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117話 サポート班の戦い


「おい! ポーション置き場にポーションを補充してくれ!」

「豚汁はこっちでーす!」

「この剣は、直すよりも新調した方が早いな!」


 村の広場はまるで戦場の様相を呈していた。戦闘開始から既に1時間。最初の死に戻りが出てから30分だ。それから相当数のプレイヤーが死に戻りしてきていた。40人を越えているだろう。既に村を再出撃したプレイヤーも多いが、現時点でも20人近くが村に残っている。


 俺は、今まさに死に戻って来たばかりのプレイヤーを、広場に敷いたゴザの上に案内していた。


 死に戻って来たプレイヤーの中には恐怖やショックで動揺している者や、長時間の戦闘で精神的に疲労している者も多いので、とりあえず座らせて軽い休憩をとらせる。


 特に酷い死に戻り方をしたプレイヤーの中にはビビッて青い顔をしている者もおり、水を飲ませて落ち着かせてやる必要があった。


 どうやら、グラシャラボラスの巨体で踏み潰される程度は序の口らしい。俺が最悪だと思ったのが、掴まれて飲み込まれるパターンだ。さすがに咀嚼されるような事はないが、口の中に放り込まれるシーンで相当な恐怖を覚えるらしい。


 あとは、飲み込まれるのではなくて、ぶん投げられるパターンもある様だ。これはこれで、超高層紐なしバンジーである。高所恐怖症でなくとも恐ろしいだろう。


 俺はどっちもゴメンこうむりたい。と言う事で、代わりに戦ってくれている戦闘部隊のプレイヤーたちには出来る限りの支援をしてやらないとね。


 死に戻ったプレイヤーに聞いたところ、戦闘は俺が思っていたよりも厳しいようだった。


「グラシャラボラスの攻撃がかなり激しくてさ。近寄れないんだ」

「じゃあ、ダメージソースは魔術か弓か?」

「いや、大技の後に守護獣装備持ちが一斉に攻撃したりもしてるよ。ただ、油断してると状態異常で麻痺らされてさ」

「だから調合班が慌ててるのか……」


 パターンを解析するために挑んだプレイヤーたちから、麻痺攻撃の話は出なかった。人数が増えたことでパターンが変化してしまったのかもしれない。


 アンチパラライズはほとんど用意していないはずだ。そもそも、材料があまりないらしいし。俺も調合があるから手伝った方がいいか?


 料理班は既に料理の増産を始めているが、俺が抜けても問題ないだろう。


「なあ、ふーか。俺、調合班の手伝いに行こうかと思うんだが」

「あー、それが良いかもしれませんね。メチャクチャ慌ててるみたいだし」

「じゃあ、ちょっと行って来る。何かあったら呼んでくれ」

「うん。いってらっしゃーい」

「あ、ちょっと待って白銀さん!」

「なんだアメリア?」

「オルトちゃんは置いて行って!」

「……行って来る」

「あーん、ちょっと待ってよ~」


 まったく、うちの子たちは人気過ぎだろう。


「あのー、調合班の手伝いに来たんですけどー」

「ええ? 白銀さん? 料理班はいいの?」


 対応してくれたのは、調合班のリーダーである男性プレイヤーだ。金髪エルフのイケメンさんである。


「あっちは大丈夫だ。それよりも、こっちが大変そうだって聞いたもんで」

「助かるよー! 調合のレベルは?」

「17だ」

「そうか……」

「もしかして、役に立たないか?」

「いやいや、そんなことないよ! ただ、アンチパラライズだけじゃなくて、パラライズレジストも作ってるんだ。そっちは中間素材を作るのにスキルレベルが20必要でね」


 詳しく聞くと、麻痺を治すアンチパラライズと並行して、麻痺耐性を上昇させるパラライズレジストという薬を作っているらしい。まあ、そっちじゃお役に立てそうにないから、俺はアンチパラライズかな。


 俺の予想通り、俺はアンチパラライズの作製班に交ざることとなった。


 レシピを教えてもらい、あとは用意されている素材で黙々と調合を行っていく。最初の数回は品質が下がってしまったが、慣れれば普通に調合が出来た。


 張り詰めた空気が分かったのか、うちの子たちも騒いだりしない。と言うか、じっとしているのが嫌なのか、早々にどっかに遊びに行ってしまった。


 数分前にチラッと見えたが、オルトは料理班にいるようだ。あそこなら皆がちやほやしてくれるからね。


 クママは休憩中の女性プレイヤーの前にいた。どうやらクママのファンらしい。多少でも役に立っているのなら良かった。


 リックは調合班が作業しているゴザのすぐ横にある木の上で昼寝中だ。上を見上げると、枝からはみ出したフサフサの尻尾だけが見える。落ちてきたりしないよな? 調合中の薬の上にでも落ちたら、土下座じゃ済まないぞ? 切腹物だ。頼むから大人しくしていてほしい。


 サクラだけは俺の後ろで見守ってくれている。俺に付き合ってくれるのはサクラだけだよ! まあ、樹の精霊だから、ジッとしているのが得意なだけかもしれんが。時おり、他のプレイヤーの補助をしたり、目が合ったプレイヤーに手を振ったりしている。


 そんなサクラのおかげで調合班のテンションはアゲアゲだ。特にアンチパラライズ作製班は男性プレイヤーが多く、サクラが近くで見ていることで、彼らのモチベーションの上がり方が半端ないのだ。


「サ、サクラちゃんにいいとこ見せるんだ!」

「サクラたん可愛い」

「ゲームを始めてから初めて女の子と触れ合っている!」


 女の子って……モンスだぞ? そりゃ、外見は可愛いけど。それでいいのか? いや、モチベーションがアップするならいいけど。


 他のプレイヤーたちのハイテンションに唖然としていたら、サクラが不思議そうな顔で俺を見ている。


「――?」

「おっと、集中集中」

「――♪」


 とりあえずうちのサクラは超可愛いってことだな。


少々忙しく、次回は26日更新予定です。

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