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冒険者ギルド登録

「よう、隊長さんなんか用かい?」

 カウンターの奥に座っているおばさんが声をかけてくる。

 ちっ、ここは美人のお姉さんが常識だろ。声には出さず脳内で不満の声をあげてしまった。


「あー、えーと、こいつの冒険者証を作ってくんね? ついでに犯罪歴があるかも確認したいんだわ」

「それじゃぁ兄ちゃんちょっとこっち来てこの上に手を置いとくれ」

 カウンターに案内され材質不明の板に手を置くよう言われた。


「これって何ですか?」

「ギルドカードを作るためにあんたが誰か調べる必要があるのさ。そこに手をおけば一発であんたが誰か分かるってもんさ。原理はわからないけどよく出来たものさね」

 紙に名前とか出身地を書くのだと思っていたが、驚きのシステムだ。

 そういえば、名前を変更できたはずなのでここで変えておかなくてはいけないだろう。流石に日本名はまずいよなぁ。この世界の名前はどういったものなのか少し調べる必要があるかもしれない。


「隊長さんのお名前ってなんでしょうか」

「俺か、俺はラムズだ」

「受付のお姉さんのお名前を伺ってもいいでしょうか」

「お姉さんなんて、いやだねぇ。この歳でそう呼ばれるなんて恥ずかしくなっちゃうじゃないかさ。リタだよ」

「リタさんですか。素敵なお名前ですね」

 おばちゃんが頬を赤らめているのは放っておいて、大山田広助から名前をとりそれっぽくコウとすることにした。ファミリーネームとか、セカンドネームとかあるかもしれないが、とりあえずこれでいいか。


 ステータス画面を表示させ、名前欄を頭でコウと念じたら名前が変わった。今日から俺はコウだ。もっともここに来る前の世界でもコウと呼ばれてかので違和感はないけどね。


 名前も決まったので板の上に手を乗せると、板に文字が現れたきた。

「もう手を離していいよ」

 おばちゃんに言われて手を離す。


「ほう、コウって名前か。あんまし聞かない名だな」

 少しまずったか。もっとファンタジーに出てきそうな名前にすべきだったかもしれない。

 板を見ると、コウという名前とLv1とだけ書かれている。

 ステータスの数値などは表示されていない。そこはちょっとありがたい。能力成長率UPで俺は後々一般人より高ステータスになる予定なのだ。おっと脳汁でてきた。


「ちょっと待っとくれよ。ほいと」

 おばちゃんがパスポート大の銅の板に名前とレベル、冒険者ランク-、犯罪歴なしと刻んだものを渡してくれた。

「冒険者カードキター、ぱふぱふーどんどん」

 脳内で叫ぶつもりが、実際に声にだしてしまった。

 隊長さんもおばちゃんもどんびきだったが、そこはそれ大人ということでスルーしてくれたようだ。


「お前さんは冒険者としてやっていくつもりかい?」

「はい、今までの記憶もはっきりしませんしお金もほとんどないので生きるためにとりあえず冒険者としてやっていこうと思います」

「わかったよそれじゃぁ」とおばちゃんが説明してくれた。


 冒険者はランク分けされており、上はSから下はEまでありEランクは銅のカード、D、Cランクは鉄のカード、Bランクが銀のカード、Aランクは金、Sランクはミスリルらしい。

 ギルドで依頼を受け、ポイントを貯めていくことでランクはあげることができる。

 当然ランクが高いほど依頼の難易度は高く、報酬もいいとのことだ。

 依頼は受付から見て向かい側にあるボードに貼られ、冒険者は我先にと朝から依頼をとりあうため日中のこの時間はここにはほとんど人がいないそうだ。

 冒険者カードは自動的に表示内容が変わるものではなく、受付で先ほどの板で内容を確認しその都度刻みなおすらしくカードの更新は銅貨10枚で、紛失すると罰金をとられるらしい。



「わかったかい? それじゃぁ次はこっちさね」

 おばちゃんに奥の扉から訓練場へと案内された。

 木刀を手渡され、おばちゃんと手合わせをすることになった。

 えっ、なぜ受付のおばちゃん? と思ったが一瞬で叩きのめされた。


 木剣を正面に構え、間合いを詰めつつ掛け声とともに上段から振り下ろす。と見せかけ横に変化させるつもりが、いかんせん木とはいえ剣を手にするのは始めてのことで(いや、新聞紙を丸めて作った剣なら手にしたことがあるが、ここではそれは別としよう)つまりは完全に初心者のくせになんとなくかっこつけて変化をもたせようとしたわけだ。

 まぁ出来るわけないわな。

 剣は上から斜めに剣筋をずらし、左へ向きを変え胴をなぎ払う……つもりだったのだが斜めから横への変化をするには力不足でひし形を描くように地面に打ち下ろしてしまった。

 そこでおばちゃんから前蹴りをくらい吹っ飛ばされて終了。

 おばちゃん曰く。剣を使うまでもなかったそうだ。

 隊長さんにも笑われていた。


 受付に戻り、ランク-の表示は晴れてランクEと刻まれたのであった。ていうかさっきのは結構恥ずかしかったぞ。テンション駄々下がりだわ。


 続いて薬草採取とスライムゼリーの入手の依頼を受けた。

 今日のところはゆっくりとしたいところだったが、所持金の銅貨6枚では宿にとまることさえできないことがわかったためだ。

 隊長さんとは門のところまで一緒に戻り、俺は町の外へと向かう。

 別れ際の言葉は「お前弱いんだから、危ないと思ったらすぐに逃げろよ」だった。

 自分がこの世界の平均というか一般人レベルの強さかと思っていたが、軟弱な現代日本人より危険と隣り合わせの生活のここの人の方が強いのかもしれないと思うと少し怖くなった。早くレベルを上げなければ。

 

 薬草といっても知識はないので、俺には草とは区別がつかない。

 だが、あってよかった鑑定スキル。

 道を歩きつつ見慣れない草があれば鑑定。


名称:雑草

特徴:毒にも薬にもならないただの草


 いやいや、草っていっても普通は何がしか名前あるでしょ。それが雑草って何だよ。手抜きじゃね。

 明らかに種類が違う草を鑑定してもなぜか雑草表示。

 いくつか鑑定したところでやっと発見。



名称:薬草

特徴:そのまま食べることにより少量の体力が回復する。ポーションなどの回復薬の材料にもなる。



 根っ子ごと引き抜くのはまずそうなので、盗賊からもらったナイフを使い鎌で草刈する気持ちで薬草を刈り取ることにした。

 ひとつ見つけると近くに5株くらいあり、それを4箇所みつけ薬草刈っていく。

 1束で銅貨2枚とのことだったが、1束ってどのくらいなんだろうと考えながら次を探していたが、なかなか見つからないのでスライム退治に変更することにした。

 ギルドの受付のおばちゃんの言うことにはスライムは町近くの川のほとりに結構いるとのことなので川を目指しながら歩いていたのだが――川が見えた頃にスライム発見。


 そいつは俺と数時間前に死闘を繰り広げた奴だ。緑色をした恐ろしい奴。

 奴と睨み合い、一瞬の隙を突いて俺の手刀がコアを貫く。などと妄想しつつ町をでてから履いたスニーカーで核を踏み潰すとグリーンスライムは結合力を失ったのか水のように溶け崩れ、小さなスライムゼリーを残して消えていった。


 スライムゼリーは3個で銅貨1枚だ。

 受付のおばちゃんの言うことには、こいつは子供でも楽に倒せるモンスターで大人同伴で子供達にスライム狩りとして遊ばせる程度の相手なのだそうだ。

 草むらの中から薬草を探すほうが随分面倒なのでこの金額設定らしい。

 俺はレベルアップも考えてスライムゼリーの方に重点を置くことにした。

 グリーンスライムを何匹か倒しながら川のすぐほとりまで来ると、青いスライムを見かけるようになった。



名称:ブルースライム

特徴:水辺の近くに生息していることが多い。ほんの少しだけグリーンスライムより強い。体内にある核が弱点。

 


 強敵出現か? 相手にとって不足はない。脳内でテンションをあげつつ核に狙いをつけて蹴りを放つ。

 ブシャッ。水風船を蹴飛ばしたような感じだ。そう、まさしくそうだった。足に触れる一瞬だけ軽く抵抗感があるが、そのすぐ後風船が破裂し足に水がかかるのだ。

 スライムの成れの果てが足の甲の辺りにどろっと付着している。完全に水ではないので少しどろっとしているところが不快感をアップさせており、蹴り飛ばしたことを後悔させられる。次からはまた踏みつけていこう。

 次々と踏みつけ、後に残るスライムゼリーをどんどんアイテムBOXに放り込んでいく。

 その姿はまるでダンスを踊っているようだなどと妄想していたら体の奥から力が湧いてきた。

 ハイテンションにより力が湧いてきたのかと思わないでもないがたぶん別の原因だろう。

 自分を鑑定。念じることにより自分のステータスが表示される。



名前:コウ

LV :2

HP :32/32

MP :12/12

SP :5/16

STR :10

VIT :18

INT :9

MND :9

AGI :21

DEX :9

LUC :9


所持スキル:アイテムBOX、鑑定、能力成長率UP

 


 驚いたことに全体的に1.5倍から2倍程度にステータスが増えている。能力成長率UPの影響なのだろうが、たぶん一般の人に比べて凄く増えているのではないだろうか。

 ちなみにLUCの値は変わってはいなかった。固有値なのかもしれない。

 

 ふっ、強くなったらやらねばなるまい。俺には倒さねばならぬ相手がいるのだ。思いのほかのステータスアップにより気が高まり妙なテンションになりつつ走って町へと戻る。


「もうお戻りですか? 確認のため身分証をお願いします」


 先ほどの下っ端が生意気にも俺様に向かって言い放つが気分がいいので、冒険者証を見せてやることにする。


「ふはははは、待っておれ」妙なテンションそのままにギルドへと走っていく。


 ギルドの扉をバタンと開けると受付のおばちゃんは何事かとこちらを見ている。

「たのもー、再戦を希望する!」

 おばちゃんはきょとんとした顔で自分を指差している。ちょっと可愛い。周りをきょろきょろ見回しているが部屋には他に誰もいない。

 俺は頷くと訓練場へとおばちゃんを促す。


 訓練場では先ほどと同じく木剣で相対する。

 距離は3メートル。俺は正面に剣を構えつつ振り上げながら飛び込む。1歩、2歩。「テンションマーックス」妙な掛け声を張り上げつつ剣を打ち下ろす。

 おばちゃんは剣で受け止めるが驚いた表情をしている。


「そう先ほどまでの我輩ではないのだよ。ふははははー」

 2回、3回、受けている剣を目掛けて立て続けに打ち下ろしを繰り返したところでおばちゃんが剣を落とす。

 すかさず肩から突っ込みおばちゃんを吹っ飛ばす。


「ふはははは、他愛もない」

 高笑いをあげていると、訓練場に人が入ってきた。先ほどまで受付のある部屋には誰もいなかったが、戻ってきたのであろう。

 おばちゃんが倒れており、おれがその前で木剣を手に持ったまま馬鹿笑いをあげていればどういう状況か一目瞭然だ。

 冒険者風の男が2人駆け寄ってきた。

 ひとりがおばちゃんの元へ行き安否の確認を、ひとりが俺の元へ。


 はい、もうボコボコにされました。相手は素手でしたが一方的にやられました。土下座で許しを請いました。

 怯えつつもテンションが通常値近くなったこともあり正常な判断が下せるようになったため、おばちゃんにも謝りました。

 どこも怪我はしていないから大丈夫さね。ちょっとびっくりしただけさ。とゲンコツひとつで笑いながら許してくれました。惚れちゃいそう。いやいや、違う違う。美女とハーレム美女とハーレム。おばちゃんはストライクゾーン外、ゾーン外。


 皆で訓練場を後にし、受付で依頼の報告をすることになった。

 2人はDランク冒険者でゴブリン退治から戻ってきたそうだ。取り出した袋からは耳が出てきた。結構ぐろい。

 ゴブリンの討伐証明部位は耳とのことで、倒したら耳を切り取ってきてギルドに納めるのだそうだ。

 2人で銀貨2枚と銅貨を何枚か貰っている。


 俺はというと、薬草18束、スライムゼリー53個を手に入れてきていた。

 薬草は1株を1束と考えてよいそうだ。

 薬草19株で銅貨38枚、スライムゼリー51個で銅貨17枚。合計で銅貨55枚を手に入れた。スライムゼリー2個が余ったが、それは次回に回すことにした。

 おばちゃんに安い宿はないかと聞くと、低ランク冒険者御用達の宿が二軒となりにあるとのことなのでまだ日は高いがそこに向かうことにする。

「これ食べて傷を治しなよ。あたしの奢りだよ」とおばちゃんが薬草を1束くれたのでそのまま口に入れ噛みつつ宿へと向かった。苦い。がその心遣いにほんとに惚れてしまいそうだ。

テンプレ的ファンタジー小説を予定しております。

独自色がでるまでもう少しお待ちください。

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