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奴隷たちの実力確認

「こんにちは、これから外へおでかけですか?」

 はじめて町に来たときに門で会った衛兵が今日も門番をおこなっていた。


「ええ、今日から冒険者ギルドの依頼を本格的にやろうと思ってまして」

「3人は同じパーティですか。はい、ギルドカードありがとうございます。ふむふむ、お連れさん二人は奴隷ですか。来た時は記憶喪失で何も持っていなかったのにやるもんですねぇ」



 町の外では薬草をまず1株採取し、それを見本に二人にも同じものを取るように指示しながら川辺へと進みスライムを探すことにした。

 川辺についた時は俺が8株、ドヤッキー7株、ドンズルー2株という成績だった。

 スライムは3人で適当にスライムゼリー16個拾ったところで終了にする。

 あまりに弱すぎて二人の実力をみるのに全然役立たない。


 森へ行くとまずはウサギが見つかった。

 茂みの向こうでモグモグと草を食べているようだ。

 鑑定!



名前:フェザーラビット

特徴:耳が大きくて羽のようにみえるためこの名前がついた。動きも軽くすばしっこいことから名前に羽がついたという説もある。



 弓があればよかったと思ったが持っていないので、二人にはそのまま待つように指示し音がしないよう茂みの脇から一気にウサギへと飛び掛ったが逃げられてしまった。

 町に帰ったら弓か何か飛び道具を用意しよう。


 ドヤッキーがゴブリンを発見した。ゴブリン3匹にゴブリンアーチャー1匹だ。

 そういえば、武器をひとつ用意していたのだ。ズボンのベルトをドヤッキーに持たせる。

 先の部分を手に持ち鞭の要領でバックル部分を敵に当ててみるよう説明しておいた。

 ドヤッキーにはできるならば弓を壊さないようにゴブリンアーチャー倒すよう指示を与えておく。

 ドンズルーは武器がないので今回は敵を攻撃せずに辺りを警戒させることにした。


「了解でんねん」

 ドンズルーが声を潜めることなく普通に喋ってしまったので、ゴブリンがこちらに気がついた。奇襲が失敗だ。

 向こうとの距離は約15メートル。まずはゴブリンアーチャーが弓を射掛けてくる。今までは一方的にこちらから攻撃を仕掛け反撃も受けずに倒していたが、今回はじめて敵からの攻撃というこで一瞬体が強張ったが、矢はへろへろな速度で飛んできたためなんなく避けることができた。

 その間にドヤッキーとドンズルーは駆け出している。


 ドヤッキーはゴブリンアーチャーが次の矢を構える前にベルトで2度、3度、それでも倒れないので何度も何度も叩いている。

 待機を命じていたはずだが、敵から攻撃を受けたので反撃したのかそれとも何も考えていないのかわからないがドンズルーは敵の群れに突進していく。もちろん武器は持っていない。

 しかし足が遅く、敵へと辿りつく前に俺の方が先に着き攻撃を仕掛けた。1匹は肩から袈裟切りに、もう一匹は鎧に覆われていない腹部を横なぎにしたところでドンズルーが到着。

 ドンズルーの動きは鈍くゴブリンの攻撃を受けそうだったので、ゴブリンを蹴り飛ばす。ゴブリンは倒れただけで起き上がろうとしている。ドンズルーは倒れているゴブリンに追撃をしかけ踏みつける。

 そこで戦闘は終わった。


 ベルトを武器にするのはいいアイデアかと思ったがそうでもなかったようだ。

 傷を与えることはできるが、殺傷力が低く致命傷を与えることのできるものではなかった。

 ゴブリン達からは錆びたショートソード3本、小さな木の弓を1つ、皮鎧1つを手に入れた。

 二人の戦い方がわかったので、一度町へ戻ることにした。

 まだ昼前だしこのまま戦うよりは装備を整えて出直したほうが結局は効率がいいと考えたからだ。


 武器屋では錆びたショートソード3本を研いでもらう。実は昨日は研いでもらうのを忘れていて、俺は錆びたまま使っていたのだ。

 3本で銅貨60枚。約6000円なら妥当なところか。

 木の弓はドヤッキーがたぶん使えるというので持たせ、矢を購入しておく。

 俺は弓は使ったことがないので練習しないと使えないだろう。ドンズルーは聞くまでもなく無理だと勝手に判断した。



「わしはこれでいいでんねん」

 いつの間に拾ってきたのだろうか、太い木の棒を持っていた。

 ドンズルーはドヤッキーに片方を削り持ち手の部分を作るよう頼んでいたが、研ぎが終わるころには削り終わっていた。

 うん、あれだな。

 鑑定!



名称:棍棒

特徴:太い木の棒から作られた殴打武器。ドヤッキー作



 次は防具屋だ。

 自分とドヤッキー用に木製で表面に皮が貼ってある小型の盾を2つ購入した。ドンズルーは使わないというので盾は無しだ。

 その代わりにドンズルーには青銅のハーフプレートを買い与えた。

 皮の鎧は胸部のみしか保護しておらず腹部などががら空きの胸当てタイプだが、これは頭部と腕部を除く上半身全体をカバーしている。


 ほんとのところは籠手とレッグアーマーも買いたかったが、ハーフプレートを買った時点で所持金は銅貨26枚のみとなっていた。

 先ほど採ってきた薬草とスライムゼリー、ゴブリンをギルドに持っていけば今日の夕食くらいは食べられるだろうが今のところその程度しかお金がない。

 無駄に食費もかかるし、装備に金もかかる奴隷を買ってしまったのが何気にきつい。

 返品してケホケホ少女にするべきだろうか。


「お前ら今ので今日の夕飯を食う金さえも残っていないから、しっかり稼げよ」

「アイアイサー」「それは困るでんねん。死ぬ気でやるでんねん」




 今度の森では順調だった。

 フェザーラビットもドンズルーの弓で5匹狙って3匹仕留めることができた。

 討伐対象かどうか、討伐部位がどこかわからないが肉も毛皮も売れそうだったので俺が持つといいつつこっそりアイテムBOXに放り込んだ。

 確認していないが、ファンタジーの常識からいって中の時間は止まっているかとても遅く劣化は防げるだろう。



 ドヤッキー目掛けて大きな塊が突進してきた。咄嗟に体が動いてしまった。

「危ない」声を掛けつつドヤッキーを突き飛ばす。

 目前に迫るは茶色い物体だ。

 だがトラックほどの迫力はない。体制を立て直すと危なげなく避けることができた。

 すれ違った茶色い物体は足を止めるとこちらに向きなおし再度俺へと迫ってきた。

 ドンズルーが俺の目の前に立ちふさがり茶色い物体の突進を止め、手にはバンパー、もとい牙を掴み「どっせい!」横投げに投げる。

 茶色い物体は木にぶつかり目を回している。

 そこにドヤッキーがとどめを刺す。体重40キロはあろうかという猪だった。

 重いかと思ったが、ドンズルーの袋に入れ持ち帰ってもらうことにしよう。

 


名称:ワイルドうり坊

特徴:ワイルドボアの子供のうり坊。子供とはいえその重量と牙による突進の破壊力は相当なものである。

 


 子犬くらいの大きさの蟻が2匹、以前倒して放置していたゴブリンを咥えて引きずって運んでいたので倒した。

 1匹はドンズルーの棍棒で、もう1匹はドヤッキーと俺のふたりでショートソードで切り刻む。

 餌を運んでいる途中だったので一方的に攻撃でき楽だった。

 討伐部位は不明だがとりあえず触覚を回収しておく。



名称:ジャインアントアント

特徴:巨大な働きアリ。顎の力がとても強い。数が多い場合は危険なので逃げた方がよい。



 狩は順調だった。目に付いた獣やモンスターを片っ端から狩っていく。

 ほとんど苦戦というものもなく、順調すぎたのがよくなかった。

 ゴブリンの耳と装備を回収しているときに遠吠えが聞こえた。距離はそれほど遠くない。

 狼だろうか。向こうから来てくれれば探す手間も省けて楽かななんて考えつつ、とりあえず少し開けた場所へ行き迎撃準備を整える。


 しばらく待っても襲ってくる気配はない。こちらへは来なかったのだろうか。

 用心しつつ移動するよう指示をだそうとした時に一瞬気が緩んだ。

 森の狩人たちはその隙を見逃さなかった。

 木々の間から4匹が一度に襲ってくる。1匹が前方から1匹が右方、2匹が左方から。


「気をつけろ」

 

 前方の1匹が俺に向かってくる。剣を振って迎撃を試みるが、風を切る矢のように地を走る獣を捉えることができない。

 太ももに狼の吐く息を感じ噛まれたっ、そう思った

 しかし狼は背中に矢を受け落ちる。太ももを狙った攻撃は顎を閉じることなく甘噛みのまま俺の足には縦に赤い線をつけていく。軽い擦り傷程度で戦闘に支障はない。

 ドヤッキーが弓を左に持ち右手でにっこり笑顔でサムズアップしている。

 あっ、噛まれた。

 

 確かに助かったけど、ここでそれはないだろ。

 ドヤッキーは靴に噛み付かれて悲鳴を上げながら弓で狼を叩いている。

 ドンズルーは2匹に襲い掛かられていた。1匹目を狙った横殴りのスイングはかわされたが、そのまま勢いが止まることなくもう1周して戻ってきた棍棒が運よく2匹目を捕らえる。

 打たれた狼は大きく弧を描き木々の間へと吹っ飛ぶ。

 それに驚いたのだろうか、先鋒の攻撃が終わっての本体のお出ましだろうか。20体近い狼がゆっくりと姿を現した。


 逃げるべきだろうか。それとも留まって戦うべきだろうか。

 経験が不足しているため、最適な答えを出すことができない。


 TVで見た野生動物の番組を思い出してみる。

 確かああいった動物が大型の獲物を狩る場合は頸部けいぶに噛み付き、引き倒して動かなくなるまでそのまま噛み付いて倒す。いやいや、これじゃない。

 包囲し獲物が弱るまで、見張りを交代しながら何日でも辛抱強く待つ。狼は追跡や待ち伏せ、忍び寄って狩りをすることを得意とする。

 大型の獲物を狙って反撃を受けた際に無理と悟れば諦める賢さを持つ。

 うん、これだ。逃げるよりなんとか迎撃するほうが助かる確率は高いだろう。

 

「このまま身を守りつつ迎撃。無理はするなよ、追い返すことを念頭においていけ」

「アイアイサー」×2


 ドヤッキーは盾で狼の攻撃から身を守りつつも隙をみては(錆びてない)ショートソードで斬りつけているが、守り重視のためなかなか狼を倒すことができない。

 ドンズルーは棍棒を振り回しているが、狼には簡単に避けられている。だが当たれば狼は吹っ飛び、一撃で戦闘不能に陥いらせている。撃破数でいえばドヤッキーより断然上だ。

 俺はというと、狼の噛み付き攻撃は籠手を噛ませ、爪での攻撃は盾で防ぎつつ(錆びてない)ショートソードを振るっていた。

 敵に対しての不意打ちや初撃の一撃はある程度狙って攻撃することができるが、あっちを切りつけたり、こっちを切ったりと頻繁に狙いを変えることや連続攻撃は剣を使い始めて間もない俺には無理だということが分かった。

 そのため運よく手に入れていた鉄の爪の付いた籠手を使っての攻撃へ変更する。


 右腕の籠手を噛ませることにより狼は一瞬動きを止めるので、その隙に左手の爪で狼を切り裂いていく。左側から来た場合は左籠手で防ぎ右の逆手に持ったナイフで攻撃する。

 手に近い場所にアタックポイントがあるほうが感覚的にしっくりくるのだろう。

 この方法でどんどん狼を倒していく。


 慣れもあるのか、ゴブリンを最初に倒した頃の危険なほどの高揚感もなく今日は案外冷静に戦闘出来ている気がする。

 しばらく戦い、狼が逃げていったときには3人ともヘトヘトだった。


 ドンズルーは腕や足を結構怪我していた。ドヤッキーはいくつか擦り傷がある程度で大して怪我もしていないようだ。俺はというと右太ももを一箇所かまれ、上腕部や腹部、脚部を爪で引っ掻かれている。

 足は歩けないほどではないが、それなりに痛い。


 ドヤッキーの提案で皆薬草を1つずつ食べたところで、ヒールの魔法を覚えていたことを思い出し一人ずつヒールをかけていった。

 ヒールをかけると血が止まり、噛まれていた傷も塞がり体力も回復した。流石回復魔法ヒール様だ。

 ちなみに薬草を食べると流血は若干少なくなった気がし、疲れというか体力が少し回復した気がすると気休め程度の効果でしかなかった。


 落ち着いたところで辺りを見渡すといたるところに血溜まりができている。倒した狼を数えてみると、与えた傷から分かったのだがドヤッキー3、ドンズルー9、俺8と合計20体も倒していた。

 結構大きな群れだったようだ。

 討伐対象かはわからないが、牙が討伐部位だろうと予想して牙を全部回収していく。毛皮や肉が売れるかもと考えドンズルーに2体袋に入れさせておいた。

 残りは持ちきれないと放置でその場を離れたが、トイレと嘘をつき残りも全部アイテムBOXに回収しておく。



名称:ウルフ

特徴:群れで狩をする。嗅覚に優れている。俊敏で攻撃力も高くやっかいな相手である。





 陽が傾いてきたので今日はそろそろ切り上げた方がいいだろう。


 スライム16匹、フェザーラビット3匹、ウルフ20匹、ジャインアントアント2匹、ゴブリン10匹、ゴブリンアーチャー2匹、ワイルドうり坊1匹 


 相当数のモンスターや獣を倒した。二人に聞いてみたところ、今まで生きてきたより今日一日で倒したものの方が多かったとのことだ。


 冒険者ギルドではゴブリンやスライムゼリー、薬草の納品をおこなった後ランクの更新をおこなってもらった。

 ランクを上げておいたほうが受けられる依頼が多いためだ。

 俺は更新料の銀貨1枚を払い銅のプレートを卒業しDランクの鉄プレートになった。他二人はまだ変更なしだった。


 Dランクとなったことによりウルフの討伐依頼が受注可能となっていた。予想通り牙が討伐証明部位だったので納品をおこなう。

 皮も募集があったが剥いでいない状態だったので今回は見合わせることにした。肉についは残念なことに売り物にはならないので依頼はないそうだ。

 ジャイアントアントも予想通り触覚が討伐証明部位だったが、依頼は既に他の人が受けて残ってなかったのでそのまま持ち帰ることになった。


 ワイルドボアは討伐証明部位はなく、肉や皮の募集で依頼があることが多いが、既に依頼は残っていなかったため肉屋を紹介してもらい直接売りにいく。

 アイテムBOXに入れておけば劣化は防げたかもしれないが、直接荷物袋で持ち帰ったので早々に処理する必要があった。

 肉屋では血抜きや皮を剥ぐ方法を教えてもらい、ちょうどウルフが2体あったので練習がてら処理しておく。

 冒険者が覚えておけば、こちらとしても質のいい肉が手に入るからとのことから教えてくれたらしいが、ごつい見た目に似合わずいい親父だ。

 

 今日の稼ぎは銀貨7枚と銅貨33枚だった。三人でこれはまずまずとは言えるがもう少し稼げると思ってた。

 魔法を覚えれば遠距離も楽になるかと思ったが、魔法屋で売っている魔法を覚えるための水晶は初級のものでも銀貨20枚だったので今回は諦めるしかなかった。

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