デート03
「ユウくんは何食べるの?」
いつも行くイタリアンカフェで目の前でメニューを見ながら眉間にしわを寄せる彼に尋ねる。どうせトマトパスタにするかマルゲリータにするかで悩んでるんだろうけど。
「トマトパスタとマルゲリータとイカスミどれにしょう…あ、でもイカスミ食べたら真っ黒な歯になるし、キスされたら嫌だよね」
気にするところはそこなのか。
嗽をすれば済む話ではないのかとつい突っ込みたくなる。メニューを眺める彼の目はトマトパスタとイカスミを交互に行き来する。
「私トマトパスタ頼むからユウくんはイカスミ頼んだら?後で嗽したら歯はどうにかなるんじゃない?」
食べたことないから確証はないけれど、クスリと小さな笑みを浮かべて頬杖をつく私を彼は少し嬉しそうに、けれど心配そうに見つめる。
「…ちゅー、しても嫌じゃない?」
うるうるした瞳でそんなことを言う彼はどちらかというと女の子よりな気がする。
「それくらい気にならないよ。大丈夫だから好きなもの食べよ、ね?」
メニューの上に置かれた手にそっと自分の手を重ねて笑う。それに安心したのか満面の笑みを浮かべて店員さんを呼ぶ彼。
本当に単純なんだから。
そう呆れつつ、それが彼のいいところなんだと思う私もいる。いつだって私のことを考えてくれる優しい彼。ヲタク度は増して行ってる気がするけれどそこはもう諦めている。好きなものを好きといって何が悪いのか。ヲタクの彼も含めて私の好きな人なんだと思うようにしている。未だに"なんでヲタクと付き合ってるの?"と言われることもあるけれど返事の仕方もだいぶ学んだ。
「マヒロ、ありがとう!大好き」
「私も大好きだよ」
はにかみながら言う彼をみているとまぁ、ヲタクでも悪くないかなって。
「まって、ここ出てその袋開けないで!」
「いいじゃーん」
「やめろ!」
やっぱりヲタクは分かりません。
***