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115話 調理開始

「うわー……」


 俺は目の前に広がる光景に思わず呻き声を漏らしていた。


「味噌が思ったよりも集まりましたね」

「あとは果物類が相当数あります」

「紫柿、緑桃、白梨ですね」

「肉もアタック・ボアの肉以外も相当数の提供がありました」


 俺の前で、料理スキル持ちのプレイヤーたちが集まった食材のチェックをしている。中心にいるのは、このサーバーで最も料理レベルが高い、ふーかという女性プレイヤーだ。


 ふーかはすでに特殊2次職のシェフに転職しており、スキルレベルは30超えという料理人プレイヤーである。


 他には、アメリアなどの姿もあるな。俺と同じテイマーなので、初期スキルに料理が含まれているし、結構スキルを鍛えている様だ。


 それにしても壮観と言うか、やり過ぎと言うか。まるで食べ物系のCMの様な光景だな。プレイヤーたちから集まった食材が、宿の食堂のテーブルの上に所狭しと並べられていた。


 宿の主人にキッチンを貸してもらえないかと相談したら、こちらでも快く貸してくれたらしい。村人と仲良くしてきて良かったね。


 現在時刻は6日目の13時。


 正午と同時に6日目の中間結果の報告メールが来たが、今日はささっと目を通すだけにしておいた。どうせ大した変化はなかったしね。サーバー貢献度と、サーバー順位は1位をキープ。個別ランキングは95位にまで後退してしまったが、今はそれどころではないのである。

 

 今から開戦予定である明日の朝までに、様々な料理を作り上げなくてはいけない。だが、まずは試作と指導だな。


 今ある材料で料理を作りつつ、他の料理人たちに作り方を教えるのだ。


「えーと、とりあえず豚汁から取り掛かるか」


 コクテンたちにも、HPの自動回復速度と体力、精神力の上昇が付いている豚汁を優先してほしいと言われているので、まずはその指導からだ。


「レシピは既に渡してあるけど、1回俺が作って見せるから」

「お願いします白銀さん!」

「まずは魚に乾燥をかけて、煮干しにする」

「なるほど」

「次にシイリ茸に乾燥をかけて――」


 皆が真剣な表情で俺の料理を見ている。何が悲しくて自分よりも遥かに高レベルのプレイヤーたちに偉そうに講義を垂れなくてはいけないのだ。むしろ俺が教えてほしいくらいだ! いや、すでに豚汁などのレシピの代わりに、彼女たちから色々なレシピを教えてもらったけどね。むしろ得したとは思う。それでも、居たたまれなさはどうしようもないのだ。


「これで完成。品質★7は維持できたみたいでよかった」


 浄化水を使った時と品質が変わらない。多分、出汁を取るときに小魚の煮干しだけではなく、乾燥シイリ茸も一緒に使ったことが功を奏したんだろう。


「味が気になるので、試食して良いですか?」

「ああ、いいぞ」

「あ、ずるーい、わたしも!」

「僕にもください! 味は重要ですからね!」

「うんうん、味のチェックをしないと」


 皆が先を争う様に豚汁をその場で食べ出す。バフがついてりゃ、不味くなければ味なんかどうでも良い気がするけど……。いや、単に美味しそうな匂いに負けただけか。


 俺も食べとこ。


「うん、まあまあだな」


 ただ、味は悪くないけど、やっぱり見た目がね……。群青ナスと青ニンジンのサイケデリックな色彩は、どうしても食欲を失わせるんだよな。リアルでも、青いふりかけを使って食欲を失わせることで食事量を減らすダイエットがあったはずだ。まあ、バフ優先だから、今回は諦めてもらおう。


「続いてはピザでーす」

「おおー! ピザ!」

「俺、大好物なんだよなー」


 実はチーズが思いのほか多く手に入った。酪農家のアバルさんのところで手伝いイベントをきちんとこなせば、何度でも売ってもらえると分かったのだ。


 1人1回だが、結構な人数のプレイヤーが挑戦したので、ピザに使う分は十分に確保できている。


 むしろ、白トマトの方が微妙だ。足りるかな? とりあえず白トマトソースを作り、最もオーソドックスなタイプのピザを作ることにした。生地の上にトマトソースを塗り、白トマト、群青ナス、バジルル、チーズ、オリーブオイルを乗せていく。


 それを見ていた料理人たちから、疑問の声が上がった。


「なあ白銀さん、なんで雑草を乗せてるんだ?」

「え?」

「そうそう、俺も気になってたんだ。」


 そうか、彼らはまだ植物知識スキルについて知らなかったか。


 ただ、タゴサックがもう掲示板に書き込んでいるだろうし、第5エリアのハーブ栽培セットの存在もある。どうせすぐに広まるだろうし、ここで教えても問題ないだろう。というか、この時点で誤魔化すのがめんどい。


 なので、俺は植物知識というスキルが存在することと、そのスキルのおかげで雑草の中に混じっているハーブを見分けられるようになると教えることにした。


 詳しい取得方法は各自調べてもらうという事で。頑張ってくれ。かなり気合が入っている様だから、皆すぐに取得するだろう。掲示板で宣伝してくれていいからね。


 特にトップ料理人のふーかが大喜びだ。なんと、彼女は俺の売っていたハーブティーの茶葉の大ファンだったらしい。薬草などを工夫して再現を試みていた様だ。


「まさか雑草だったなんて! これで自作できるわ! 白銀さんありがとう! このお礼は必ずしますから!」

「まあ、期待しとくよ」

「うん!」


 その後は、乗せる具材を少し工夫して、何度か試作してみた。俺はシンプルなピザが好きだが、他の料理人たちは具材たっぷりのアメリカンピザが食べたい様だな。


 ソースを工夫してみたり、肉や魚を乗せたりするのは可愛い方で、アメリアはハチミツと果物を使ったデザートピザを考案していた。いやー、女性の発想には驚かされるね。甘いピザとは盲点だった。


 ただ、具材を変えるとバフの効果も変わってしまい、大概のピザには量産する程良い効果が付かなかった。いや、毒消しやHP回復などの優秀な効果ではあるのだが、レイドボス戦の前に食べるとなると、やはりMP消費減少の方が上なのだ。


 結局、今回量産することになったのは、ふーかが作った照り焼きピザくらいだな。これも面白い発想だ。


 醤油にハチミツを混ぜて照り焼きソースを作り、ウサギ肉、群青ナス、キャベ菜を乗せて焼いたピザである。リアルでも俺はマルゲリータ派なので、照り焼きは全然頭に無かった。


名称:ピザ・1ピース・テリヤキ

レア度:2 品質:★6

効果:使用者の空腹を13%回復させる。2時間、魔術詠唱速度が上昇。


 貴重な醤油を使う事にはなるが、食べるのは魔術師だけなのでそこまで大量に作らずに済むだろう。


 その後は、フルーツジュースやほうとう、ロールキャベツにラタトゥイユなど、この数日で試してみた複数のレシピを披露していった。あまり種類を造りすぎても食材が足りるか分からないので、皆で相談して量産する料理を決めて行く。


 結局、最大HPを上昇させるロールキャベツに、他と食材が被らないミックスジュースを作ることにしたのだった。


「じゃあ、あとはふーかが仕切ってくれ」

「任せてください! みんなもよろしくね!」

「「「おう!」」」


 美味い物を食べたおかげか、士気は高い。結果的に試食会をしてよかったな。


「じゃあ、豚汁班、ピザ班、ロールキャベツ班、ミックスジュース班に分けて行くから」

「よっしゃ! こんな大量調理が出来る機会そうそうないからな! 腕が鳴るぜ!」

「スキルの熟練度を稼ぐチャンスよ!」


 さて、俺は豚汁班に振り分けられたようだし、頑張りますか。面倒だけど、手を抜くわけには行かないからな。



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― 新着の感想 ―
転剣から楽しく読ませてもらってます。テイムモンスに対する主人公の愛情がありありと伝わってきて読んでてとても楽しいです。 最初の方で人付き合いがダルい的な事書いてたし、人それぞれのプレイスタイルは自由…
そんなに嫌なら 読まなければいいじゃん。 作者様のテンションを下げる様な 感想を書き込まないで欲しいですね。 それでエタった作品を幾つも知ってます。
イベントに参加して周囲がある程度期待してくれてる中で「面倒」というのはあまりにも周囲のプレイヤーに対して失礼な気がします。
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