132話 久しぶりの早耳猫
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昨日はファウの力を色々試して終わっちゃったからな。今日は色々と動きたいのだ。まずはアリッサさんの露店に行って、情報を売り買いしたい。
その次は、エリアの攻略だ。いよいよ第3エリアを目指す。目的は畑である。始まりの町じゃもう畑を拡張できないからな。
俺は畑をオルトたちに任せ、ファウだけを連れて広場に向かった。
ファウがポロロンとリュートをかき鳴らし、散歩のBGMを奏でる。慣れた道もファウがいると楽しくなるね。
時おりスキップなんかしちゃったりしながら、俺はアリッサさんの露店へとたどり着いた。
「あら、お久しぶり」
「はいお久しぶりです」
「なんか機嫌がいいわね?」
アリッサさんにそう言われるほど、今の俺は浮かれていたらしい。
「この子のおかげですかね?」
「新しい従魔ね。また可愛い子じゃない」
「いや、狙って可愛い従魔を揃えてるわけじゃないんですけどね」
イベント中、アメリアにも似たような事を言われた。もしかして、あえて可愛い従魔ばかりを揃えてると思われてるんだろうか?
「その子の情報は売ってくれるの?」
「勿論ですよ」
「さすがユート君! あ、そうだ。属性結晶まだ持ってる? 今なら高く買うよ?」
「高くって……。前も1つ30000Gって言ってましたよね?」
「今なら1つ50000G出すわよ?」
「はぁ? 50000? 価値が上がってるってことですか」
「そういうこと」
「なんでですか?」
「実はイベントのポイント交換で、昨日から少しだけど属性結晶が出回り始めたのよ」
「だったら、値が下がるんじゃ……?」
激レアアイテムが、単なるレアアイテムになったってことだろ?
「それがね~。数がある程度出回ったことで、トップ鍛冶師が属性結晶で色々と試すことができるようになったの。今まではクエスト報酬とかでゲットできた数少ない幸運なプレイヤーがほとんど外には出さなかったからね」
俺もそうだ。もしかしたら必要になるかもしれないし、余程お金に困ってなければとっておくだろう。
「で、武具に使った時に凄まじく有用な効果が付くことが分かってさ、逆に高騰し始めてるのよ。攻略組なら喉から手が出るほど欲しいでしょうね」
「そうなんですか」
「ええ、特に第4、第5エリアは属性が弱点のモンスターが多いからね。強力な属性付きの武器が1つあるだけで、攻略難易度が段違いになるってわけ」
そのせいで争奪戦が起きており、値段が高騰しているらしい。そもそも属性結晶を欲しがっている攻略組はお金を持っている。そのせいで、値段の上がり方が異常に速いようだ。
しかし、俺に売る選択肢はなかった。
「今はお金には困ってないですし、孵卵器なんかに使えるんで」
「そうよね~。テイマーならそうよね。残念。じゃあ、気を取り直して情報の売買に移りましょうか」
「すいません」
「こっちが無理言ってるんだから謝らないでよ。それで、その子はどこでテイムしたの?」
「いえ、この子は――」
「ちょっと待った! もっと小声で!」
「え? こうですか?」
「それでいいわ」
「えーっとですね、この子は卵から生まれたんですよ」
俺はオルトとサクラが配魂して卵が産まれたこと、その卵からファウが生まれたこと、何故かクママよりも早く卵が孵ったことを小声でアリッサさんに語った。
そして、ピクシーの情報があったら買いたいと伝えたんだが、アリッサさんも未見のモンスであるらしかった。
残念だが、仕方ない。気を取り直して、他の情報を買おう。
「幾つか買いたい情報があって」
「どんな情報が欲しいの?」
「1つが醸造について。スキルの使い心地とか、醸造用の器具が知りたいです。あとは、釣り場の情報も欲しいですね。それと、牙の森の情報もお願いします」
「ふむふむ……」
アリッサさんが、それぞれの内容をある程度説明してくれる。醸造スキルに関しては、現在判明している醸造で作れる物と、特別な醸造樽を入手するための特殊クエスト攻略法の情報があるらしい。
釣り場に関しては、第4エリアまでの釣り場の場所を教えてくれるようだ。釣れる魚の詳しい内容もあるらしいが、そっちは遠慮することにした。釣れる魚が最初から分かってたらつまらないからな。
第2エリアの情報は出来るだけ詳しいものをお願いしておく。詳しいマップだけではなく、出現モンスターの弱点や、ドロップ品の確率まで、様々なデータが細かく揃っているらしい。
だが、アリッサさんは牙の森の情報ではなく、東の平原の先にある羽音の森の情報を勧めて来た。
「詳しくは言えないけど、醸造だったら絶対に東の町に行った方がいいわよ?」
そう言われては、東の町に行かない訳に行かない。となると、東の平原のボス情報なんかも欲しいところだな。
「うーん。じゃあ、東に行きますよ」
「うんうん、それがいいよ」
「全部でいくらですか? 相当高いですよね?」
「醸造、釣り、フィールドデータ、ボスデータ全部合わせて、20000Gかな?」
「思ったより安いけど……」
でも20000Gか。でも必要な情報ばかりだし仕方ないな。そんなことを考えていたらアリッサさんが声をかけて来た。何やら露店の周辺にいるプレイヤーを数えている。
「そのピクシーちゃんの情報と相殺で良いわよ」
「ええ? 相殺って、ファウの情報が20000G分の価値があるってことですか?」
「それくらいの価値はあるわ。1000G×20人くらいはすぐに元が取れるしね」
1000Gで売るの? 高くない? どこで出現するかも分からないモンスの情報なのに。まあ、アリッサさんが売れるって言うなら、売れるんだろう。
「なら、有り難くデータはもらって行きますよ?」
「商談成立ね。あ、そうだ、もう1つおまけ。従魔の卵は、自分のモンスが生んだ奴の方が早く孵化するみたいだよ」
「なるほど、そういうことですか。ありがとうございます」
「毎度ー」
いやー、ファウの情報だけでこんなに色々と分かっちゃって、得したな。俺がスキップしながら広場を出ようとしていると、背後からアリッサさんの声が聞こえてくる。
「はーい、お待たせー! 次のお客さんどうぞー。最新情報売るわよー」
見てみると、露店の周辺に結構な人が集まっている。早耳猫を利用するプレイヤーは思ってたよりも多いんだな。無駄話をして悪い事をした。




