1/4
ヲタクの国への落とし穴
「マヒロってヲタク化してきたよな」
何気無く呟かれたその言葉に私は手にしていた本をバサリと床に落とした。
(え、ちょっと待って…今なんて言った?)
「アニメも見るようになったし、ゲームもよくやるようになったし、漫画もいろんな種類読んでるしね」
漸く俺色に染まってきて良い感じ。
「俺色って…ヲタク色?いやいや、染まってない染まってない!私は今でもこれからもノーマルだから」
そう彼氏がヲタクな、残念なイケメンであるだけでその彼女である私はノーマル。普通の女の子なんだから。
先ほど落とした本をそっと拾い上げて背表紙の汚れを払うように手を動かす。そしてその本の表紙を見て小さなため息を漏らす。
そうだよ、私が好きだったのはこういう推理小説とか甘々な恋愛小説。その甘さに惹かれた結果が…これだけど。
私から数メートル離れたライトノベルが並ぶ棚の前でにやにやを我慢しようとしても出来ていない彼氏を見て今度は大きなため息が漏れる。
「こんなつもりじゃなかったのになぁ…」
そんな溜息は彼の耳に届くことはなかった。
***