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130話 ファウの力

「ほー。凄いな~」

「ヤー!」


 俺はオルト達の農作業が終わるのを待つ間、ファウと一緒にイベントの動画を見ていた。村イベントの方は後回しで、現在は武闘会編を視聴中である。


 こっちでも悪魔の襲撃や陰謀があったらしい。サーバーごとに別れてというのも同じようだ。観客に被害が出たサーバーもあれば、悪魔を完全に倒しきったサーバーもあった。


「うわー、これって人に可能な動きか?」


 決勝戦の動画なんて、もはや速過ぎて何が何やら。


 同じタイミングでゲームを始めたはずなのに、この差はなんなのだろう? それとも、戦闘職を選んでたら、俺もこれくらいできたのか?


 こういうのを見ちゃうと、戦闘職での前線攻略組にも憧れちゃうよな。派手なアーツと魔術、目にもとまらぬ高速機動で、巨大なモンスターをバリバリ倒すのだ。


「うん……たとえ戦闘職だったとしても、俺には無理そうだな」

「ヤー?」

「いや、なんでもない」


 そろそろ皆の仕事も終わったかな? 確認しに行くと、もう少しで採取が終わる様だ。


 採取物を確認すると、クママの養蜂箱で早速ハチミツが収穫できていた。店で買うよりも品質が高い。これは良い物だ。


「そう言えば。ファウは何を食べるんだ?」

「ヤ?」


 妖精だと蜜とか果物っぽいが、食べるかね? とりあえず手元にあったハチミツの原液、果物、ハチミツ団子をファウの前に並べる。


「好物はあるか?」

「ヤー……」

「ダメか」


 俺が見せた食べ物を前にして、ファウが首を横に振っている。


「じゃあ、これとかこれは?」

「ヤー」

「これも違うか」


 野菜ジュース、木の実クッキーも好きではないらしい。


「もうこのくらいしか残ってないが」

「ヤー♪」

「え、これでいいの?」


 ファウが飛びついたのは、やけくそで取り出した生の野菜だった。自分の体と同じくらいあるニンジンをボリボリと食べている。色々と野菜を並べた結果、青ニンジン、橙カボチャが好きらしい。どうやら歯ごたえのある野菜が好きな様だな。野菜スティックでも作ってやるか。


 食費はあまりかからなくて済みそうだ。


 野菜を食べ終わったファウは、上機嫌でリュートをかき鳴らし出す。


「ラランララ~♪」


 うーん、フィールドでは控えるように言わないと、モンスをガンガン引き寄せそうだな。


 錬金も少し試してもらったが、こちらはまだ合成しかできないらしい。せめて乾燥が使えるくらい育ってもらわないと、あまり戦力にはなりそうにないな。



 ファウの好物や錬金のレベルを検証した後、俺は畑仕事が終わったオルト達を連れて平原にやって来ていた。ファウの能力を見るのが目的だ。


「じゃあ、皆行くぞ! ファウは取りあえず見学な?」

「ヤー!」


 イベントでかなりレベルも上がったおかげで、戦闘はサクサクと進む。もう第1エリアの敵じゃ相手にならないな。


 いやー、俺たちも成長したもんだ。まあ、正確にはサクラやクママの攻撃力が上がったおかげだけどね。


 今の自分たちの力も大分理解できた。次はいよいよファウの出番だ。


「ファウは歌で援護をしてくれ」

「ヤー!」


 相手は硬めのロックアントだ。あまりにも早く決着がついてしまうと、歌の効果を確認できないからな。


 戦闘が始まる。


「ラ~ララー♪」

「おお、来たな!」


 ファウが歌い始めると、俺たちの体が青い光に包まれる。よし、やはりファウの歌唱と演奏は、吟遊詩人と同じ効果があるらしい。


 しかも効果が結構高い。明らかに敵を倒す速度が速かったからな。攻撃力上昇の効果があったようだ。


「もう少し検証してみよう。ファウ、ガンガン頼むぞ」

「ヤー!」


 次の戦闘では、ファウの演奏によって敵の動きが僅かに鈍る。


 吟遊詩人の歌には、味方の援護をするバフと、敵に様々な効果を与えるデバフの2種類があるが、ファウは両方使えるようだ。


 味方の攻撃上昇、防御上昇の2種類のバフに、敵の攻撃速度低下、攻撃命中低下の2種のデバフだ。


 攻撃命中低下は、検証に大分時間が掛かったけどね。一見、何が起きてるか分からないのだ。敵の攻撃が外れる確率が少し上がったかなーと気づかなければ、何の効果か未だに判明していなかったかもしれない。


「さて、火魔召喚も試したいが、いけるかファウ?」

「ヤー♪」


 ファウが右こぶしを勢いよく天に突き出し、行けるアピールをする。そして、ファウが一瞬集中した直後、その眼前に1体の火の玉が生み出されていた。


「こいつを操ったまま歌えるか?」

「ラーララー♪」


 おお、行けるらしい。そのまま軽く戦闘をしてみたが、問題はなさそうだった。火魔召喚はあまりMPを消費しない様だが、攻撃力は大したことはない。火の玉の体当たりで、ワイルドドッグを3割削るくらいかな? それでも遠距離から攻撃も可能だし、なかなか使い所は多そうだ。


「ファウ、これからよろしくな」

「ヤー♪」


昨日は書籍版の発売日でした。

自分の本がお店に並んでいるのは、何度見ても嬉しいものですね。

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