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125話 祭りの終わり


 楽しい縁日が終わりを迎える。


 俺たちが参加した後くらいから他のプレイヤーたちも盆踊りに参加してくれて、とても賑やかなお祭りになった。いや、プレイヤーが櫓の周囲に集まりすぎて、押し合いへし合いになってしまうほどだったのだ。それでも皆笑顔だったし、俺たちも楽しかったけどね。


 その後、コクテンにグラシャラボラス戦の話を聞いていたら、数人のプレイヤーが怖い顔で押しかけて来た。


 何か抗議されるのかと思ったら、違っていたらしい。


 彼らは、うちの子たちのファンだった。約束の撮影会を開いてほしいと言いに来たのだ。そう言えば忘れてた。


「もう集まってるのか?」

「はい。希望者は全員。私たちは代表としてお願いしに来ただけなんで」


 考えてみたら、ここで撮影会をしておく方がいいかもな。イベント後に個別で押しかけられたら、中々面倒だし。


 しかし、かなりの人数がいるみたいだった。これは結構な時間が掛かりそうだ。1人何分とか区切るか? それでも結構な時間が掛かりそうだが。


 そう思って心の中でげんなりしていたら、代表さんたちが救いの手を差し伸べてくれた。希望者が多すぎるため、一気に全員での撮影会にしてくれるらしいのだ。


「いやー、前回の撮影会のやり方じゃ、この人数は無理だと思うんですよ」

「従魔ちゃん達も疲れちゃいますしね」


 彼らが提案したのは全員で一斉に撮影をすると言う物だった。囲み取材と言うか、コミケのコスプレ撮影会形式である。


 これなら全員で同時に撮影が出来るな。ただ、立っているうちの子を撮影するだけなので、好きなポーズなどは撮ることはできない。


 それでは少し可愛そうなので、10分間好きなだけ、どの子でも撮っていいとしておいた。勿論、ここで撮影したスクショは無闇に掲示板などに載せない様にお願いして。


 最初は不満げなプレイヤーもいたんだが、「人が押し寄せたらうちの子たちが困っちゃうから、お願いします」と言ったら、ほとんどのプレイヤーは了承してくれたようだった。


 その後は、即座に撮影会の始まりである。撮影会と言っても、誰もカメラを構えておらず、見ている風景を保存するだけなのだが。ただそのせいで、ポージングするモンス達を、歓声を上げながら見つめる集団となっていた。ちょっと怖い。


「うーん、オルトくん格好いいわー」

「サクラたんキャワイーネー」

「リックちゃん、こっち向いてー」

「クママちゃんそのポーズ最高!」


 そんなカメラマンたちのかけ声と共に、撮影会の熱気は一層高まっていく。


「きゃー! 可愛いわオルトちゃん! そのままそのまま!」

「サクラたんいいよー! そのまま視線ちょうだい」

「リックくん、いいわ~。そうそう、その太い尻尾をピーンとしてみて」

「クママちゃんセクシーよー。そうそう、お尻こっちに向けてフリフリしてー!」


 だんだん指示が際どくなってきたな。サクラが親指を軽く噛んで流し目をするくらいは可愛い物だ。


 クママがフリフリとお尻を振る姿を見て、黄色い悲鳴を上げながらバシャバシャとスクショを撮りまくっているプレイヤーが複数人いる時点で、このまま撮影会を続けていいものかちょっと迷ったぜ。


 狂乱の撮影会が終了したのはゲーム内で16時半だった。撮影会後のフレンドになって下さい攻勢を宥めすかして逃げるのに結構時間が掛かっちゃったんだよね。


 村の中に逃げ込んで、買い物をしながらほとぼりを覚ましていると、ふーかがやって来た。どうも俺を探していたらしい。


「どうしたんだ?」

「はい、渡すものがありまして。これを受け取ってください」

『ふーかからアイテム譲渡の申請が来ています。承諾しますか?』

「えーっと、中身は食材か?」

「はい。分配分ですから」

「なるほど」


 戦闘終了時、料理やポーション、それらの材料などがそれなりに余っていた。それをどうするか、サポート部隊のリーダーたちや、コクテン等戦闘部隊のリーダーたちで相談していたはずなんだが、どうやらどう分けるか決まったらしい。俺も会議には誘われたんだが、撮影会もあるし正直面倒なので、決まったことに従うと告げて丸投げしてしまったのだ。


「ポーションや料理などのアイテムに関しては、戦闘部隊の人間で分配。素材に関してはサポート部隊で分配と言う事になりました。それは白銀さんの分です」

「結構多いな」


 30個以上あるんだが、こんなに貰っていいのか? そう思っていたら、やはり俺の分は少し多いらしい。レシピを公開したり、村での食材の入手方法を教えた対価と言う事だった。


「いいのか? 俺だってレシピを教えてもらったりしたのに」

「でも、白銀さんのレシピはイベントに貢献したし、あれで等価交換とはとても言えないもの。だからこのくらいはね」


 正直もらいすぎな気もしたんだが、リストを見ると味噌や醤油、紫柿や白梨など、欲しかった物ばかりだ。


 自分に「ここで断ったらそれも失礼だし」と言い訳をしながら、有り難く受け取っておくことにした。


 そんなやり取りをして、ふーかと別れた直後。アナウンスが鳴り響く。


『イベント7日目、17:00です。イベント終了まで、残り1時間となりました』


 おお、もうそんな時間か。


 色々得る物の多いイベントだったな。アイテムもそうだが、レベルが上がったのはやはり大きい。


 基礎Lv、職業Lv、ともに19だ。あと1つ上がれば、転職システムが解放される。基礎Lv20になると、他の職業への再転職が。職業Lv20で、上位職へのランクアップが可能となる。


「レベルアップしたばかりだし、また相当頑張らないとレベルは上がらないだろうな~」


 他にも、釣りの楽しさを知れたし、発酵の存在も知れた。今後色々と楽しくなりそうだ。やはり、このイベントに参加してよかったのだろう。


「さて、この後はどうしよっかね」


 悩んだ末、最後はあの人の元へ向かう事にした。色々とお世話になったからね。



「じゃあ、カイエンおじいさん。色々とありがとうございました」

「なに、こちらこそ村を守ってくれてありがとうよ」

「お元気で」

「うむ。達者でな」


体調不良が治らない……。

次回更新は4日後にさせてください。

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― 新着の感想 ―
サクラが親指を噛んで流し目? 上級者ですね。
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