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118話 グラシャラボラス近っ!

執筆が8時に間に合いませんでした。すいません。

次回も29日予定にさせてください。できるだけいつも通りの8時に更新できるように頑張ります。


 俺がアンチパラライズを作り始めてから30分後。


「ゴオオオオオオオオオオォォォォ!」

「うわっ」


 過去最大音量の咆哮が聞こえて、思わず素材を取り落としそうになってしまった。周囲ではプレイヤーたちの大騒ぎの声が聞こえて来た。


「ど、どうしたんだ?」


 だが、今ちょうど調合中だ。手も目も離すことが出来ない。周囲のプレイヤーの悲鳴にも似た声を聴きながら、焦りを何とか抑えつつ調合を続ける。


「で、できた!」


 ただ、途中の動揺のせいか、品質が下がってしまったな。まあ、今は反省している場合ではなさそうだが。


「えーと、何があったんだ?」

「――! ――!」


 事態が分からずあたふたしていたら、サクラが俺の背中をペチペチ叩いてきた。その後、しきりに引っ張るので、そっちを見て度肝を抜かれてしまったぜ。


「ええええ?」


 なんと、グラシャラボラスが村のすぐそばにいた。つい3分前には、初期の戦闘位置からほとんど動いていなかったはずなのに!


「グラシャラボラス近っ!」


 目の前と言うほど近くもないが、戦闘開始位置にくらべれば半分以下の距離だろう。


「ちょ、何があった!」

「白銀さん! 白銀さんはいませんか?」

「ふーか? なあ、何があった?」

「グラシャラボラスが転移してきたんですよ! 私バッチリ見ちゃった!」


 どうやら、戦闘部隊がグラシャラボラスのHPを半減させたことによって、イベントが進行したらしい。


「しかも、村に近づいてきてるじゃないか」

「そうなんです! それで、私たちも戦闘に加わらなきゃヤバいかも」


 実は、転移する前もグラシャラボラスは村に向かって歩いていた。ただ、戦闘が始まると足を止めて迎撃に専念するそうだ。逆に、隊形を立て直すためにプレイヤーたちが距離をとると、歩き出すのである。


「つまり、俺たちが戦闘を仕掛けて、足止めしなきゃヤバいかもしれないってことか?」

「そうです。少なくとも、村への到達は阻止しないと。戦闘部隊が戻って来るまで時間を稼ぐためにも、サポート部隊で足止めをする可能性が高いです」

「わかった。ここまで来てイベント失敗なんてなったら最悪だからな」

「5分後に出発予定です。一応、サポート部隊は10人は残すつもりなんですけど、白銀さんには戦うメンバーに入ってもらいたいんです」

「了解。俺はテイマーだしな」

「お願いします」


 戦闘力が無いとはいえ、うちの子たちがいれば、普通の生産特化のプレイヤーよりは、多少はましだろう。仕方ないな。


「よーし、皆! 戻って来い!」

「――♪」


 俺とサクラが呼ぶと、オルト達が駆け戻って来る。


 グラシャラボラス戦は厳しい戦闘になるだろう。うちの子たちが豚汁を食べれればいいんだが、どうだろうか?


 俺は取りあえず豚汁を1つ取り出して、オルト達に見せてみる。


「だめか?」

「ムー……」

「キキュ!」

「クックマー」


 元々食事をしないサクラは無理だろうとは思ってたけど、オルト達も豚汁は食べれないらしい。食べれないか、食べたくないかは分からないが、オルトもクママもリックも首を横に振っている。


 仕方ない、このまま行くしかないか。俺は皆を連れて、集合場所である広場の入り口に向かった。


 すでに大勢のプレイヤーが集まっている。だが、その姿は非常に頼りなかった。まず、戦士職がいない。ここにいるのは100%生産職なので仕方ないんだが、やはり戦闘が得意そうな集団には見えない。


 それが自分たちでも分かっているんだろう。どこか不安げだ。と言うか、俺だって彼らと気持ちは同じだ。俺たちみたいな貧弱な坊やたちがグラシャラボラスみたいな化け物に挑んでまともな戦いになるのか?


 いくらゲームの中と言っても、リアルな映像に対して恐怖を感じることもある。死に戻って来た戦闘部隊にグラシャラボラスの恐ろしさや、死ぬときの恐怖を色々と聞いてしまったため、余計に不安なのだ。


 そのプレイヤーたちの中心で、ふーか等サポート部隊のリーダーたちが相談している。どうやら他の生産職たちから、戦闘時のリーダー役をそのまま押し付けられたらしい。暗い表情で話し合っている。ご愁傷様です。とは言え、俺たちサポート部隊の戦力は酷い物だからな、大した案は出なかったらしい。


「白銀さん、ちょっといいですか?」

「なんだ?」

「一応作戦を決めたんですが……」


 その作戦の内容は、少数ずつグラシャラボラスに攻撃を仕掛け、ダメージよりも全滅する時間を出来るだけ伸ばすことを優先し、戦闘部隊が戻って来る時間を稼ぐというものだった。


 グラシャラボラスは戦闘中は足が止まるため、悪くない作戦だろう。どうせ俺たちが勝てずに、全滅することは皆が覚悟してるからな。


「それしかないだろうな」

「白銀さんもそう思います?」

「ああ」

「よし、白銀さんのオッケーも出たし。これで行こう」

「そうね」


 何か俺が最終決定を下したみたいになってるんだけど! なんで俺に聞いた! ふーか以外のリーダーたちも、何故か真顔で頷いているし。


 その後、作戦が説明されたんだが……。


「――と言うのが作戦だ。白銀さんも、それしかないだろうと言ってくれている」

「白銀さんが納得してるならいいんじゃないか?」


 なんで、そこで俺の名前を出すんだよ。皆も何故か納得するし。


「有名プレイヤーに肯定されたら、みんなそんな物かと安心するんだよ」


 まあ、このサーバー内じゃ、俺もそれなりに有名か。主にモンス達のおかげだが。あと、サーバー貢献度も1位だしね。


 とりあえず、皆が納得して作戦に参加してくれるなら、それでいいや。


「じゃあ、グラシャラボラスに向かいますよー」

「はーい」

「うぇーい」

「なあ、誰が最後まで生き残るか賭けないか?」


 覇気はないが、とりあえず出撃である。



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