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盗賊との戦闘2

 剣士は一番近くにいた盗賊に切りかかり、腕に手傷を負わせる。

 それを皮切りに戦いは動き始めていった。

 剣士と斧使いは同じパーティを組んでいるだけあり、連携がうまい。

 瞬く間に4人の盗賊を屠ってしまっている。


 俺はというと戦いながら隙をみては相手を鑑定していた。盗賊たちのレベルは大体5~8とドヤッキーたちと同じくらいだが首領らしきやつだけはレベル11と高い。

 思いのほか冷静に戦えていると俺は自分を分析した。確かに盗賊たちと剣を交えてはいるものの、こちらから積極的に切りつけることはできていなかった。防御を優先してしまっている。

 横で震えながらナイフを振っているフィラを守るためだと言い訳することもできるが、まだ人間を殺すということに踏ん切りがつかない。

 25年生きてきた常識をそう簡単に手放すことができないでいる。

 このままではまずい、そういえば異世界に飛ばす時には神が()()()を守るために忌避感を弱めたり、殺すということに抵抗をなくさせたりと精神制御をおこなうということがよく書かれていた。

 俺にはそういった制御はされていなかったのだろうか、巡らせていたときに頭の中が真っ白に、いや目の前が真っ赤になり意識を手放した。


 一瞬だったが嫌な光景を思い出した。神に見せられたトラックに轢かれた俺のぐちゃぐちゃ死体だ。


「あにきぃ」「腹減ったでんねん」

 聞きなれた声が意識を取り戻させた。一部馬鹿が変なことを言っていたのは幻聴だとスルーしよう。

 目を開けるとドヤッキーの心配そうな顔が間近にあった。

 痛っ、ずきずきする頭に触れた手には赤いものがべっとりと付いていたが、先ほど見た自分の死体が思い出された以外特になんとも思わなかった。


「よかった、心配したでやんすよ。それより怪我してるんすから自分にヒールかけちゃってください」

 冷たい床の上に寝かされている俺に向かって心配したと口にしてはいるものの、いつもと同じ楽しげな口調に聞こえるがたぶん気のせいではないだろう。

 どうなったと問う俺にドヤッキーは戦闘の結果と状況を説明してくれた。


 熱血漢たちが次々と盗賊の子分を傷つけ戦闘不能にしていっているなか、堂々の親分参戦。親分は子分たちを牽制役に使い見事二人を打ち倒した。

 その時吹き飛ばされてきた斧使いに激突され俺は意識を失ったらしい。

 護衛を失った商人はそこで白旗をあげてしまい、それに伴いドヤッキーもフィラも戦闘を中止した。というかフィラはおれにすがって泣きじゃくっていたらしい。まだ小さな子供だもんね、しょうがない。

 商人と倒れた俺、ドヤッキー、フィラの4人は洞窟の奥にある鉄格子をつけられたこの牢屋に閉じ込められ、泣きじゃくっていたフィラがヒールの魔法を使えることを思い出し、何度もかけていたが魔力切れで意識を失ったためそこに横になっているらしい。

 特に危害を加えられていないことを聞いて一安心した。性的な意味でもね。

 ロリっ子に手を出さないのは当然として守るのも俺の義務として心の中の譲れない部分に存在している。

 商人は今牢屋にいないが、現在盗賊たちと身代金交換の相談中とのことだった。

 と忘れていたが、しゃがみこんで時たま腹減ったでんねんとつぶやいている男は馬車を追いかけようと走っていたが、疲れて倒れていたところを盗賊たちに捕まり連れてこられたらしい。あいつらしいと言えばあいつらしいので別段俺の気持ちに揺らぎはない。


「俺たちこれからどうなるんだろ」

「たぶん奴隷として売られるかこき使われると思われるでやんすよ。殺すんだったらその場で殺しここまで連れてこないでやんすからね」

「それは勘弁願いたいな」

 無意識に首にやった手からは金属の嫌な感触が伝わり、背中を冷たい汗が流れた。金属の輪が丸く首を囲っている。

 もしやこれは奴隷の首輪ではと考えると心臓がばくばくと跳ね、冷たい血が全身を巡り体から何か抜けていったかのように寒気を感じた。


「おい、これってもしかして」

「奴隷の首輪でやんすよ。兄貴とおいらとお揃いでやんすね」

「状況が分かってるのか? そんなに軽く言うなよ」

「おいらたちが兄貴の奴隷だから、それを解除させるか兄貴を通じておいらたちを操るかする意味もあって兄貴に一時的に奴隷の首輪をつけさせてるんだと思うでやんす。ここでは登録なんてできやしないからあくまで簡易的なやつでやんすけどね」

 くっ、引っ張ってもびくともしない。岩壁に体を押し当て喉元をぶつけてみても壊れるどころか傷つく気配もない。


「兄貴、なにしてるでやんすか」

 こいつは馬鹿なのだろうか。いつもへらへらとしていて緊張感が感じられない。


「なにってお前、どうにか首輪を壊してここを逃げ出さなくちゃならんだろ」

「兄貴はそれを外したいでやんすか?」

 不思議そうな顔でドヤッキーが俺に近づき首の輪に手をあててなにやらやっている。カランという音とともに地面を丸い輪が転がっているのを見ても俺は一瞬何か理解できなかったが、首に手をあてようやく把握した。

 首には奴隷の輪がなく、直接肌に触れることができている。


「どうやったんだ?」

「兄貴の首の輪っかを外したでやんす。外して欲しかったんでやんすよね。おいらも寝るときは首がかぶれるからいつも外してるでやんすよ」

 一瞬俺は絶句した。奴隷の首輪って普通外れないものだろ。外すには専門の奴隷の管理官とか隷属させる魔法を使えるものとかが必要なのではと思ったが、こいつのことであれこれ思うのも馬鹿らしいと考えることを放棄した。

 奴隷の首輪が外せるのになぜまた首輪をつけて奴隷をしてるんだとの問いにおいらは兄貴の奴隷でやんすからと分かるような分からないような答えが返ってきた。やはり深く考えるのはやめにしよう。

 まだ牢の中だが、わずかばかり希望が見えてきた気がする。


 魔力切れでまだ意識を失っているフィラを除いた三人でどうするべきか相談した。というか、ドンズルーは腹減ったとしか言わないので、ドヤッキーと二人で話し合う。ドンズルーは聞いているのかどうか知らないが、最後に簡単にやることだけ説明するだけで十分だろう。

 

 盗賊たちは熱血漢に6人倒され、ここに戻ってきたのは怪我をしているものが3人、無傷なものが首領とあわせて3人。帰ってきた盗賊たちを出迎えた留守番をしていた盗賊が2人とのことだった。

 つまり相手は首領プラス元気な盗賊4人に、手負いの盗賊3人の合計8人だ。それに対してこちらは商人を除いて4人とそのちょうど半分しかいない。まともにやると勝てる気がしない。

 そう考えていたときに鼻をひくつかせていたドンズルーの一言が気分を軽くさせた。


「うまそうな匂いでんねん。酒盛りとは羨ましいでんねん」

 ある程度の案がまとまり、目を覚ましたフィラに作戦を伝えたところにロープで縛られた商人が盗賊に連れられ戻ってきた。


すみません、あまり進みませんでした。

もう1話くらいで区切りが付く予定です。というか付くといいな。

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