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仕入れその1

 俺はがたごとと揺れる馬車の荷台でじっとしている。周囲は板に囲まれて日の光もほとんど入らず、出入り口である後部も今は閉ざしている。唯一の明かりは格納式の刃の出入口わずかな隙間のみ。

 ここにいるのは、俺、ドヤッキー、ドンズルー、元盗賊団のリーダー、この馬車の製作者の元盗賊の5名だ。むさいことこの上ない。

 御者台にはカルファ、フィラ、元勇者のユウトの3人が座っている。

 だー、なんで俺はむさい方と同じグループなんだ。


「兄貴、そろそろのようでやんすよ」

 元盗賊の勘なのかドヤッキーがからくり装置に手をかけて呟く。元盗賊団のリーダーも返してやった幅広の剣を手に油断なく穴から外を覗いている。


「ご主人様、前方に馬車が停まっていてその前で女性がひとり手を振っています。馬車の中に気配が4、道の脇にある木の影から気配が3あります。いかがしましょうか」

 御者台に座っているフィラが指示を仰いでくる。気配感知のスキルが有効に作用しているようだ。

 

「くそっ、中から前は見えないのかよ」

 独り毒づいていたら前方に小窓が開き外の明かりが入ってきた。その横ではこの前捕まえた現在うちの奴隷見習いがはにかみながらサムズアップしている。

 ちょっとむっときたので、軽く小突いてから小窓を覗き込む。

 確かに言っていたように道の真ん中に馬車が停まっていて、女性が両手を上げ振っている。

 馬車が故障とか何らかの理由で停まって欲しいとも考えられなくはないが、見えないところに人が潜んでいることから普通な状況とは考えられない。


「ユウト、お前は死んでもその二人を守れよ。カルファ、フィラ、お前たちは自分の安全だけを考えろ」

「もちろんです。カルファさんには指一本触れさせません」

「ご主人様、お心遣い感謝いたします」

「わ、わたしも戦えます」


 面倒だから勇者の世話をカルファに頼んでたのだが、すっかり懐いてしまってるみたいだ。でもエロ小僧になりやがったら折檻だ。


「道を外れても、あの程度の荒地だったら抜けられるよな。このままの速度を維持して馬車の横を抜け、10メートルほど行ったら止めろ。俺たちが出る!」

「わかりましたわ」

「ドヤッキー、分かってるよな」

 分かってると無言で親指を立て返事をしてくる。


 馬車ががたごとと急に揺れ始めた。急ぎ前を確認すると、前方を塞いでいた馬車がすぐ間近に迫っている。

 こちらが停まる気がないのを悟ったのだろう、馬車の中から、木の陰からと男たちがぞろぞろと湧き出してきた。

 男が二人素早く前方を塞ごうと回り込む。しかし予想外にカルファのタズナ捌きが巧い、馬が盗賊の間をすり抜ける。

 他に盗賊3人が横から馬車に迫ってくる。

 今だ! 声に出したわけではないが、心で思ったタイミングとドンピシャで馬車の脇と後ろから刃が飛び出す。

 真横にいた盗賊はもろに刃を受け崩れ落ちる。他の一人も咄嗟に庇った腕に大きな怪我を負い、後ろに飛び退りそのまま尻餅をついてしまう。残る一人も足を止め、棒立ちになっている。


 揺れが収まり、馬車が停まる。今だ!

 ドンズルーが棍棒を片手に扉を蹴破り、蹴破り……? 飛び出す。あー、こいつ後で折檻な。

 次いで元盗賊のリーダー、俺が続く。狙うは首領格、といいたいがどいつもこいつも凡庸な雑魚っぽい面しやがって。

 しょうがない、いつものやつやるとするか。威圧スキル解放! 俺を中心に円状に空気が変わっていき、盗賊たちがばたばたと膝をついていく。

 最近調整が利くようになったため、仲間たちには今回は影響はない。


「よっしゃ、終了~。相手より優位に立ってからの威圧スキルってほんと効果があるよな。うずくまってるやつら縛っていっちゃって」

 ほんとに思ったより簡単に片がついた。


「あの~、ご主人様、仲間の元盗賊さんたちもやられちゃってますけど」

 フィラの言葉に振り向いてみると、元盗賊のリーダーと下っ端の馬車製作者も腰を抜かして震えていた。


「馬はちゃんと威圧にかからないようにしてたけど、やつらはまだ正式に奴隷登録してないしスキル効果除外するの忘れてたわ」

 同じく威圧スキルの効果除外していないにもかかわらず元勇者であるユウトはさすがに平然としているが、まぁ当然だろう。

 女1人含む盗賊8人を縛り一ヶ所に纏め上げ、一番傷を負っていた馬車に斬られたものを俺が、それ以外の軽い怪我のものをフィラがヒールしていく。


「あたしは盗賊じゃないわよ、脅されてしかたなくやっただけなんだから」

「嘘つくな、お前も仲間だろ」

「そりゃないだろ、お前の方が俺より盗賊歴が長いくせに」

 威圧スキルを解除すると途端に仲間割れがはじまった。

 馬車の前に立って俺たちを油断させる役目だった女が自分は盗賊ではないと言い出したの対して仲間が文句をいう。


「言い争いはやめっ、こっち注目~」

 おれの言葉に皆がこちらを向き、そして驚きの表情をあげる。


「漆黒の暴走馬車団の首領だぜ」

「やっぱそうだよな、以前俺も見たことあるし」

「あの馬車似てると思ったんだ、だから襲うのは止めとけと」

「いや、そんなこと言ってねぇだろお前」

「やつらは残虐で有名だし、俺らやばいんじゃね」

「でも、でかいつらしてるのはなんか弱そうなやつだぞ」


 今度は丸聞こえのひそひそ話を始めた。俺の後ろに立っている、あの返り討ちにし改造馬車を奪い取った盗賊団のリーダーのことを言ってるらしい。

 なんか随分酷いやつらしいんですけど、ほんとにドヤッキーは仲間にする気なんだろうか。やっぱ勘弁して欲しいわ。


「おいおい、勝手に喋んじゃないよ、きちんと聞いておかないと損するぞ。お前らのアジトの場所とそこにいる仲間の人数などの話を聞かせてもらいたい。一番初めに話したやつだけ逃がしてやる。どうだ?」

「はい、は~い、あたし喋ります」

「えっ、なに言ってんだ」

「くそ~、俺が言う」

「こいつら嘘つきですよ。俺なら正直に全部話します」


 この盗賊たちって弱かったし、自分だけ助かりたい気満々でダメダメなやつらだな。


「はい、そこの女盗賊さん」

「ありっす。アジトはここから少し街道を先にいった東の森の中にある小屋です。アジトには留守番が3人います。これでいい?」

 ニコニコしながら少しすれた感じの黒髪の女がペラペラと喋る。


「わかった、案内して本当だったら解放してやろう。もし嘘だったら今のうちに訂正しておけよ、他のやつらに聞くだけだから」

「嘘なんて言わないわよ、そのかわり本当に助けてよ」


 正直言って、盗賊を兵士に突き出しても大して金にならないしどうでもいいと思ってる。ていうか、わざわざ連れて行くだけ面倒なんだよな。かといって、殺すのも気が引けるしな。

 面倒なことは後回し、とりあえず女盗賊以外を盗賊たちの持っていた馬車の荷台に押し込み、俺と女盗賊が御者台に座る。

 次に目指すは盗賊のアジトだ。


投稿後2時間してからの後書き

自分でもいまいちな出来のときって、悲しいけどやっぱブックマークつけてくれる人少ないですね。

次回で盗賊回が終わって次こそは面白いお話をかいてやるぜ、といい切りたいけど……うわ~ん

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