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106話 中ボス撃破報酬

 悪魔を倒した後。


 リッケたちを連れて神聖樹の森から洞窟に向かおうとしていた俺たちだったが、ちょっと遅かった様だ。


「おい、あの化け物熊だ!」

「げ、まじか!」

「間に合わなかったかー」

「やべ!」


 洞窟の出口から、ガーディアン・ベアがのしのしと歩いてくるのが見えた。


「……」

「……」


 静かに見つめ合う俺たちとガーディアン・ベア。


 ゴクリ。


 自分がつばを飲み込む音が、妙に大きく聞こえた。うわー、緊張感がヤバい。黒い靄は消えたようだが、どうなんだ?


「……ガウ」

「え? えっと、どういう事?」


 ガーディアン・ベアが急にその場で伏せて丸くなってしまった。そんな熊に、リッケたちが駆け寄っていく。いきなりだったから止める暇が無かったぜ。


「守護獣様!」

「ガウ!」

「元に戻ったんだね!」

「ガウガウ」

「よかったー!」


 次々に自分の体に飛びついてくるリッケたちに、ガーディアン・ベアは優しい視線を向けている。どうやら、リッケたちが語っていた穏やかな性格に戻ったらしい。


「クマクマ?」


 同じ熊として興味があったんだろうか。クママがポテポテとガーディアン・ベアに近づいて行った。そして、数秒見つめ合ったかと思うと、何やら「ガウガウ」「クマクマ」とやり取りをし始めた。


 通じ合っているんだろうか? いや、通じ合っているんだろう。すぐにクママがガーディアン・ベアの背によじ登り始めた。どうやら遊び始めたようだ。


 それを見たオルトとリックもその巨体に駆け寄り、纏わりつき出した。ガーディアン・ベアがオルトに手を伸ばしたので一瞬ヒヤリとしたが、オルトが自分の背に昇るのを手伝ってくれたらしい。


 前回襲われた時の狂暴な姿の印象が強すぎてどうしてもビビってしまうが、やっぱ優しいクマさんに戻ったんだろう。


「ムムー!」

「キュキュー!」

「クマクマー」


 うちの子たちがガーディアン・ベアの背中を滑り台代わりにして滑り出した。さすがにやり過ぎじゃない? だが、クマさんは穏やかな表情のままだ。出来たクマで良かった。


「戦闘にはならなさそうだな……」

「助かった~」


 マルカたちも安堵の声を漏らしている。戦闘になったら絶望だからね。


 しばらくして、ようやくリッケたちから解放されたガーディアン・ベアが、のそのそと歩き出す。神聖樹の方へ行くのかと見て居たら、少し行ったところで立ち止まり、こちらを振り返った。


「ガウ」


 何だ? 熊はその場でじっとこちらを見ている。すると、リッケやクママたちがガーディアン・ベアの後に付いて駆け出した。さらに、ガーディアン・ベアがまるで付いて来いとでも言うかのように、手招きをした。


「なあ、あれって来いって言ってるよな?」

「そうだと思うけど……」


 まあうちの子たちが懐いているし、付いていってみるか。俺はマルカたちと共にガーディアン・ベアの後を追った。


 やはり神聖樹のところまで戻ってきたな。そのまま熊が神聖樹に近づき、自らの額をそっと神聖樹の幹にあてた。その瞬間、神聖樹が光り輝く。


「おおー」

「綺麗」

「だなー」


 巨樹が青白い光を纏う幻想的な光景だ。俺たちは思わず見入ってしまった。ゲームの中じゃなきゃ見れない光景だよな。


 そのまま感動していたら、その光がまるで蛍の様に細かい光の玉となって、俺たちに向かって飛んできた。まあ危険なものには見えなかったが、ちょっと驚いてしまったぞ。


《プレイヤーによって、異変が1つ解決されました》

『ユートさんに、称号『神聖樹の加護(イベント限定)』が授与されます』


称号:神聖樹の加護(イベント限定)

効果:賞金4000G獲得。ボーナスポイント6点獲得。大悪魔グラシャラボラス及びその眷属に対して与ダメージ上昇。被ダメージ減少


 へえ、称号が貰えたな。イベント限定って言うのは、イベントが終了したらなくなっちゃうってことか? それだと微妙だな。効果も、戦闘に直接参加する可能性が低いからあまり良くないし。まあ、ボーナスポイントが多めだからそこは嬉しいけど。


「きゃぁぁ! 称号よ!」

「おおおおお! まじか!」

「すす、すげえ!」


 あれ? そんな喜ぶ?


「白銀さん! なんでそんなに冷静なの?」

「称号だぞ?」

「いや、白銀さんは称号をたくさん持ってるって噂だ」

「なるほど、慣れてるのか!」

「さすが白銀さんだぜ」


 なんか勝手に感心されてしまった。初めて称号を貰った人にとっては嬉しい物なのかもな。俺は初称号からして微妙だったから、素直に喜べなかったけど。


「ガウガ」


 ガーディアン・ベアがまるで土下座するかのように、頭を下げた。いや、本当に感謝してくれているのかもしれない。


「ガウー」

「お、なんだ?」


 頭を上げたガーディアンベアが、遠吠えの様にか細く鳴いた。すると勝手にステータスウィンドウが開いたかと思うと、そこに文字が表示される。


『次の中から、報酬を選択してください。守護獣の剣、守護獣の槍、守護獣の――』


 守護獣シリーズの武具がズラーっと並んでいる。性能は俺のレベルからしたら結構高い。


 例えば守護獣の杖だが、俺の手持ちの水樹の杖+と比べても、高性能だろう。


名称:水樹の杖+

レア度:3 品質:★6 耐久:130

効果:攻撃力+3、魔法力+21、水系魔術消費軽減・小、水系魔術威力上昇・小、火系魔術消費上昇・中

重量:1


名称:守護獣の杖

レア度:4 品質:★10 耐久:200

効果:攻撃力+10、魔法力+30、大悪魔グラシャラボラス及び、その眷属に対し、与ダメージ+100%。

重量:3


 ただ重さのせいで装備できんし、そもそも効果が微妙なんだよな。戦闘メインの人だったらかなり良い効果なんだろうが、俺如きの魔術のダメージが100%上昇したって、大した効果はないだろう。


 マルカたちに聞いてみたら、性能は微妙だが、効果のおかげで悪魔戦では役に立つという回答だった。


 うーん、どうしよう。俺でも使えるものは無いかね……。防具などもあるが、重量のせいで装備は出来んし。適当な武器を貰って、使える人に渡すのが良いか?


 そう思いながら画面をスクロールしていくと、一番下に守護獣のインゴット×2という項目が目に入って来た。


 インゴットか……。これで作ったら、他の武器と同じ効果を持った武器が作れるのか? いや、でもイベント中に作れなければ意味ないしな。でもこれを武器や防具に加工できたら、ボス戦で役立つよな?


 どうせイベントが進めば大悪魔グラシャラボラスとやらと戦わなきゃいけなくなるだろうし、その時に役立つだろう。コクテンたちに武器を渡せれば、かなりの戦力向上になるんじゃないか?


「なあマルカ、村に鍛冶屋ってあったっけ?」

「どうして?」

「いや、一番下にあるインゴットを武器にできたら、普通に武器を貰うよりも数を揃えられるんじゃないか?」

「インゴット? えーっと……あった、これね。へえ、いいじゃない! 皆でこのインゴットを選べば、私たち以外にも守護獣装備を行きわたらせることが出来るかも」

「だよな? ただ、鍛冶師が居ないと無理な作戦だからさ」

「あー、そういう事ね。でも、大丈夫よ。このサーバーには有名な鍛冶師が居るから」

「へえ、そうなのか?」

「うん。エロ鍛冶師のスケガワさん」

「何鍛冶師って?」

「エロ鍛冶師」

「どんな事したらそんな情けない異名が付くんだ?」


 エロ鍛冶師? 俺だったら絶対にゲーム辞めてるんだけど。俺以上に可哀想な人がいた!


「女性は割引で作ってくれるのよ。しかも、セクシー系衣装ならさらに割引」

「あー、そういう事」


 紛うことなきエロでした。


「でも、男性が割高って訳じゃないのよ? 単に、女性なら値引きしてくれるってだけで」

「そいつはその呼び名を嫌がっていないのか?」

「なんか、自分で名乗り出したらしいよ?」

「え? なんで?」

「さあ?」


 会うのがちょっと怖いな。まあ腕は確かだって言うし、その人に頼めば何とかなるか?


「私たちはインゴットにすることにしたわ」

「良いのか?」


 インゴットを使って武器を作っても、このリストと同じレベルの装備になるかは分からないし。自分たちの活躍を考えるなら、武器を貰う方が確実だろう。


「うん。今後のボス戦のこと考えたら、その方がいいだろうしね」

「なら、俺もインゴットにしておこう」


 俺が適当に貰っても宝の持ち腐れだ。だったらインゴットで有効活用しよう。


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