にモンスたちを可愛がっていった。
羽音の森に足を踏み入れてから10分後。前回はあれだけ苦労したセーフティーゾーンに、あっさりたどり着いていた。
東の平原からずっと強行軍で来たし、少し休憩していこう。実はさっき気づいたんだけど、昨日送られて来てた集計データを、見落としてたんだよね。どうも戦闘中だったらしく、全く気付かなかった。どうせだからここで休みながら見ちゃおう。
「ふーむ、やっぱ俺の称号数は断トツか」
1位は6個の俺だが、2位は3個となっている。倍だぞ? どうも俺が称号を4つ持ってたことは知られてるみたいだから、6個が俺だって完全にばれてるよなー。仕方ない、何か言われたら愛想笑いで誤魔化そう。
あと気になるのが、スキルの取得数だな。なんか、テイム、料理スキル持ちがめっちゃ増えていた。
特に嬉しいのがテイム持ちの増加だ。テイマーじゃなくてもテイムスキルを取得する人が増えたって事は、テイムスキルとテイマーが見直されたってことだからな。
「これはテイマーの時代が来るんじゃないか?」
まあ、アミミンさんみたいな有名なプレイヤーもいるし、いつかはこんな日が来ると信じていたけどね!
テイムしている従魔数がトップのプレイヤーは、14体だ。俺のほぼ3倍である。スゲーな。そりゃあ、こういう人たちが前線で活躍すれば、テイムの価値も見直されるよな。
「お、植物知識取得者が200人越えてるじゃないか。広まってきたな~。よしよし」
これだけいればハーブティーの茶葉も色々な場所で出回るだろうし、あのお祭り騒ぎもおさまるだろう。ようやく解放されるな。
さらに、運営からのメッセージも同封されていた。
『イベント終了に合わせ、一部システムが解放されます』
一部システムか。前も同じアナウンスがあったよな? あの時はフィールドに新モンスターが出没するようになったんだ。今回は何が起きるんだろうな?
まあ考えても仕方ないし、そのうち分かるだろ。そろそろ出発するとしよう。
「おーい皆、行くぞー」
そう声をかけたんだが、誰も帰ってこない。皆で輪になって何やらやっているな。
近づいてみると、恒例の山崩しで遊んでいるらしい。俺の声が聞えないくらい集中しているとは、遊びに全力だな。
いや、ファウの音楽で俺の声が掻き消されてしまったのもあると思うが。山の土が減って来たら、某鮫映画のダーダン、ダーダンにそっくりな重低音を奏でて勝負を煽っている。
もう少しで決着がつきそうだし、少し待ってやるか。
今週、来週は非常に忙しく、少々更新が滞る可能性があります。
次回以降は8、11日更新予定です。
予定が変わる場合は、活動報告にてお知らせいたしますので。




