126話 結果発表~!
イベントが完全に終了し、村から始まりの町に戻る――と思っていたんだが、俺たちは不思議な場所にいた。
漆黒の宇宙の様な空間に、直径100メートルほどの円盤が浮かんでいる。その円盤には、俺を含めた300人ほどのプレイヤーが乗せられていた。どうやら、同じサーバーにいたプレイヤーが全て集められているみたいだな。
それだけではない。周囲を見ると同じような白い円盤がいくつも浮かんでおり、同じ様にプレイヤーが乗っていた。サーバーと同じ数だけあるんだろう。
何が始まるのかと思っていたら、漆黒の空間の一部に超巨大なスクリーンが浮かび上がり、そこに顔が陰で隠れたモブアバターが表示された。同時に、ステータスウィンドウでも同じ映像を見ることが出来る様だ。
『それでは、イベントの結果を発表させていただきます。ご静聴下さい!』
「おおー!」
なるほど、最終日の途中経過が送られてこないと思ったら、そういう趣向だったのか。グラシャラボラス戦が終わって自分たちの順位がどうなっているのか、ドキドキだね。
最初は個人ポイントのランキングが発表されるらしい。全サーバーの中で上位10名が発表されるようだな。
まあ、ここは俺には関係ない。グラシャラボラスの撃破報酬を合わせても、約1300ポイントしか稼いでないからな。と言うか、俺たちのサーバーの中にはベスト10に入る者はいなかった。
モニターに映し出された1位のプレイヤーが、両手を上げてガッツポーズをしている。
それにしても、個人ポイント7000とかどうやって稼いでるんだ? そう思っていたら、上位プレイヤーが高ポイントを獲得したイベントなどが一部表示された。
個人ポイントはサーバーへの貢献度など関係なく、強いボスなどを撃破すれば高ポイントがもらえるらしい。なので、守護獣の撃破が高ポイントだったようだ。さらに、邪悪樹の撃破という項目もある。どうやら、神聖樹に取りついたグラシャラボラスの使徒を放置しておくと、神聖樹が邪悪樹と言うボスに変化してしまうらしい。うちのサーバーは早々に使徒を撃破したから、出現しなかったんだろう。
他には、村落内に出現した悪魔の撃破とか、大悪魔に蹂躙された村落からの子供を救出など、うちのサーバーでは起こらなかったイベントが相当表示されていた。
お次がお待ちかね、サーバー順位の発表だ。6位以下のサーバーが一気に発表される。よしよし、俺たちは入っていないな。
他のサーバーの悲喜交々の声が聞こえてくる。上位に入れなくて嘆くのは分かるが、なんで喜んでいる奴らもいるんだ? そう思っていたら、元々低い順位だったサーバーが、グラシャラボラス戦などを上手く戦って、大幅に順位を上げたらしかった。確かに、30位とかから10位くらいに上がってたら、喜ぶかもね。
その後、順番に発表されていく。5位、まだだ。4位、違う。3位、入らないよね? そして2位。
『2位は、第7サーバー!』
呼ばれなかった。ということは――。
『そして、栄えある1位は――第29サーバーです!』
よし、1位だ。自信はあったけど、絶対じゃなかったからね。
「やりましたね白銀さん!」
「おおコクテン! お前ら戦闘部隊が頑張ってくれたおかげだ」
「いやいや、白銀さんがレシピを提供してくれたおかげですよ」
「いやいや――」
「いやいや――」
「2人で頭を下げ合って、何してるんだい?」
ジークフリードが声をかけてくれて助かった。互いに止めるタイミングを逸してたからな。日本人の悪い癖だ。
「やったね。これは我々全員の勝利だよ!」
「ああ、そうだな」
「ですねー」
さすがジークフリード。さらっと正解を口にするな。
ウィンドウにはサーバー順位の評価基準が表示されている。イベント終了時の守護獣の状態ね。サーバーによっては殺してしまったり、放置したままのサーバーもあるようだった。
次は神聖樹の状態か。邪悪樹とか言うボスに変化してしまったサーバーもあるし、復活できたサーバーは数サーバーだけみたいだ。
村も、無傷から完全破壊まで、色々と段階がある。完全無傷はうちのサーバーだけだ。一番多いのは、村の半壊。次に多いのが村の全壊だった。
『次は、サーバー貢献度の順位を発表いたします』
「え? そっちも?」
ポイントが公開されていたわけじゃないから、まさかそこが発表されるとは思ってもみなかった。
驚く俺をよそに、順位が発表されていく。そして、第3位でジークフリードが発表された。うちのサーバーで貢献度2位のジークフリードが全体で3位? じゃあ、1位の俺は?
『サーバー貢献度、全体での1位は、第29サーバー、ユートさんです!』
「おおー! さすが白銀さん!」
「いやいや、ちょっと待って」
モニターに俺が映し出された、思わず逃げようとしたんだが、祝福するプレイヤーに取り囲まれて逃げることもできない。
「白銀さん、アピールしとかないと!」
「そうだぜ。ほら、手を振って」
皆に悪気がないのは分かってるし、これは逃げられそうもないな。仕方ないので、軽く手を上げておこう。すると、うちの子たちも一緒に手を振ってくれた。他のサーバーの歓声のような物が聞こえて来て、本当に恥ずかしい。まあ、歓声のほとんどはうちの子たちに対する物だとは思うけどね。
『最後に称号の贈呈です。個人ポイント1位から10位のプレイヤーには、「孤高の戦士」の称号を。サーバー貢献度1位から10位のプレイヤーには「絆の勇士」の称号が与えられます。また、イベント内で限定称号を得たプレイヤーには、失った限定称号の代わりに「村の救援者」の称号が与えられます』
ええ? ということは……。やっぱりだ。イベント限定称号が消え、絆の勇士、村の救援者の称号が増えている。
「白銀さん、称号どんな内容だったんだ?」
「あ、俺も知りたい!」
まあ、これは皆のおかげで獲得できた称号だし、教えてもいいか。元々隠す気もないしね。
称号:絆の勇士
効果:賞金20000G獲得。ボーナスポイント4点獲得。イベント「村の大悪魔」で活躍した証。
称号:村の救援者
効果:村落内でのNPCとの会話時、友好度にボーナス。イベント「村の大悪魔」で活躍した証。
目に見えて強力な称号という訳ではないけど、やはり羨ましがられた。一気に2つも称号を得てしまったからな。まあ、仕方ないだろう。なにせ、これで称号は6個だ。
また目立っちゃいそうだよな~。もっと強い称号だったら嬉しいけど、これって記念の名誉称号だし、あまり強くないんだよね。なのにすっごい羨ましがられてるし……。嬉しさ半分、憂鬱さ半分だわ~。
『これにて、結果発表は終了となります。お疲れ様でした。皆様をイベント開始直前にいた場所へと戻します。ポイントの景品への交換はリストから行って下さい』
その言葉が終わった瞬間、俺たちの視界が暗転し、直後には見覚えのある風景が目に飛び込んで来た。
「俺の畑だよな? 戻ってきたか」
「ムムー」
「おいおい、もう畑仕事か? 好きだねー」
「クマクマ!」
「キュー!」
「――♪」
うちの子たちは早速、自分の持ち場に散っていく。そりゃあ、1日経過してるはずだから、早めに畑仕事をこなさないといけないんだけどさ。皆働き者だ。
体調がまだ完璧じゃないので、次回は3日後です。
書籍版の発売まで10日をきりました。
書籍版オリジナルキャラや書き下ろしもありますので、そちらもよろしくお願い致します。
店舗特典のSSも男性向けのを3本と言う発注だったので、5種類中3本は「いやーん!まいっちんぐ!」的な内容です。
HPにどのお店に何が付くか掲載されていますので、気になる方はそちらをご確認ください。




